Vol.127-3

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはGoogleが発売を発表した「Pixel 7a」。同じタイミングで登場した「Pixel Tablet」から、Googleのタブレット戦略を解説する。

↑Pixel Tablet

 

Googleのタブレット戦略は、過去から少々フラフラしている。

 

タブレットが登場した2010年代前半には自ら「Nexus 7」を軸に低価格タブレットの市場を牽引したものの、収益性の問題は大きかった。市場全体が低価格路線に動きすぎて、Google自身も利益を生めなかったのだ。

 

その後同社は、Chrome OSベースの「Chromebook」にも着目する。低価格PC的な製品やタブレットについてはChrome OSを推すようになり、Androidはスマホ向け……という棲み分けが2019年まで色濃かった。

 

それが再び変わり始めたのは2021年。Chromebookは教育市場でこそ支持されたものの、ほかではシェアを伸ばせない。低価格タブレットはAmazonや中国系企業、ハイエンドはアップルにカバーされてしまい、ハイエンド・Androidタブレットのシェアは上がらない。サムスンなど頑張っているメーカーもあるのだが、それだけではプレゼンスがなかなか上がっていない状況がある。

 

そこで昨年、Googleが打ち出したのが「タブレット市場への回帰」。Pixel Tabletの存在を早めに公開、Pixelブランドとして、改めてフルラインナップをそろえていくことを宣言したわけだ。

 

それから1年、ようやく市場に製品が出てくる。Googleの担当者によれば、狙いは「家のなかに定位置を作ること」だった。

 

タブレットは、充電中の「置き場」が意外と面倒だ。ケーブルでつないで放り出しておくのはあまり見栄えも良くない。PCやスマートフォンほど「家の中での定位置」がしっかりしていない、という指摘もよくわかる。だから、タブレットを買った人の一定数が、タブレット用スタンドを買い求めている。

 

Googleが考えたのは、充電台を兼ねた、価値のあるデバイスとセットにすることだ。Pixel Tabletはスピーカーホルダーをセットとして販売し、外せばタブレット・つければスマートディスプレイとして使える形になっている。

 

ちょっとしたアイデアだが、確かに魅力的ではあるだろう。映像を見たりちょっとしたビデオ通話をしたりするには、スマートディスプレイはとても便利なもの。家電のコントロールにも向く。一方で、定位置以外にも持ち運んで使うなら、タブレットとして取り外せた方がありがたい。

 

ただし、この製品は完全に「家庭内」に特化している。GPSなどは内蔵していないし、セルラー版の用意もない。Googleとして、「タブレットは家庭内で使われている」という調査結果をもとに開発した製品であるからだ。そうすると、ハイエンドタブレットを推すという路線とはちょっとズレもあるように感じる。だが、別な言い方をするなら、「タブレットを作るなら、なんらかのギミックがないとiPadとの競合上不利である」ということなのかもしれない。

 

では、GoogleがPixel製品を増やす理由はどこにあるのか? そのあたりは次回解説してみよう。

 

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