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(カナダ・トロントから現地レポート)ラッセル・クロウ主演のホラー映画『The Exorcism(原題)』がいよいよ北米で解禁となった(2024年6月21日)。ラッセル・クロウといえば、でホラー作品初出演を果たし話題となったが、今回は“ホラー映画に神父役として出演する俳優役”を好演。まさに、『ヴァチカンのエクソシスト』で彼自身が置かれていた”立場”を演じるのだ。本作では、キャリア再起を望む“落ちこぼれた”俳優が主人公。実際の実力派俳優として知られている“大物”ラッセルとはかけ離れたキャラクターではあるが、それでも、悪魔祓い映画に最近出演した彼がこの役を演じることは非常に興味深い。

本作は、ある男が脚本を読みながらスタジオ内に建てられた暗い家の中を歩き回るシーンからスタート。彼は『Georgetown Project』と題した映画で、神父役を演じることになっている。しかし、悪魔祓いのシーンを撮影する寝室に足を踏み入れたことで、彼は何らかの邪悪な力により命を落としてしまうのだ。俳優の悲惨な死の後、監督のピーターが急遽代役として見つけたのが俳優のアンソニー・“トニー”・ミラー(ラッセル・クロウ)。トニーは薬やアルコール依存と闘い、さらには妻に先立たれたことからボロボロの状態だったが、“キャリア再起”の絶好のチャンスを掴むことになる。

トニーは、反抗期の娘リー(ライアン・シンプキンス)とのギクシャクした関係も修復したいと考えており、彼はリーをアシスタントとして雇い撮影現場へと足を運ぶ。しかし撮影1日目から、メイクを終えたトニーが鼻血を出したり、夜に夢遊病を発症したりと、“何かがおかしい”。

製作が進むにつれ、トニーの症状はますます悪化。大事なシーンで大量に汗をかき、セリフもままならない。監督は「この男は一体なんなんだ」「使えない」と頭を抱え、周囲の人は、トニーがメソッド演技法(※)を使っているのではないかと口にする(※演じる役の深層心理まで深掘りして追体験しリアルな演技をする、時に危険視される演技法)。

さらに撮影現場では、監督の真後ろに照明が突如落下するなど、不可解な現象も起き、まさにカオス状態。撮影日ごとにシーンが区切られているため、トニーが邪悪な“何か”に完全に憑依されるまでの“記録映像”を見ている感覚になれるのが面白いポイントだ。放心状態のトニーに娘リーが薬を飲ませるシーンでは完全に憑かれたような目をしていて、脳裏に焼きつくほどのインパクト。ジャンプスケアシーンはそこまで多くないが、ラッセル・クロウの高すぎる演技力が観客を恐怖に陥れる。

本作の監督を務めたのは、ジョシュア・ジョン・ミラー。彼の父親は、ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』でダミアン・カラス神父を演じたジェイソン・ミラーだ。名作『エクソシスト』に深い繋がりがあり、さらには実際ホラー映画に携わってきた経験を持つ彼は、多くの“ホラー愛”を本作に込めたようだ。

劇中の映画タイトル『Georgetown Project』は1973年『エクソシスト』の舞台であるジョージタウンに由来しており、本作に登場する 「コールドルーム(俳優の息遣いがフィルムに映るよう室温を低く設定された部屋)」は実際に『エクソシスト』でも使用されたという。ミラー監督は過去に、主人公がホラー映画の世界に入り込む『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』(2015年)を手掛けており、その経験が本作にも活かされていることだろう。

一方、Rotten Tomatoesの観客スコアは43%とやや低め(現地時間6月23日時点)。「うまくまとまっていない」「エンディングに向けてストーリー崩壊」などのネガティブな批評家コメントも見受けられた。

ラッセルの高い演技力とミラー監督のホラー愛が融合した『The Exorcism(原題)』、日本公開は今のところ未定となっている。

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