クレカをはじめとするキャッシュレス決済の世界は日々変化を続けています。そんな流れに戸惑うユーザーの悩みを“クレカの鉄人”岩田昭男師範が一刀両断に解決! 今回は、GetNaviの会員コミュニティ「GetNavi Salon」のメンバーから出たギモンをピックアップしました。スマホ画面で迷子になりがちな「ポイントアプリのスマートな管理方法」について、岩田師範が解説します。

 

【第18回】様々なポイントをすっきり管理する方法が知りたい!

 

【解説する人】 岩田 昭男

クレジットカード、キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わる業界の“ご意見番”。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】 MSやっくん

42歳男性。妻、子ども2人の4人暮らし。普段はAmazonで買い物をすることが多い。GetNavi Salonの4月の定例会で「ポイントカードやアプリの数が多過ぎて管理が大変」という悩みを岩田師範に相談。お手軽かつ効率的にポイントを管理・運用する方法を訊きに改めて道場を訪れた。

 

(相談者の要望)

様々なポイントをすっきり管理できる方法が知りたい カード提示から決済までの流れをスマートにしたい ポイント管理アプリの決定版はどれ?

 

「ポイントカード管理アプリ」の有望株が2年前まで存在していた……

師範  複数のポイントカードのポイントを手軽に管理できないかと相談にきたのはおぬしか?

 

やっくん  はい。買い物のたびに財布の中のポイントカードを焦りながら探すのが面倒で。

 

師範  最近は、スマホアプリ化しているポイントカードも多いが。

 

やっくん  あ、そういうアプリは積極的に利用してて、財布がカサ張らなくて助かってます。でも、スマホ画面上のいろんなアプリから目当てのものを選んで開いて……という作業はやっぱり手間ですね。できればそういうカードアプリをまとめられるアプリがあると便利だなあと思うんですけど。

 

師範  なるほど。以前なら、Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の子会社が展開していた「スマホサイフ」というアプリがおぬしの要望にピッタリだったんじゃが、残念ながら2年前にサービス終了してしまった。

↑CCCマーケティングが2016年7月より提供した「スマホサイフ」のアプリアイコン(左)とアプリ画面(右)

 

やっくん  「スマホサイフ」ですか。不勉強にも私、そんなアプリの存在を知りませんでした。

 

師範  「スマホサイフ」はポイントカード、スタンプカード、電子マネーなどをひとつに集約できる共通プラットフォームじゃった。モバイルTカードが対応するTポイントのほか、マツモトキヨシやファミリーマート、モスバーガーなどのポイントカード、電子マネーのQUICPayなどをアプリに登録。

 

「スマホサイフ」から各カードを呼び出し、そこで表示されるバーコードをレジで提示してポイント獲得したり、スマホで電子マネーQUICPayを使って買い物の支払いができたりしたな。さらに、Androidスマホ限定ながら電子マネーの楽天Edyも使えた。

 

やっくん  それはかなり私が望んでいるものに近いようです。

 

師範  このアプリに関しては、ワシは立ち上がりの段階から見てきていた。元々Tポイントが「一業種一社」という、各業界のNo.1にのみライセンスを与えるというルールを作っていて、例えば石油業界ならエネオスだけTポイントに加盟できて、業界2位の出光は加盟できなかったりした。

 

まあその時代は長くは続かず、Pontaなどの共通ポイントが台頭するにつれてTポイントの地位が下がり、それとともに業界2位、3位の業者も加盟できるようになっていった。

 

そんななか、CCCの社員のなかから、「共通ポイントのトップランナーであるTポイントの優位性を生かし、新しい展開を考えたい!」という声が出始めた。ではその「新しい展開」とは何か? それが「現在乱立する様々なポイントの交通整理を効率的に行うこと」であり、「幅広いポイントサービスを横断的に管理するアプリ」の開発だった。それが「スマホサイフ」へと繋がるわけじゃ。

 

やっくん  それはなかなか「先見の明あり」じゃないですか! それなのになぜサービス終了したんですか?

 

師範  もともとはTポイント中心のプラットフォームとして考えられていた「スマホサイフ」じゃが、CCCと三井住友グループとの提携が進むなかで、銀行グループの直接的な利益とはならないこのサービスはただの「余計な仕事」となり、事業終了の判断が下された……のではないかとワシは見とる。内容的にも進んだことをやっていたし、提携先も事業継続を望んでいたようじゃが、まあもったいない話じゃったな。

 

やっくん  くうーッ、それは私にとっても残念至極な話です!

 

LINEユーザーならミニアプリ「LINEマイカード」を使わない手はない!

