落語家の三遊亭好楽さん(写真提供◎朝日放送 以下すべて)

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『笑点』でおなじみの三遊亭好楽さんが、弟子の三遊亭ぽん太さんの付き添いで『新婚さんいらっしゃい!』に登場!波乱の芸人人生を聞いた中西正男さんのインタビューを再配信します。*********1979年から日本テレビ『笑点』のメンバーを務めてきた落語家の三遊亭好楽さん(78)。現在10人の弟子を持ちますが「弟子も、孫弟子も、その家族も、みんな家族」と語る根っこにあるのは4年前に亡くなった妻・とみ子さんの言葉でした。そして「これだけはやりなさい」と弟子に伝えていること。弟子の今後に望むこと。今の思いを語りました。

【写真】「笑点」の好楽さんが、あの長寿番組に!!

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本当の息子だと思って育てなさい

ウチの母ちゃん(妻・とみ子さん)が4年前に亡くなったんですけど、ずっと言われてました。

「お父さん、弟子と思って取っちゃダメよ。本当の息子だと思って育てなさい。大事なお子さんを預かるわけなんだから、それくらい思わないとダメですよ」って。

今ね、弟子が10人。孫弟子なんかも含めると18人の大所帯になってるんですけど、みんな家族です。本当に家族なんです。結婚したら、奥さんも家族。それはみんなに同じように言っています。

今度、弟子の三遊亭ぽん太が『新婚さんいらっしゃい!』(9月8日放送、ABCテレビ)に夫婦で出してもらうことになったんです。私もいつも見ている番組だし、いい話じゃないかと喜んでいたら、いつの間にか、私も付き添いじゃないけど出ることになっていて。(笑)

息子のことですから、それで役に立つなら何でもするよということなんですけど、そういう話を弟子がもらうこと自体、本当にうれしい話ですからね。

…なんてエラそうな話をしてますけど、私自身がもうメチャメチャな弟子だったんでね。(笑)

自分がやらないわけにはいかない

19歳で林家正蔵に入門した時、師匠は69歳でした。孫に近い年齢でしたからね。とんだ若造ですよ。そして、自慢じゃないですけど「破門だ!」って言われたのが23回。それでも、辞めさせないでいてくれた師匠の大きさで、今があるんです。

自分がそうしてもらったんだから、私も弟子を簡単に辞めさせたりはしない。自分も大事にしてもらったんだから、自分がやらないわけにはいかない。それも思っています。

23回の失敗、私はね、全部お酒です。飲んでのことです。そんな中で兄弟子が師匠との間をとりなしてくれて、謝ってもくれました。そこで兄弟子から言われたことが本当に大きかったんですよね。

「酒を飲むなとは言わない。飲んでもいいけどな、気を遣え」。これはね、目が覚めました。

酒をやめなくてもいいうれしさもありましたけど(笑)、あ、そうかと。酔っぱらってギャーギャー騒いだらいいというものではない。周りの人に気遣いをする。そういう場なんだ。自分が楽しむというよりも、人に楽しんでもらう。そういう風に頭を切り替えて、いろいろと変わっていった気がします。

「後の喧嘩は先にしろ」

主役は自分じゃなくて、人様なんだと。そう思うようになったのが噺家になって3年ほど経った22歳の頃でした。今から考えたら当たり前のことなんですけど、そんなことにも気づいてなかったんですね。

ただ、そう頭を切り替えたのが良かったのか、当時の名人上手、売れっ子に可愛がられました。それこそ、当時は(桂)文楽、(古今亭)志ん生がいらっしゃって、落語の本当にいい時代でした。私自身(三遊亭)圓生、(林家)正蔵、(柳家)小さん、(林家)三平、(三遊亭)圓歌、(古今亭)志ん朝、(立川)談志、(月の家)圓鏡、(三遊亭)圓楽、みなさんにかわいがってもらいました。本当に、ありがたいことです。

師匠の正蔵の言葉で「後の喧嘩は先にしろ」ということを若い頃に聞いて、今も本当にそうだなと噛みしめています。

何かあった時に「またいつか良いタイミングで」なんて先送りにすると、どちらにとっても良くない。その間ずっと気が重いし、関係も悪くなる。何かあったら、そこで謝るなり、しっかり話をするなりしないと誰も得をしない。

『笑点』で五代目圓楽が司会をやっていた時、ダメ出しというか、番組の後に私を叱ってくれるんです。そうなると、その後の師匠の仕事を聞いて、そこについて行くんです。お供をさせてもらって、しっかり謝って、その日をしっかりと終わらせる。そうすると、翌日、師匠の顔がスッキリしてるんです。

こっちは怒ってもらってありがたいことでもあるんですけど、師匠だって怒りたくて怒っているんじゃないところも多々ある。そして、怒ると「あれで良かったのかな」とかいろいろ考えもするわけです。それを引きずると、師匠につらい思いをさせてしまう。だったら、すぐに謝って、行動で示して、流れにケリをつける。これは、ずっと実践してきました。

弟子、孫弟子、全員に売れてもらいたい

逆に、私が弟子に言う言葉。そうですね、あんまりアレコレは言いませんけど、私たちが普段出してもらう寄席は、お客さまも我々も同じトイレを使う形になっているんです。そこが汚れていたら、自分たちの恥。なので、誰もいない時にきれいにしておきなさいとは言っています。

特に道具がなくても、全部手でやってキレイにしたらいい。汚いものが手についても、そんなもん、洗えばいいんだから。そして、大切なことは「自分がやった」って絶対に言っちゃダメ。知らん顔しといて、お客さまが気持ちよくトイレを使ってくれていたら、自分だけが喜べばいい。言ったら、やったことが消えちゃうよ。それは言ってます。

そして、弟子、孫弟子、全員に売れてもらいたい。無茶な話なのかもしれませんけど、思いとしては心底、そう思っています。弟子が売れるためならなんでもする。これも心底思っています。自分の子どもですからね。当たり前なんですけど。

よく考えたら、小さい頃からガキ大将だったんですよね。年下の子らを連れて今日は何をして遊ぼうか。そればっかり考えてました。あそこで野球をしようか。あの公園に連れて行ってやろうかと。

そして、今もそうなんですよね。弟子たちと今日は何をしようかと。基本の考え方は変わってません。ま、そんなことしてるんだったら、落語の稽古をしろと言われると困っちゃうんですけど。(笑)

ただ、もう78歳ですしね。おそらくそこの考えは変わらないだろうし、これからもそうやっていけたらなと思っています。