ニアバイシェアは、いわばAndroid版エアドロ。3月からは、Windowsパソコンともデータをやり取りできるようになった(筆者撮影)

iPhone同士で簡単に写真や動画などのデータを送受信できる「AirDrop」は、「エアドロ」という愛称で広く普及している。エアドロはアップル製品としか互換性がなく、Androidユーザーは指をくわえて見ているしかない状態だ。6月に開催されたWWDCでは、次期OSのiOS 17でAirDropが強化されることも発表されており、アップル自身もそれを強みと認識しているようだ。一方で、Androidにもエアドロライクな機能は存在する。「ニアバイシェア」が、それだ。

ニアバイシェアは、Android版のエアドロといった機能で、Android同士で写真や動画といったデータを交換する際に利用できる。利用方法も簡単で、共有メニューから「ニアバイシェア」を選び、データを送りたい相手をタップするだけだ。iPhoneのAirDropと同様、プラットフォームをまたがったデータ共有はできないが、最近では、Windowsとニアバイシェアができるベータ版のアプリも公開されている。こうした機能を使えば、Androidでのデータ交換がもっと簡単になるはずだ。

複数のメーカーが参画し、端末を開発しているAndroidだが、ニアバイシェアはOS共通の機能。異なるメーカーの端末同士でも、データを交換できる。また、メーカーによっては独自にエアドロライクな機能を、より高性能な形で実装していることもある。そこで今回は、Androidのニアバイシェアに焦点を当て、その使い方や裏技を紹介していきたい。

PDFやアプリまで交換できる

iPhoneのAirDropと比べるといまいち普及していない印象もあるが、AndroidにもAndroid 6.0以降の端末に、ニアバイシェアというファイル共有機能が搭載されている。Bluetoothで近くの端末とつながって、実際のデータを送受信するにはWi-Fiも活用する。サイズの小さなデータをやり取りするときにはモバイルネットワークを使うケースもあるが、基本的には端末同士が直接ファイルをやり取りする。データ容量を消費せず、手軽に利用できる手段と言えるだろう。

使い方も簡単で、アプリを選ばない。例えば、Googleフォトの場合、写真や動画を開いた状態で「共有」メニューをタップする。共有メニューの中に、「ニアバイシェア」という項目があるので、これを選択。すると、画面上にニアバイシェアでデータを受け取る相手が表示される。データを送りたい相手を選び、相手側が受け入れれば、すぐに写真や動画が送信される。メールやGoogleフォトの共有機能も利用できるが、ニアバイシェアなら直接送れるため、その場ですぐにデータを送れる。

送受信するデータは、写真や動画だけではない。ニアバイシェアはGoogleフォトアプリ以外からも呼び出すことが可能だからだ。ダウンロードしたPDFファイルを同僚や友人、家族などに送信したい場合は、グーグル純正の「Files」というファイル管理アプリを使うといい。メーカーによっては、ファイル管理アプリを独自に搭載している端末もあるため、その場合はそちらを使用することもできる。


Filesアプリからのニアバイシェアは、写真や動画だけでなく、PDFやドキュメントデータ、アプリなどまで共有できる(筆者撮影)

Filesには、ニアバイシェアが組み込まれており、画面下のタブで「ニアバイシェア」を選んで「送信」ボタンをタップすると、いきなり相手に送りたいファイルを選ぶことが可能だ。ダウンロードしたPDFファイルや、レコーダーアプリで録音した音声など、画像や動画にとどまらずファイルを自由に選択できる。また、ここからアプリを送信することも可能。受信した側は、ニアバイシェアの完了画面からダイレクトにアプリをインストールできて便利だ。

ほかにも、Chromeなどのブラウザーで開いているサイトを相手にニアバイシェアで送って表示させたり、連絡先の交換にも使える。

Androidユーザー同士に限定されてしまうものの、プラットフォーム別で見れば日本でもスマホの半分程度はAndroidが占めている。ニアバイシェアでやり取りできる機会は、意外と多いはずだ。

ベータ版ながらWindowsパソコンにも対応

Android同士のファイル共有方法としてスタートしたニアバイシェアだが、今では、対応するプラットフォームを徐々に広げている。同じグーグルが展開するPCのChromebookも、ニアバイシェア対応のデバイスだ。iPhoneとMacがAirDropで簡単にファイル共有できるように、AndroidとChromebookも連携を取りやすい。ただ、ChromebookはGIGAスクールで採用されたこともあり、圧倒的に学校に採用されているケースが多い。学生の利用率は高そうだが、本稿を読むような人がビジネスシーンでChromebookを活用しているのはレアと言えるだろう。

