間下このみさん

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社会問題化している「連れ去り」

 3月14日、「共同親権」の導入を柱とした民法改正案が衆議院で審議入りした。これは離婚後、両親が共に子どもの親権を持つことを可能にする法案だが、その折も折、元国民的子役スター、間下このみさん(45)が離婚・親権を巡って夫と係争中であることが分かった。ノンフィクション作家の西牟田靖氏がこの裁判を取材。そこには「共同親権」を巡る問題が凝縮されていた。

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 現行の民法では、離婚後、子どもの親権は父母のいずれか一方しか持てない。これを単独親権と呼ぶが、それを両親が持つこと(=共同親権)を可能にしようとするのが、今改正案の柱である。改正の動きが出てきた理由のひとつは、夫婦間の離婚を巡るトラブルで、子どもの連れ去りや片親疎外(子どもが別居親との交流を拒絶すること)の例が増え、社会問題化しているからだ。

間下このみさん

 今回、その典型例として紹介するのが、「ガンバレ玄さん」のCMやドラマ「スクール☆ウォーズ」に出演するなど、80年代の国民的子役スターで、現在は女優・写真家として活躍している間下このみさんを巡るトラブルである。

おしどり夫婦のイメージが強かったが…

 このみさんが結婚したのは2004年。相手は11歳年上の一般男性である。07年3月に長女を出産した。胎盤の血管が詰まりやすくなる難病「抗リン脂質抗体症候群」を乗り越えた夫婦の記録は共著として書籍化され、NHKでドラマ化もされた。

 ところが、だ。それから夫婦の関係は一変。15年4月、このみさんは一人娘を連れて、夫の同意なく別居を開始した。21年には離婚と親権を求め、千葉家裁に夫を提訴。23年、東京高裁へと審議の場が移っている。これまでの判決ではいずれも離婚が認められ、長女の親権者はこのみさんという判断がなされてきた。現在、裁判は夫により最高裁へと上告されている。おしどり夫婦というイメージが強かった二人の間にいったい何があったのか。

「子どもの前で、激しくたたいたり、蹴ったり…」

 夫が口を開く。

「このみは子役として活躍したとは思えないぐらい自己肯定感が低いんです。夜中、壁にガンガン頭を打ちつけながら『私なんかいなくなればいい』などと大声で叫び続けることがしばしばでした。08年ごろには、乳幼児だった娘を激しく揺さぶりながら怒鳴りつけたり、大声で怒り出して寝室に閉じこもったり。私が痩せただけで浮気したと決めつけられ、事実もないのに子どもの面前で『浮気野郎』と連呼され、激しくたたいたり、蹴ったりを繰り返されました」

 感情を抑えきれないこのみさんに対し、彼は論理的に説き伏せることが常だったという。時に長女にも手を出してしまうこのみさんに、夫は一計を案じたことも。

「娘に向かっていた暴力をやめさせ、自分に向かわせるため、私、娘に言ったんです。“ママの前でパパを嫌いと言っていいよ”って。すると娘は“パパごめんね”“私のこと、嫌いにならないでね”と言ってくれました」

精神的・肉体的暴力が認定されたにもかかわらず…

 こうした父娘の関係は、15年4月、このみさんの実父が緊急入院したことがきっかけで壊れてしまう。近くにある実家にこのみさんが戻った際、「実母が一人で心配だから」という理由で長女を連れて行った。そして実父の退院後、二人が帰宅することはなかった。夫はこれまでに、婚姻費用(母子の生活費用)として合計1500万円以上を支払っている。にもかかわらず、彼が長女と会えるのは月1回1時間。昨年10月に
下された高裁判決には以下の文章が記された。

「被控訴人(このみさん)は、控訴人(夫)との諍い等の際に、長女の面前でも、控訴人を罵り、控訴人に対し暴力を振るい、また、長女に対しても、感情的な物言いや、厳しい叱責を浴びせ、手を上げたりもしていたことが認められる」

 夫が主張する、このみさんによる精神的・肉体的暴力が認定されたのだ。にもかかわらず高裁は、夫婦関係が既に破綻し、現在、長女が母との同居を望んでいることなどを考慮して、離婚を認容し、長女の親権はこのみさんにあると認めた。

「子どもを引き離したもの勝ちなのでしょうか」

 夫は「ゆう」という名義のインスタグラムでこう投げかけている。

「やはり日本の法律の下では子どもを引き離したもの勝ちなのでしょうか」

 このみさんにも取材を申し込んだが、回答はなかった。

 民法改正案の要綱には「(離婚後も父母は)子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない」という新しい条文が設けられている。

 どのようにすれば無用な争いを避け、両親や子どもら当事者全員が幸せとなる枠組みを作れるのか。3月21日発売の「週刊新潮」では、この訴訟の中身と民法改正の背景について、西牟田氏が詳しく報じている。

「週刊新潮」2024年3月28日号 掲載