Appleはアメリカで提供されているアプリに対してのみ、「アプリ内課金以外の方法での課金システムへのリンク」を挿入することを許可しています。これはAppleの決済システムを迂回することができるため、発表時には大きな注目を集めることとなりました。しかし、大手アプリ開発者は「外部課金システムへのリンク挿入は実質的な節約につながらない」と考えていることが明らかになっています。

Apple Says No Major App Developers Accept New Outside Payments - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-05-10/apple-says-no-major-app-developers-accept-new-outside-payments



Third-party payments through App Store has no savings for developers

https://appleinsider.com/articles/24/05/11/large-us-developers-are-avoiding-third-party-app-store-alternate-payment-plans

Appleは2020年8月にEpic Gamesから訴訟を提起されました。この訴訟に対して、2021年9月に担当判事のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャース氏が、「App StoreはApple以外の支払い方式も認めるように」という判決を下しました。

AppleとEpic Gamesの訴訟で「App StoreはApple以外の支払い方式も認めるように」との判決が下る、一方でAppleの勝利という声も - GIGAZINE



この判決に対する是正措置として、Appleは2024年1月にApp Storeガイドラインを更新し、アプリに「アプリ内課金以外の方法での課金システムへのリンク」を含めることを許可しました。ただし、Appleは依然として外部システムを用いた課金にも手数料の支払いを求めており、加えて外部システムへのリンク挿入はアメリカ向けのアプリのみに限定されています。

ついにAppleがiPhone向けアプリへの「外部課金システムへのリンク挿入」を許可、ただし手数料は発生 - GIGAZINE



しかし、この外部システムへのリンク挿入がアプリ開発者からほとんど注目されていないことが、アメリカのカリフォルニア州で開かれたAppleとEpic Gamesの法廷闘争に関する公聴会の中で明らかになりました。

この公聴会に出席したAppleの幹部によると、Appleは「アプリ内課金を提供しているアプリ」の開発者を推定で6万5000も抱えているそうです。しかし、記事作成時点で「外部課金システムへのリンク挿入」プログラムの利用申請を行ってきたアプリ開発者は、わずか38件であったと証言しています。

外部課金システムへのリンク挿入が利用されていない理由は明確で、売上の27%が手数料として徴収されるためです。これに合わせて、アプリ開発者は支払い処理手数料も支払う必要があります。つまり、アプリ開発者は外部課金システムへのリンク挿入を利用すると、App Storeの支払いシステムを利用する際に支払うことになる「売上の30%」を超える手数料を支払わなければならなくなるわけです。

そのため、Epic GamesはAppleが2024年1月に行ったApp Storeのガイドライン改正について「意味のある変更にはならなかった」と主張。AppleとEpic Gamesの法廷闘争で判事を担当したロジャース判事も、Appleの外部課金システムへのリンク挿入プログラムを厳しく批判しています。

この公聴会に出席したAppleの財務担当ヴァイスプレジデントであるアレックス・ローマン氏によると、外部課金システムへのリンク挿入プログラムに申請してきた38件のアプリ開発者の中に、大手アプリ開発者は含まれていなかったそうです。



Epic Games側の弁護士であるヨナタン・エヴァン氏は、Appleが導入した外部課金システムへのリンク挿入によって、「アプリ利用者の負担が減る(アプリ料金が低下する)」というApple側の主張を裏付けるような証拠が存在するのかを、ローマン氏に質問しています。これに対して、ロジャース判事も「私はデータを探していますが、Apple側は裏付けとなるデータなしで(外部課金システムへのリンク挿入に関する)多くの決定を下したように思えます」と指摘しました。