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富士山やその周辺で起きているインバウンド効果による外国人観光客のトラブル。富士山を水源とする湧水で知られる「忍野八海」(山梨県忍野村)でも、意外な問題が起きている。

透明な湧水がつくる池の数々と富士山の絶景が望める観光地として、国内外から多くの観光客が訪れている。そんな忍野八海を今年5月、観光で訪れた10代女性が、弁護士ドットコムニュース編集部にある写真を送ってくれた。写真には、透明な池の底におびただしい数の硬貨が沈む様子が写っている。

一体、忍野八海で何が起きているのだろうか?

●外国人に人気ランキング1位の忍野八海

「忍野八海にいくつか池があったのですが、特に硬貨が多かったのが、湧池という池でした。楽しみにしていたのですが、がっかりでした。あんなに水がきれいなのに、水質が悪くならないか心配になります」

そう話す女性。「湧池」には無数の硬貨が投げ入れられていたという。

忍野八海にある8つの池のうち、「湧池」は豊富な湧水量と美しい景観から人気で、周辺に土産物の店舗などが並び、特に観光客が多い場所となっている。もともと忍野八海は江戸時代からの「富士講」(富士山を拝む民間信仰)の巡礼地の一つだった。そのため、すでに1934年には「形状、水質、水量、保全状況、景観、仏教思想(富士信仰)」などの観点から国の天然記念物に指定されている。1985年には環境庁の「名水百選」、1994年には県新富岳百景選定地に選ばれ、2013年には「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉」として、富士山とともに世界遺産登録された。

世界遺産登録後は観光客も増え、インバウンド効果もあって近年は外国人観光客が押し寄せている。外国人観光客向け事業を展開する株式会社movが今年1月に行った調査によると、外国人に人気の景勝地の1位は忍野八海だった。

●4カ国語の看板を設置しているが…

そんな忍野八海で横行している硬貨の投げ入れ。訪れた女性によると、日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語で「池への硬貨投げ入れ禁止」などの看板はあったが、「読んでいる人はいなかったと思います」という。

投入された硬貨はどうしているのだろうか。忍野八海の環境保全を担う忍野村教育委員会の担当者は、弁護士ドットコムニュース編集部の取材に対し、次のように説明する。

「年に数回、ボランティアのダイバーの方をお呼びして、硬貨の回収をしています。年間の量としては、その年によって数百枚だったり数千枚だったりと異なるのでなんとも言えないのですが、近年は外国の硬貨もかなり多くなっています。

禁止の看板は設置していますが、池に硬貨が入っているのを見て、投げ入れてしまうようです」

5月末にも硬貨を回収し、現在集計しているとのことだが、「また外国の硬貨が増えているんじゃないかと思います」と話す。

懸念されるのが水質への影響だ。現状、調査などはおこなっていないが、日本は世界遺産条約を締結しており、環境の保全が求められる。しかし、看板を増やそうにも「景観が損なわれるので、難しいところです」と忍野村の担当者。「何か対策を立てなければと検討中ですが、どうするべきかという解決方法はまだ出ていません」

オーバーツーリズム対策として、富士山では今年7月1日から9月10日まで、入山規制をおこない、登下山道の使用料として1人2000円を徴収する。インバウンド効果も重要ではあるが、環境破壊につながらないよう、各地で対策が求められている。