イヌリンやフラクトオリゴ糖(FOS)といった、世界中の多くの国の店頭で入手可能な安価なサプリメントを摂取すると、60歳以上の人々の記憶力テストのスコアが向上することが示されました。

Effect of gut microbiome modulation on muscle function and cognition: the PROMOTe randomised controlled trial | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-024-46116-y



Cheap Daily Supplement Seems to Boost Brain Function in Older People : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/cheap-daily-supplement-seems-to-boost-brain-function-in-older-people

フルクタンに分類される食物繊維のイヌリンや、天然の低カロリー甘味料としてよく使用される植物性炭水化物のFOSは、世界中の多くの国で入手可能な安価なサプリメントです。

キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは60歳以上の双子、計36組に対し、片方にはプロテインパウダーにイヌリンやFOSを混ぜたものを、もう片方にはプロテインのみのプラセボを毎日投与しました。



投与開始から3カ月後に認知テストを実施した結果、イヌリンやFOSを投与されたグループは、もう片方のグループよりも高いスコアを獲得。また、腸内細菌叢(そう)にも変化が生じていることが明らかとなりました。具体的には、イヌリンやFOSを摂取したグループの腸内には有益なビフィズス菌が多く存在していました。

マウスを用いたこれまでの研究では、イヌリンやFOSなどの高繊維サプリメントが結腸のマイクロバイオームに栄養を与え、善玉菌を繁殖させることが示されているほか、ビフィズス菌が腸と脳の接続を調節して認知障害を軽減する可能性が示唆されています。

研究チームのメアリー・ロッホレイン氏は「わずか12週間で今回の成果を得られて、とてもうれしく思っています。今回の実験結果は、高齢化社会における脳の健康と記憶力を向上させるという点で大きな期待が寄せられています」「腸と脳のつながりの秘密を解き明かすことで、より健康に、より長生きするための新しいアプローチが提供されるかもしれません」と語っています。



しかし、高繊維サプリメントの摂取によって記憶や処理時間など、老化した脳の認知機能のいくつかの側面を改善する可能性が認められた一方、身体的な変化は確認できませんでした。今回の実験では、どちらのグループも年齢に伴う筋肉の減少を改善することはできなかったとのこと。

それでも研究チームのクレア・スティーブス氏は「これらのサプリメントは店頭で安価に入手できるため、この資金難の時代でも幅広い人々に利益をもたらす可能性があります。私たちの次の課題は、これらの影響が長期間にわたって、より大きな人々のグループでも確認できるかどうかを調べることです」と述べました。