松尾芭蕉の俳句「しずかさや…」。“セミの声”が響き渡るのに「しずか」なワケ【明治大学教授・齋藤孝氏が解説】
![(※写真はイメージです/PIXTA)](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/3/931e6_1719_5e5f4541_38481ecf-m.jpg)
文章を読んでいて、「これはどういうことだろう?」「作者は何を言いたいんだろう?」といったモヤモヤを抱えたことはありませんか? インプットした情報を正しく読み解く力=「読解力」が高いと、このモヤモヤに対する答えがわかります。齋藤孝氏の著書『12歳までに知っておきたい読解力図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、短い文章を題材に読解力のトレーニングをしましょう。子どものみならず、大人の読解力アップにも役立つ内容です。
<本稿の読み方>
まずは作品をゆっくり丁寧に読もう。作品の世界に深く入り込める音読もオススメだよ。次に、作品の下にある「読み解きクエスチョン」を読んで答えを考えてね。解答が決まったら答え合わせをしよう!
童謡を読み解こう
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「雪」 作者不詳
雪やこんこ霰(あられ)やこんこ
降っては降ってはづんづん積る(ずんずんつもる)
山も野原も綿帽子かぶり
枯木残らず花が咲く
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【読み解きクエスチョン】
Q.「枯木残らず花が咲く」ってどういうことだろう。説明できるかな?
(ヒント:雪が降る冬になると、多くの木々は葉っぱが落ちて枯れたように見えるよね。)
答えは…
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A. 木の枝に雪が積もって、まるで花が咲いているように見えること
【解説】
雪が降り積もるとワクワクするよね! 「雪」はそんなうれしい気持ちにぴったりの童謡だ。詩の中に登場する「綿帽子」は綿で作ったかぶりものを意味する言葉だけれど、山や木の上に積もった雪のたとえにも使うよ。「綿帽子かぶり」も「花が咲く」も、雪が降り積もった様子を表しているんだね。「雪やこんこ霰やこんこ」の「こんこ」は、しきりに雪が降るさまを表現する擬態語だといわれているよ。
イラスト:森のくじら出所:齋藤孝著『12歳までに知っておきたい読解力図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
俳句を読み解こう
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閑(しずか)さや 岩にしみ入(いる) 蝉(せみ)の声
松尾芭蕉
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【読み解きクエスチョン】
Q. どうして蝉の声が聞こえているのに、「しずか」なんだろう?
(ヒント:「閑」は、物音が聞こえない静かさのほかに、のんびりした様子を表す字だよ。)
答えは…
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A. 蝉の声しか聞こえないほど、自分の周りも自分の心もおだやかで静かだから
【解説】
これは江戸時代の俳人・松尾芭蕉が山の上にあるお寺でニイニイゼミの鳴き声を聞いて詠んだ俳句だよ。「しずかだ」というのは、つじつまが合わないように感じるね。
この俳句を詠んだお寺はたくさんの木々に囲まれた、とてものどかな場所なんだ。蝉の声しか聞こえてこないほど周囲に人影がなく静かなことと、その場にいる芭蕉自身のゆったりとした静かな心持ちを表現しているんだね。
イラスト:森のくじら出所:齋藤孝著『12歳までに知っておきたい読解力図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
齋藤 孝
明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に『語彙力こそが教養である』『小学3年生から始める! こども語彙力1200』(いずれもKADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、訳書に『現代語訳 論語』(ちくま新書)、『12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』『12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』『12歳までに知っておきたい読解力図鑑』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)など多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。