(写真:Jo Panuwat D/PIXTA)

スマートフォンのユーザーとして流行に敏感な若者が注目されがちですが、高年齢層もスマホを日常的に使用しています。どのようにスマホを利用しているのでしょうか。

メディアの利用ログを取得している「インテージシングルソースパネルi-SSP」のデータを、高年齢層を中心に分析し、その層におけるデジタルメディアの利用実態を探ってみました。

高年齢層が使っているアプリ、観ている動画

次の図は高年齢層(50〜69歳)がスマートフォンでどのようなアプリを使っているのかを集計したものです。トップには検索ブラウザのGoogle Chrome、次点でコミュニケーションツールのLINE、3位には動画サービスYouTubeが入っています。


実は、他年代で同様に利用時間のランキングを出すと上位のコンテンツは上記とほぼ同じとなり、検索ブラウザ・動画サービス・コミュニケーションツール・SNSといったカテゴリーが上位に入ってきます。年齢が異なったとしてもスマートフォンで使われているアプリには大きな差がないことがわかりました。

では、視聴時間3位の動画アプリ「YouTube」で、高年齢層はどのようなチャンネルを視聴しているのでしょうか? i-SSPで確認できるiOSユーザーのモニターによる視聴が多かったYouTubeチャンネルを年代別に集計しました。

世代別の人気YouTubeチャンネル


各年代に共通してニュース系のチャンネルがランクインしています。年代別の特徴を見ていくと、10〜20代は映画やバラエティといったエンタメ系のチャンネルが比較的多く、30〜40代にも同様の傾向が見られます。

50〜60代の高年齢層は上位ランキングのほぼすべてがニュース系チャンネルとなっており、また、料理・レシピ系チャンネルや動物にまつわるコンテンツの接触が目立ちます。

テレビの接触率でも、高年齢層は情報ワイドショーやニュース番組に多く接触していますが、スマートフォンを用いてYouTubeでもニュース系のコンテンツを視聴していることから、高年齢層のメディア利用の大きな目的は「ニュース」を視聴することにあるのかもしれません。

その点では、速報性の高いスマートフォンデバイスやデジタルメディアと、高年齢層のニーズは合致しているといえます。

ネットに「ためになる情報」を求めている高年齢層

続いて、同アンケート調査でYouTubeの利用目的を探ってみましょう。
高年齢層のYouTubeの利用理由として特徴的に高かったのが、「知りたい情報を探すため」でした。


ログデータに表れていた、ニュースコンテンツの視聴やGoogleなどの検索アプリの長時間利用といった実態と、ニーズが一致していました。一方で、10〜40代では、「娯楽として楽しむため」や「暇つぶし」といった利用理由が高く、年代により利用理由に違いが見られます。

また、YouTubeに対する態度や行動についての質問では、高年齢層で「ためになる」や「ここでしか得られない情報がある」といった回答が目立っていました。10〜40代では、「楽しい気持ちになる」や「身近に感じる」といった回答が多く、接触コンテンツによる影響の違いが見られます。


ログデータの傾向とも一致するように、高年齢層のYouTubeの利用に関しては、若年が重視している娯楽的な面白味や癒やしといった目的だけでなく、より生活に役に立つようなためになる情報や、自身が知りたい情報を探し求めていることが見えてきました。

しかし、「信頼できる」という項目では、若年ほど回答が多く、高年齢になるにつれ値が低くなっています。

逆に指摘をするならば、高年齢層の覇権デジタルメディアといってもいいYouTubeにおいて、この「信頼性」という部分の印象を好転できれば、高年齢層はさらにYouTubeを利用する、とも言い換えできそうです。

高年齢層の視聴しているYouTubeチャンネルにおいてもANNやNHKといった知名度がある企業の動画に多くリーチをしていることから、出自の担保・情報の安全性に注目していることがうかがえます。

デジタルメディアに高年齢層が求めるものは?

メディアの利用ログから高年齢層がどのようにスマートフォン、デジタルメディアを使っているのかを確認したところ、ログデータからも意識のデータからも共通して、生活に必要となる「ためになる情報」、さらに言うと「暮らしに役立つ情報」を求めていることがわかりました。

もともと、高年齢層はラジオや新聞といった報道要素が濃い媒体と馴染みがあるためか、デジタルメディアにおいても、ニュースコンテンツや即時性があるものが受け入れられているようです。

直近でマイナンバーカード申請やワクチン接種予約などで、必要に迫られてデジタルシフトをした方も、デジタルメディアのコンテンツに触れていく中でその利便性に気づき、自身に合うメディアを選択している様子がログデータでの利用状況からもうかがえました。

今後も急速な拡大が見込まれる高年齢層のデジタルメディア利用。今回、i-SSPの利用ログを分析することで、ためになる情報・ニュースといった高年齢層のニーズや、デジタルメディアに感じているネック(信頼性への不安)も見えてきました。

調査概要:
【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
調査期間:2013年〜 / 調査サンプル(全国男女15-69歳):13,300s(MB) / 調査手法:機械式(ログ)
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。

【i-SSP Media Profiler】
調査期間:2023年5月〜6月 / 調査サンプル(全国男女15-69歳):13,290s / 調査手法:アンケート調査

(脇田 光 : インテージ メディアアナリスト)