このようなケースも想定してか、グーグルはニアバイシェアの対応プラットフォームを徐々に拡大している。マイクロソフトのWindowsは、その代表例だ。Windows版のニアバイシェアは、3月にベータ版として導入されたばかり。OS標準の機能ではなく、Windowsにアプリをインストールし、グーグルアカウントでログインすることでニアバイシェアの利用が可能になる。

ベータ版のため不具合はありそうだが、筆者が試してみた限り、画像や表示中のWebサイトは、Android同士と同じように共有することができた。Windows版のベータ版ニアバイシェアは、このページで公開されている。要件は、64ビットのWindows 10以上を搭載したパソコンであること。ARM以外のCPUを搭載したパソコンに限定される。


Windows版のニアバイシェア。ドラッグ&ドロップで、簡単にスマホとファイルを共有可能だ(筆者撮影)

上記のページで「ベータ版を使ってみる」をクリックすると、インストーラーがダウンロードされ、アプリをWindowsにインストールすることができる。あとの手順は、Androidとほぼ同じ。グーグルアカウントでログインしたあと、デバイス名や受信範囲などを決めて、ファイルをやり取りする。

パソコンからファイルを送りたいときには、「ファイルを選択」をクリックして、ファイラーで送りたいファイルやフォルダを選び、スマホ側で受信する。

逆に、パソコンでニアバイシェアのアプリが起動した状態だと、Androidスマホでニアバイシェアを立ち上げた際に、先に設定したパソコンのデバイス名が表示される。パソコン版は、歯車マークの設定メニューで、受信したファイルを保存しておくフォルダを設定することも可能だ。AndroidとWindowsパソコンを組み合わせて使っている人には非常に便利な仕組みのため、インストールしておくことをお勧めしたい。

iPhoneユーザーと「QRコード共有」も

便利なAndroidのニアバイシェアだが、メーカーによっては、独自のファイル共有機能を端末に実装していることがある。サムスン電子のGalaxyシリーズに搭載される「クイック共有」は、そのひとつだ。クイック共有も、基本的にはAirDropやニアバイシェアと同じで、Galaxy同士でデータを送受信するための機能。対象がGalaxyに絞られているぶん利用できるユーザーは減ってしまうが、ニアバイシェアのように端末による相性の問題は少なくなっていて、確実性が高い。

また、Galaxy同士に限定されてしまうためか、クイック共有にはクラウド経由でファイルを送信する機能が統合されている。クイック共有のメニューで「リンクをコピー」や「QRコードで共有」といったメニューを選ぶと、選択したファイルがサムスンの用意したクラウドへ、一時的にアップロードされる。リンクをメールなどで受け取ったり、その場でQRコードを読み込むと、そのファイルをダウンロードできる。


Galaxyシリーズのクイック共有なら、QRコードで相手にファイルを送ることも可能だ(筆者撮影)

送信先の端末は、Androidに限らない。例えば、目の前にいるiPhoneユーザーにGalaxyから画像を送りたい場合、クイック共有を開き、「QRコードで共有」をタップする。すると、その画像がクラウドにアップロードされ、Galaxyの画面上にQRコードが表示される。iPhoneでそれを読み込むと、クラウドに接続して、画像をダウンロードできる。

この方法だと、ファイルをアップロードする側も、ダウンロードする側もデータ通信が必要になるため、ニアバイシェアやクイック共有で直接ファイルをやり取りするのとは異なり、データ容量を消費してしまう。また、通信品質次第だが、アップロードやダウンロードの時間もかかるため、手軽さはやや落ちる。一方で、プラットフォームを問わずにファイルを送れるのは便利だ。

逆にiPhoneからは、iCloudリンクという方法でAndroidに写真や動画を共有することが可能だ。AirDropほどの手軽さはないが、SMSやメールを使ってその場で共有できるため、試してもらうといいだろう。AirDropとニアバイシェアに互換性がないため、プラットフォームをまたがる場合は、クラウド経由が最善の方法と言えそうだ。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)