「つばさの党」逮捕されても立候補!へずまりゅうは「100%当選する未来しかない」…都民1400万人が悲鳴をあげる東京「大炎上」都知事選

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 7月7日投開票の東京都知事選で注目されているのは「批判合戦」だ。出馬表明した立憲民主党蓮舫参院議員は、3選を目指す現職の小池百合子都知事への批判のトーンを強める。ただ、蓮舫氏には民主党時代のマニフェスト(公約)を実現できなかったことへの批判や政治団体「つばさの党」による“突撃”の可能性も予想される。4月の衆院東京15区補選では他陣営への妨害で逮捕者が出ているが、今度の都知事選も“カオス”となるのか。経済アナリストの佐藤健太氏が解説するーー。

蓮舫氏が主張する小池百合子氏の「事前の選挙活動」とは

 5月27日に立憲民主党本部で記者会見した蓮舫氏は、政治資金パーティーをめぐる裏金問題で逆風を受ける自民党に加えて、小池百合子都知事の都政運営などを一方的に批判した。さらに「昨年11月から今年3月にかけて8年ぶりに『東京防災ブック』がリニューアルされた。デジタルの時代に『紙』で全戸に配付され、都知事の顔が入ったメッセージが添付されている」と指摘し、「公費を使った事前の選挙活動だと思うのは私だけではないと思う」と批判した。

 防災ブックは関東大震災の発生から100周年を迎えた2023年、居住形態の変化や最新の災害情報などを踏まえてリニューアルされ、災害時は通信障害などでデジタル機器が使用できないことから「紙」で配布されているのだが、蓮舫氏の発言がことさらに注目を浴びたのは「事前の選挙活動」という点だ。

蓮舫氏と枝野氏の訴えは違反なのか否か

 すでに臨戦態勢に入っている蓮舫氏は6月2日に東京・千代田区で街頭演説し、「この夏、七夕に予定されている東京都知事選に蓮舫は挑戦します。皆さんの御支援、どうか宜しくお願いします」と呼びかけた。立憲民主党の枝野幸男衆院議員も「蓮舫さんを勝たせましょう」と声を張り上げている。

 この言動に対し、ネット上で「蓮舫氏は選挙運動をしているではないか」といった声があがったのだ。2016年から蓮舫氏の「二重国籍」問題を追及してきた作家の門田隆将氏は6月4日の「X」(旧ツイッター)に「公職選挙法129条は事前運動を禁止し、239条1項で1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する事を明記している。禁止される選挙運動とは、①特定の公職の選挙に関するもの②特定の候補者のための行為③候補者の当選を図るために投票を得又は得させるための行為④投票獲得に直接または間接に必要かつ有利な行為・・・である。蓮舫氏と枝野氏の訴えは明らかに違反。警察は粛々と摘発を」と投稿した。

「事前の選挙活動」に当たらないと言える理由

 4月の衆院東京15区補選に候補者を擁立し、保守層を中心に支持を集める政治団体「日本保守党」の有本香事務総長も同日のXに「どう見ても事前運動以外の何物でもありません。この街頭演説を平気で流すテレビ局の見識を問いたい。」と批判している。

 選挙運動は広い意味で政治活動の一部となるが、公職選挙法は2つを区別している。東京都選挙管理委員会の定義によれば、政治活動は「政治上の目的をもって行われる一切の活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの」とされ、選挙運動は「特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること」があたる。

 公選法は「選挙運動」ができるのは選挙期間中に限定しているものの、政党や政治家が行う「政治活動」は切り離して考えられるのが一般的だ。蓮舫氏は現職の参院議員として街頭演説で「国政」についても時間を割いており、これらが「事前の選挙活動」に当たらないと言えることを20年間も国会議員を続ける蓮舫氏は熟知しているのだろう。

逮捕されても立候補を検討するつばさの党…そもそもできるのか

 ただ、「批判の女王」ともいわれる蓮舫氏には“天敵”との再対決も予想されている。4月の衆院東京15区補選で蓮舫氏らを口撃していた政治団体「つばさの党」だ。黒川敦彦代表や補選に出馬した根本良輔幹事長らは他陣営への妨害行為をしたとして公選法違反の疑いで5月17日に逮捕されているのだが、黒川氏らは都知事選への出馬も検討しているとされる。

 法律上は逮捕や起訴をされたとしても罪が確定していなければ、立候補することが可能だ。黒川氏らが保釈された場合には選挙運動もできる。刑の確定までは「推定無罪」というわけで、本人以外が立候補の届け出を済ませ、街頭演説なども行うことができる。過去には「獄中立候補」した人物も多く存在している。

 有名なのは、田中角栄元首相だろう。1948年に逮捕・起訴(後に無罪確定)された田中氏は翌年の総選挙に出馬し、当選している。ゼネコン汚職事件で逮捕された中村喜四郎元建設相も当選を重ね、2021年の衆院選で初めて敗北するまで圧倒的な選挙の強さを誇った。先の衆院東京15区補選には、統合型リゾート施設事業の参入をめぐり現金を受け取ったとして収賄容疑で逮捕された秋元司氏が被告の立場で出馬(落選)している。

都知事選、過去最多の立候補数に…へずま氏「100%当選する未来しかない」

 今度の都知事選で黒川氏ら「つばさの党」がどのような行動をするのかは定かではないものの、各立候補予定者は警戒を緩めてはいない。もちろん、法治国家で違法行為があれば厳正に処罰されるべきだ。

 蓮舫氏は5月13日のFNN取材で選挙応援中に車を追跡された衆院東京15区補選を振り返り、「恐怖を感じた。窓をどんどん叩かれ、マイクを使って大声で罵られた」と説明。自宅前で拡声器を使って批判された小池都知事も5月17日の記者会見で「(衆院補選の)候補者も身の危険を感じていた。ありえない事態だ」と語り、模倣犯の出現にも懸念を示している。

 都知事選の事前審査は6月5日に始まったが、立候補に必要な書類は50人以上が受け取り、すでに30人超が出馬の意向を示している。4年前の前回知事選(22人)を大幅に上回り、過去最多となることは必至だ。広島県安芸高田市の石丸伸二市長や元航空幕僚長の田母神俊雄氏、タレントの清水国明氏も、元迷惑系YouTuberのへずまりゅう氏らが立候補の意向を表明。へずま氏は「100%当選する未来しかない」としている。政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は30人を擁立する考えを示している。候補者の乱立は大混乱を予兆させるには十分だ。

「史上最大の首都決戦」は早くも熱を帯びている

 現職の小池都知事には卒業したというカイロ大学の「学歴疑惑」が再燃し、蓮舫氏には台湾籍と日本籍の「二重国籍」問題や民主党政権時代の公約違反が批判材料としてあがっている。行財政改革などを実施すれば財源が捻出できるとして「子ども手当2万6000円」「月額7万円の最低保障年金」「高速道路無料化」などと掲げていたが、いずれも達成されなかったからだ。

「攻撃は最大の防御」ともいわれるが、それぞれの“口撃”はどこに向かい、どのように勝敗に影響するのか。裏金問題で大逆風を受ける自民党が独自候補の擁立を見送る中、「史上最大の首都決戦」は早くも熱を帯びている。