“ナンシーおじさん”もびっくり!クルマ並みの大排気量バイクって何が楽しい?
バイクに乗っていると「それ何cc?」と聞いてくる“ナンシーおじさん”と呼ばれる人たちに出会うことがあります。排気量が大きいほど偉いという価値観はまだライダーの間にも残っているような気がしますが、世の中にはそんなナンシーおじさんもびっくりのクルマ並みの排気量を持つエンジンを搭載したモデルもあります。そこで現行モデルの中から、排気量の大きなマシンをピックアップしてインプレッションをお届けします。
■トライアンフ「ロケット3 GT」(2458cc)
現行の量産バイクで、最も排気量が大きいのがトライアンフの「ロケット3」シリーズ。2458ccの並列3気筒エンジンを縦置きで搭載し、シャフトドライブで後輪を駆動するという文字通りクルマのようなマシンです。最高出力は167PS/6000rpmで、最大トルクは221Nm/4000rpm。
実車を目の前にすると、エンジンだけでなく見た目も個性的。丸目のライトが2つ並んだフェイスもユニークですが、240サイズという極太のリアタイヤを片持ちで支持する機構もマンガに出てきそうな作りです。
車体重量が318kgもあるのでサイドスタンドを起こすのも少し緊張しますが、走り出してしまうと車体は非常に安定しています。重心位置が低いため、街中の交差点のような極低速域でも扱いやすい。エンジンが縦置きでクランクが車体に対して横向きに回転していることもあって、コーナーでの倒し込みも重量から想像するより遥かに軽快です。そして、アクセルを軽く開けるだけで他車を置き去りにできる絶大なトルクを発揮。どんな回転域からも、強烈な加速が味わえるので、他のバイクに先に行かれたりしても、細かいことは気にせず余裕を持って走れるのが一番の魅力でしょう。
■ハーレーダビッドソン「ブレイクアウト117」(1923cc)
大排気量車の代名詞的な存在であるハーレーダビッドソン。中でも、現行量産モデルで最も排気量が大きいのが「ミルウォーキーエイト117」と呼ばれる1923ccエンジンを搭載した「ブレイクアウト117」(CVO=カスタム・ヴィークル・オペレーションというメーカー製カスタムモデルには1977ccのエンジンが採用されています)。
エンジンは同ブランドらしい空冷のV型2気筒。最高出力は102PS/5020rpmと排気量から想像するほどパワフルではありませんが、最大トルクは168Nmを3500rpmで発揮します。エンジンをかけると、空冷Vツインらしい鼓動感と、迫力ある排気音が耳に届きます。この感覚だけで、所有して良かったと思えるライダーも少なくないことでしょう。
排気量の割にエンジン幅はスリムでシート高も665mmと低いので足つきは良好。両足がしっかり接地するため310kgという車重も不安なく支えられます。
街中では、少し高めのギアで低回転での鼓動感を感じながら走るのが気持ちいい。ただ、幹線道路に出て少し大きめにアクセルを開けると強烈なトルクで車体が加速します。空冷エンジンだからのんびりした特性かと思っていると、目がついていかないほど。バンク角は深くなく、倒し込む動作も決して軽くはないので、直線基調のルートでエンジンの鼓動感とトルク感を味わいながら走るのが似合うマシンです。
■BMW「R 18」
BMWブランドの2輪車の中で、史上最も排気量が大きいのが「R 18」。排気量は1801ccで、同ブランドらしい“ボクサー”と呼ばれる空冷の水平対向エンジンです。最高出力は91PS/4750rpmで、最大トルクは158Nm/3000rpm。2000〜4000rpmの回転域では常に150Nmのトルクを発揮し続ける特性です。
デザインのモチーフとなっているのは同社が1936年に発売した「R5」というマシンで、前後スポークホイールのクラシカルなもの。存在感のあるボクサーエンジンと、そこから伸びる2本のメッキマフラーを基調としたクルーザーらしいルックスです。
車重が358kgとかなり重いので、走り始めは少し緊張感が伴います。ただ、トルクが豊かでフラットなので、一度タイヤが回り始めてしまえば安定感は抜群。これだけ排気量のある空冷2気筒エンジンながら、振動が少なく、排気音がジェントルなのも魅力です。ホイールベースは長めですが、クランクが横回転なのもあって倒し込む動作は軽快。ただ、コーナーを楽しむというよりは、豊かなトルクを活かして余裕を持ってクルージングを楽しむのが似合います。コーナーを攻めるのが子どもの遊びに思えてくる、大人のクルーザーと呼ぶのにふさわしい乗り味です。
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“重くて乗りづらそう”というイメージを持たれやすい大排気量マシンですが、走り出してしまえば思った以上に軽快に動くので、予想を裏切られる人も多いはず。基本的にクルーザー的なモデルが多いので、高速域での安定感はクルマに近い快適性を持っていますが、実際に乗り回してみると2輪車らしい軽快なハンドリングが味わえます。国産2輪車では最大排気量となるホンダの「ゴールドウィング」や、6000ccオーバーのエンジンを搭載したボスホスというブランドのマシンにも乗ったことがありますが、これらのマシンも同様でした。
今回紹介したマシンは、最高出力を見れば1000cc前後のスーパースポーツに劣るスペックに見えますが、絶大なトルクによって余裕を持ったツーリングが可能。そんなにスピードは出さないけど、余裕を持ってクルージングを楽しみたいという人は、一度味わってみることをおすすめします。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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