(『虎に翼』/(c)NHK)

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9月6日の『虎に翼』

現在放送中の伊藤沙莉さん主演・連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合/毎週月曜〜土曜8時ほか)。第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」の115回が9月6日に放送され、話題になっています。

*以下、9月6日放送内容のネタバレを含みます。

昭和38年6月、桂場(松山ケンイチさん)は最高裁判事のひとりに任命され、竹もとで修業に励む梅子(平岩紙さん)、そして道男(和田庵さん)にも人生の転機が訪れる。

更年期の不調を抱えながら、認知症の百合(余貴美子さん)に向き合う寅子。

そして同38年12月、「原爆裁判」の判決が言い渡され――といった話が描かれました。

あらためてあらすじ

ドラマ内で迎えた昭和38(1963)年12月7日。ついに「原爆裁判」の判決が言い渡されることになりました。

傍聴席には竹中をはじめ、多くの記者たちが詰めかけています。

開廷すると、「判決主文を後に回し、まず判決理由を読み上げる」という異例の進行をとることを裁判長・汐見(平埜生成さん)が告げます。

その判断に動揺する記者と原告代理人のよね・轟・岩居。そしてここまで硬い表情を決して崩さなかった国側の被告代理人・反町忠男(川島潤哉さん)も複雑な表情で汐見のほうを見つめます。

その後、広島におよそ33万人、長崎に27万人の一般市民が住居を構えていたという事実を指摘。仮に原爆投下が軍事目標に対する攻撃だったとしても、その破壊力から無差別爆撃で、当時の国際法から見て違法な戦闘行為だと述べる汐見。

ここでもよね・轟たちとともに、目線にピントが合っていないような表情を見せる反町の様子が映ります。

続けて汐見は、ただし損害を受けた個人には国際法上、もしくは国内法上の主体性が認められず、損害賠償請求権を有する根拠がないと告げます。

より強い口調となる汐見

この時点で裁判の行方を察し、一斉に出ていく様子を見せる傍聴席の記者たち。

汐見はそれを一瞥すると、より強い口調で、強力な破壊力を持つ原子爆弾によって被害を受けた国民に、同情の念を抱かない者はないであろうと言い放ちます。その迫力に、記者たちは再び席に戻ります。

汐見は続けて、戦争を廃し、もしくは最小限に制限することは人類共通の希望で、それでも戦争が起きた時に国民を保護し、被害を少なくすべきことは言うまでもない。それなのに、国家が自らの権限と責任で戦争を開始して多くの国民を死に導き、不安な生活に追い込んだと強く非難します。

ここで画面には、その判決を聞きながら、まっすぐ前を見据える寅子や汐見たちを見つめるよね・轟たちに加え、視線を下に落とす反町、廊下でじっと判決を聞く航一の様子が映ります。

そして告げられた判決

その後汐見は、原爆の被害は一般災害の比ではなく、国家が十分な救済策をとるべきことは当然である旨を強調。その一方で、その職責はもはや裁判所ではなく、立法府である国会と行政府である内閣にあると述べました。

終戦から十数年が経過し、高度の経済成長を遂げた日本において、国家財政上、救済ができないことが不可能とは到底考えられない、と非難しながら政治の貧困を嘆きます。

最後に「主文。原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。閉廷します」と判決を述べる汐見。これにより、実に8年にわたって続いた裁判は「国の勝訴」で結審しました。

判決を前に、よねのほほには一筋の涙が。そして岩居が亡き雲野の写真立てをそっと手に取ったところでドラマは幕を下ろすのでした。

国側の被告代理人・反町忠男にも注目が

ついに判決を迎えた「原爆裁判」。

判決主文よりも判決理由が先に読まれるという異例の流れに、裁判に集った一同はみな動揺する様子を見せました。中でも、かたい表情を保ちながらも、感情に若干の揺らぎを見せた、国側の被告代理人・反町役の川島潤哉さんの演技にひきこまれた視聴者が多かったようです。

ネットでは「感情が揺らいでいるであろう反町。それを表現する川島さんの演技が本当に素晴らしかった」「この裁判の中で、反町さんもずっと傷ついてきたのだろう」「汐見が読み上げた判決理由は、反町の心の声そのものだったのかも」「反町さんが判決理由を耳にしながら、すごく傷ついてるように見え、一方で安堵してるようにも見えて…」「勝訴した側なのに葛藤した様子も見せながら、判決理由に聞き入っている反町。それも当然、なぜ立法行政はいつまでも貧困なんだと、公然と司法から問われたようなものなのだから」といった声が次々にあがっていました。

朝ドラ通算110作目となる『虎に翼』は、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんがモデル。昭和の法曹界を舞台に、激動の時代を描いたリーガル・エンターテインメントです。

仲野太賀さんや石田ゆり子さん、松山ケンイチさんらが出演し、尾野真千子さんが語りを担当。脚本は吉田恵里香さんが、主題歌『さよーならまたいつか!』は米津玄師さんが手掛けています。