近年ではアメリカの一部の州で、スマートフォンなどの修理をメーカーを通さず自分で行う「修理する権利」を認める法律を可決する動きが強まっています。新たにアメリカ・カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏が、2023年10月10日に修理する権利を認める法案「SB-244」に署名し、同法は2024年7月1日から施行されることが発表されました。

Governor Newsom Signs Legislation 10.10.23 | California Governor

https://www.gov.ca.gov/2023/10/10/governor-newsom-signs-legislation-10-10-23/



Right-to-repair is now the law in California - The Verge

https://www.theverge.com/23910066/right-to-repair-law-newsom-california-sb-244

California's 'right to repair' bill is now California's 'right to repair' law

https://www.engadget.com/californias-right-to-repair-bill-is-now-californias-right-to-repair-law-232526782.html

「修理する権利」とはPCやスマートフォンといった製品を購入したユーザーが、メーカーの修理サービスを介さずに自身で修理することができる権利です。電子機器などの分野ではメーカーや特定の修理業者のみが製品を修理できることとなっていましたが、この仕組みは「独占的である」といった非難の対象になっていました。

これまで修理する権利を認める法律は、ニューヨーク州やミネソタ州、コロラド州などで承認されています。

「修理する権利」を認める法律が法制化され2023年7月1日からニューヨークで有効に - GIGAZINE



修理する権利を認める法律「SB-244」は、2019年にカリフォルニア州議会に対して法案が提出され、その後議論が重ねられ、2023年9月に州議会の承認を得た法律です。

今回ニューサム氏によって署名されたSB-244では、50ドル(約7500円)〜99ドル(約1万4700円)で販売された電子機器の場合、デバイスメーカーは交換部品と修理用ツール、製品に関するドキュメントを最低3年間保存する必要があることが規定されています。また、100ドル(約1万5000円)を超える製品には交換部品などの7年間の保存義務があり、法律に違反した場合、1回目の違反で1日当たり1000ドル(約15万円)、2回目の違反で1日当たり2000ドル(約30万円)、その後は1日当たり5000ドル(約74万円)もの罰金が科せられます。



法律の提案者の1人であるジェン・エングストローム氏は「今回のSB-244の成立は、消費者と地球環境にとっての勝利です。私たちはこれまで、地球の貴重な鉱物を採掘し、それらを用いてスマートフォンやその他の電子機器を製造してきました。しかし、それらの製品は数年使用しただけで捨てられてしまっています。私たちは長持ちする製品を製造し、故障の際には自分たちで修理できるようにする必要がありました。そして今、長年の支援のおかげでカリフォルニア州で修理する権利が認められました」と述べています。

また、カリフォルニア州のスーザン・エッグマン氏は「知事がSB-244に署名してくれたことを喜ばしく思います。法案の草稿の議論を始めてから6年もの間、この法律の制定に向けて私たちを後押ししてくれた支持者の皆さまと、修理する権利を認めさせるために支援してくれたメーカーにとても感謝しています。今回の法律は、小規模な修理業者を支援し、消費者に対して修理の選択肢を与え、環境を保護することができる法律です」と語っています。





SB-244に対してはAppleも、「家電製品メーカーに『盗難防止のためのセキュリティ機能を無効化する方法』の提供を義務付けない」「修理業者に対して非純正部品や中古部品の使用の開示を義務付ける」という一部条件付きではあるものの賛同する方針を見せています。

Appleが「修理する権利」の支持へ方針転換、ただし条件付き - GIGAZINE



今回SB-244はニューサム氏によって署名されたことで、2024年7月1日から施行される予定です。SB-244の対象となる電子機器および電化製品は、2021年7月1日以降にカリフォルニア州内で販売された製品です。一方でPlayStation 5をはじめとするビデオゲーム機や警報システムなどは対象外です。