AIだけじゃない!予告された「iPhone」進化の中身
アップルの開発者会議、WWDCにて、毎年秋に提供されるOSのアップグレードについて発表があった。iPhoneの使い勝手が、どのように変わるだろうか(筆者撮影)
生成AIをオンデバイスで行う「Apple Intelligence」や、Vision Proがアメリカ以外の国でも発売決定するなどビッグニュースに押されて目立たないが、日本のiPhoneユーザーの多くにとって最もインパクトのあるニュースがiOS 18のローンチだ。
最新版となるiOS 18は、例年通り6月に行われたWWDC(世界開発者会議)24で開発者向けベータ版が公開され、2024年秋に発売されるであろうiPhone 16シリーズとほぼ同じタイミングで公式版がリリースとなる。
本記事ではiOS 18の新機能を紹介したのち、Apple Intelligenceの日本対応とともに使えるようになるであろう機能についても解説していく。
ホーム画面、アイコンのカスタマイズ機能が大幅開放
ホーム画面のカスタマイズなど、さまざまな機能が秋に提供されたのち、日本では2025年以降にApple Intelligenceが搭載される(写真:アップル)
発表された新機能の中でも印象的だったのが、ホーム画面のアイコンを配置する場所が自由になり、色もある程度カスタマイズが可能になった点だ。
Androidでは昔から可能な機能だが、アップルはデザインの統一性や、シンプルなユーザーインターフェース(UI)を重視し、過度なカスタマイズ性を許容してこなかった。
今回はデザインと自由度のバランスを取り、アップルらしいカスタマイズが可能となっている。
まず、アイコンの位置を自由に決められるようになった。壁紙の写真の重要な部分を避けてアイコンを配置できるので、大切な人や、お気に入りのキャラクターの壁紙を使っていても、アイコンで顔が見えなくなるようなことがなくなる。
アプリアイコンの配置が自由に。アイコンの色もカスタマイズ可能になる(写真:アップル)
ホーム画面でも『ダークモード』が用意され、アイコンをシンプルでシックな色彩に一括変換できる。さらにおしゃれなワントーンのカラーに変更することもできるので、壁紙と合わせたトーンにすると美しい。
ダークモードや、下の文字を非表示にしてアイコンを大きくすることも可能(写真:アップル)
また、アイコンの名称を取り払い、そのぶんアイコンを大きく表示することもできる。他人がのぞき込んで、見られたくないアプリは、非表示用のフォルダに収納しておくことも可能だ。
カスタマイズといえば、画面の右上から引き下ろすことのできるコントロールセンターの機能も多彩になった。
OS標準のアプリだけでなく、各アプリデベロッパーもコントロールセンターに機能を追加できるようになったので、日常的に使うアプリへのアクセスが容易になりそうだ。
コントロールセンターも一般デベロッパーに開放され、多機能になる(写真:アップル)
増えた機能を収めるために、グループ化して複数の画面に配置できるようになっている。グループは、縦スクロールで切り替える仕組みだ。
ロック画面に配置されているカメラと、ライトのアイコンは、ほかの機能と差し替えることができるようになった。iPhone 15 Proシリーズの本体側面にあるアクションボタンに割り当てられる機能も、よりバリエーションも増え、自分流のカスタマイズできるようになった。
ついにパスワード地獄から解放される?
