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近年の物価高や不景気の影響で、「周囲の人に優しくできる<精神的なゆとり>をなかなか持てない」という方もいるのではないでしょうか。そのようななか、精神科医の和田秀樹先生は「こんな時代だからこそ、『優しさとは何か?』を改めて見つめ直す必要がある」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の著書『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』から、毎日を前向きに過ごすためのヒントを一部ご紹介します。

【書影】精神科医が教える、毎日を明るく前向きに過ごすための考え方。和田秀樹『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』

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自分を犠牲にしている人ほど、人に厳しくなる

自分を犠牲にすると、ストレスや欲求不満によって、人の気持ちを想像する余裕が持てないだけでなく、人に対して厳しくなる傾向があります。

自分を犠牲にするというのは、「自分で自分に我慢を強いる」ことですから、その我慢の「捌(は)け口」が、周囲の人に向かってしまうのです。

意外に思うかもしれませんが、現在、社会問題になっている「ブラック企業」が生まれる背景にも、こうした我慢が関係しています。

ブラック企業というのは、トップの方針によって、会社ぐるみで社員に厳しい待遇を強いているケースはごく一部です。

「かくあるべし思考」とは

ほとんどの場合、管理職の立場にある上司が、部下に厳しくすることが、会社がブラック化する原因を作り出しています。

そうした上司の多くに共通するのが、「かくあるべし思考」をしていることです。

かくあるべし思考とは、物ごとを「こうあるべし」と決めつけて、それに反することは許さないという偏(かたよ)った考え方を指します。

「新規顧客を獲得できなければ、営業は会社に戻ってくるな!」とか、「仕事が終わらなければ、休日出勤は当たり前だ!」など、部下に対して厳しい指示を出す上司には、「仕事は、かくあるべし」という強い思い込みがあるため、社員それぞれに事情があることなど、「どうでもいい」と思ってしまう傾向があるのです。

自分の仕事に対しても

こうした上司の大半は、部下に対してだけでなく、自分の仕事に対しても、「かくあるべし」と考えて、自分自身を厳しく縛り、自分に我慢を強いています。


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自分が我慢している分だけ、部下にも厳しい態度で向き合うことが当然と思うようになり、自分が考える「かくあるべし」を強引に押し付けてしまうのです。

これは、自分を犠牲にして、我慢している人ほど、人に厳しくなる……という典型的なパターンといえます。

※本稿は、『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。