師範  ただ、機能的にはまだ発展途上ながら、「スマホサイフ」のような“ポイントまとめアプリ”もなくはない。なかでも使い勝手が現状最も良さそうなのが「LINEマイカード」。これは単体のアプリではなく、LINEアプリのなかにミニアプリとして組み込まれており、LINEユーザーなら新規でアプリをインストールする必要がない。

 

LINEマイカードのなかに登録可能なポイントカードの一覧があり、そこから登録したいカードを選び、IDやパスワードなどを入力すれば登録完了。登録済みカードは一覧表示され、店舗で使用する際に使いたいポイントカードのアイコンをタップして表示したバーコードをレジで読み取ってもらえば良い。

 

登録可能なカードの一覧には、共通ポイントではVポイントやPontaポイント、dポイント、JRE POINT、店舗系カードではスターバックスや無印良品、スシロー、ロフトなどのポイントカードが入っておる。

 

大手チェーン店が多いから幅広いユーザーが利用しやすいじゃろ。また、カフェや美容院など個人店のショップカードもまとめて管理できるぞ。惜しいのは楽天ポイントが使えないことで、これが使えたらワシ的には合格点を与えられた。

↑「LINEマイカード」では、共通ポイントカードのほか、ショップカードも一元管理できる

 

やっくん  うーん、実は私もLINEマイカードは使ってみたんです。でも、マイカードに登録したポイントカードを開くのに4手間くらいかかって、かなり面倒だと感じました。

 

師範  iOS16以上、i0S版「LINE」13.5.0以上なら、ロック画面にウィジェットを追加することでポイントカードを素早く表示できるようになるぞ。登録カードの並べ替えもできるから、よく使うカードを上位に移動させておくと良い。

 

やっくん  おお、そうなんですか!早速試したいと思います。

↑ロック画面に追加したウィジェットから、ワンタップで「LINEマイカード」画面を開ける。iOS16以上、i0S版「LINE」13.5.0以上で利用可能

 

iPhone派はApple Wallet、Android派はGoogle Payを試すべし!

やっくん  ほかのオススメアプリは、どんなものがありますか?

 

師範  例えばiPhoneユーザーなら「Apple Wallet」から始めるのも良かろう。これもiOSに最初から入っていて新規インストール不要。Apple Payで使うアプリなので、当然ながらクレジットカードや電子マネーも管理できる。対応ポイントカードはPontaポイントとdポイントだけじゃが、LINEを使っていないiPhoneユーザーはまずこれを使ってみるのがよい。

↑「Apple Wallet」ではクレジットカードや交通系ICカードと一緒にポイントカードも管理可能。ポイントカードを追加済みのApple Watchの画面を非接触型リーダーにかざして使用

 

また、Androidユーザーには「Google Pay(Google Wallet)」を推奨。これもAndroid端末で使うスマホ決済アプリなので、クレカや電子マネーによる支払いができるほか、こちらはVポイント、Pontaポイント、dポイント、楽天ポイントと幅広い共通ポイントに対応しとる。

 

店舗系カードもニトリやイオン、マツモトキヨシにヨドバシカメラ、ドン・キホーテ、ユニクロなど実に多彩。使い勝手の良さでは、Apple WalletはもちろんLINEマイカードより上と言えるかもしれんな。

 

やっくん  私はiPhoneを使ってますけど、AndroidユーザーだったらGoogle Payに心動きそうです!

↑「Google Pay」のアプリ画面(イメージ)

 

連携作業が面倒なときはポイントアプリをグループ化すべし

やっくん  アプリを入れたり、登録したりするのすら面倒な人はどうすればよいのでしょう?

 

師範  一度決めた方法で登録・連携などを済ませておけばあとは所定の方法でポイントカードを提示するだけじゃから、長期的に考えればそこまで手間とは思わんな。だが、どうしても連携が面倒という場合は、スマホの画面でポイント関係のアプリをまとめてタップしやすい位置に設置しておくのもおすすめじゃ。

 

やっくん  画面ロックを解除したホーム画面に置いておくか、iPhoneなら下部のDock部分ならすぐにアクセスできそうです。

 

師範  最近はポイントアプリを提示して、そのままQRコード決済アプリで支払うといったことも多いじゃろうから、ポイント系のアプリと決済系のアプリをまとめておくと切り替えの手間が少なくて済む。

 

一部のポイント管理アプリは安全性に疑問符

師範  それから“ポイ活”界隈でよく話題になるのが「Stocard」。これはドイツの会社が運営するポイントカードまとめアプリで、楽天ポイントやPontaポイント、dポイントなどの共通ポイント、ニトリやマツモトキヨシなどの店舗系ポイントカードを含め、100種類以上登録可能と謳っておる。

 

さらに、登録可能リストにないポイントカードもバーコードをスキャンして登録できると言うが、見方を変えると他人のカードを勝手にスキャンして偽造もできることになり、安全性に大きな疑問符が付く。実際に店舗でバーコードを提示しても対応を断られる場合が多く、ワシとしてはあまりオススメできんな。

 

やっくん  様々なポイントカードに対応できて便利そうですが、提示しても使えない場合があるのは少し残念です。

 

師範  ポイントカードまとめアプリで、より多くのポイントカードに対応できる決定版の登場が待たれるが、それには、ポイント経済圏の垣根を越えてポイント管理できるかどうかがカギになるな。一方でポイント経済圏側は、自分の経済圏に属する各加盟店のポイントカードを一括管理する機能を自前の共通ポイント/コード決済アプリに搭載してくるはず。ちなみにユーザーのなかには、長年ポイント還元のおトクさを求め続けた結果、“ポイント疲れ”を感じている者も少なくないようじゃ。

 

やっくん  確かに私が「ポイントを手軽に管理したい」と望むのは、「いろんな特典・キャンペーンを追うのに疲れた」からかもしれません。

 

師範  ポイントカードまとめアプリはまさにそんな背景を受けて登場したものだとも言えるな。

 

価格などの情報はすべて本稿執筆時のものです。

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男