注目はカスタマイズ性の向上だけではない。面倒なパスワード管理を助けてくれるアプリが登場する。サービスやアプリごとにアカウントがあって、パスワードがもう管理できていないという人は多いのではないだろうか。
秋のアップデートで追加されるのは、その名もズバリ「パスワード」。従来の「キーチェーン」を元に、より幅広いパスワードを一元管理できるようにするもので、アプリやウェブサイトのパスワードはもちろん、Wi-Fiのパスワードや認証コード、パスキーなども管理してくれる。もちろん、iPhoneだけでなくiPad、Mac、Vision Proなどほかのアップル製デバイスと連携される仕組み。さらにウィンドウズPCともiCloud for Windowsアプリ経由で連携させることが可能だ。
パスワードアプリであらゆるパスワードを一元管理(写真:アップル)
自動入力機能を使うと、パスワードアプリに自動的にパスワードが追加され、それぞれのデバイス間で安全に同期される。
パスワードアプリに委ねれば、それぞれに十分な強度の複雑なパスワードを割り当てることができるし、それをTouch IDやFace ID、Optic IDなどの安全な生態認証システムによって解除することができるようになる。
追加される機能は、それだけではない。
メールには、デバイス内の高度なAI処理により「重要」「取引」「アップデート」などカテゴリーを判断し、自動で分類する機能が付いた。
Safariは、ハイライト機能により、ウェブサイトの中の重要な情報……たとえば記事の要約や、レストランの場所や連絡先をユーザーに示す機能が付いた。
写真アプリは、よりシンプルなUIになり、いちいちアルバムを整理しなくても、自動で分類されたテーマごとに閲覧できるようになる。同じく自動的に生成される新しいスライド式の表示には、ユーザーのお気に入りの人やペット、場所などを取り上げるハイライトが表示される。
さまざまな機能が、秋に公開されるiOS 18で追加される(筆者撮影)
秋に基本機能、来年AIの二段構え
そして、なんといってもアップルのAI、Apple Intelligenceだ。
秋に利用可能になるのはアメリカ(英語)のみで、iPhone 15 Pro以降のモデル(iPhone 15は含まれない)となる。それ以外の地域と言語は2025年以降とハッキリ決まっていないが、iPhoneが飛躍的に便利になることは間違いない。
Apple Intelligenceの詳しい機能解説は別記事があるので、ここでは簡単に触れる程度にとどめるが、アップルが目指したのはAIの中でも個人に特化した“パーソナルなインテリジェンス”にある。
WWDCでは、Apple Intelligenceの詳細を解説するさまざまなセッションが行われた。その一部はウェブでアーカイブ動画を公開中だ(筆者撮影)
一般的に、ChatGPTやGeminiなどの大規模言語モデルは大量の学習データを取り込み、広範囲な“知”を提供することを目的としている。
それに対してApple Intelligenceは、オンデバイスでパーソナルなアシスタントになることを指向している。iPhoneの強固なセキュリティーはそのままに、iPhoneはカレンダー、連絡先、メール、メッセージなどさまざまなデータからセマンティック(意味論的)インデックスを作りあげ、我々ユーザーのことを理解して動作するようになる。
プライバシーを守った状態で構築されるセマンティックインデックスがApple Intelligenceの中核的な機能である(写真:アップル)
例えば「Hey Siri ! 今から弟の家に行こうと思うんだけど何時に着く?」と聞けば、新しいApple Intelligenceに対応したSiriは、“今”が現在時刻を示していることも、“弟”が誰であるかも、現在位置がどこであるかも理解し、回答してくれる。
その際に障害になりそうな電車の遅延情報がウェブ上にあれば、そのことも忠告してくれるし、重複しているスケジュールが自分のカレンダーにあれば、それについてもアドバイスをくれる。強力なパーソナルアシスタントに進化するのだ。
Apple Intelligenceの機能だけでは足りない、ウェブの広範囲な知識(主に専門的なものなど)が必要であれば、ChatGPTと連携させることもできる。
iOS 18のアップデートは、秋に基本機能や外観のカスタマイズ、ユーザビリティーの向上という土台固めが行われ、その後2025年になってApple Intelligenceが組み合わさるという二段構えだ。われわれがそれらをすべて使えるようになるのには、しばらく先だが、WWDCで機能の詳細について世界のデベロッパーに開示されたのは、それぞれの機能に対応したアプリの開発を促進するためだ。来年以降、iPhoneの使い方が今とはガラリと変わっているかもしれないと思うと、非常に楽しみだ。
(村上 タクタ : 編集者・ライター)