太陽探査機が捉えた、太陽の前を通過する水星
2023年3月3日の記事を編集して再掲載しています。
太陽探査機「ソーラー・オービター」は、2023年1月3日に太陽の前を通過する小さな黒い点を観測しました。この黒い点の正体、実は水星なんです。
猛スピードで軌道を回る水星
水星の直径は地球の3分の1ほどで、直径139万2700kmの太陽と並ぶと小ささが一層際立つように見えます。ソーラー・オービターはNASAと欧州宇宙機関(ESA)との共同ミッションで、2020年の打ち上げ以降、NASAのパーカー・ソーラー・プローブとともに太陽の動きを観測しています。
今回の水星の太陽面通過を、ソーラー・オービターは複数の観測機器で捉えました。太陽の磁場を調べるために設計された偏光・日震撮像装置(PHI)が撮影したのは、太陽黒点のように見えるものの猛スピードで横切っていく水星の姿。太陽コロナの激しい活動を捉える極端紫外線撮像装置は、ガスの層を通る水星のシルエットを収めています。
オービターに搭載されている別の観測機器、コロナ環境のスペクトルイメージング(SPICE)も水星を撮影。宇宙天体物理学研究所の研究者Miho Janvier氏は、「単に太陽の前を通り過ぎているだけでなく、大気の異なる層の前を通っている水星を目にしている」のだとESAのリリースにて述べていました。
水星は最も内側にある惑星で公転周期は88日ですが、その表面温度は超高温かつ超低温と極端です。大気はほとんどないため、温度がマイナス200度近くまで下がることも。ソーラー・オービターは、そんな水星が秒速29マイル(約47km)で軌道を回っている姿を捉えたのでした。
水星への探査計画もあって、ESAとJAXAによるベピ・コロンボミッションは現在、水星周回軌道へと向かっています。
Source: NASA, ESA, NASA Solar System,