前日会見で笑顔を見せる福部真子【写真:浜田洋平】

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陸上・織田記念国際へ会見

 陸上・織田記念国際が29日にエディオンスタジアム広島で行われる。28日は一部選手が会見。女子100メートル障害の日本記録保持者・福部真子(日本建設工業)は、地元・広島のレースを前にオフに大幅なフィジカル強化に成功したことを明かした。

 27歳の福部はこの日は晴れやかな空のもとで最終調整。29日は雨予報で気温も下がることが見込まれる。「冬は12秒5を切りたいという目標を持って、コーチと一緒に取り組んできました。その中でフィジカルとハードル技術の面で今はかなり苦戦している状態です。でも、走り自体は力強くなっている。エンジンはつめているかなと思う」と冬の強化期間を振り返った。

 冬場はフィジカルトレーニングを積み、パワーアップを実感しているという。

「しっかりフィジカルをつける面では成功していると思う。今回どの程度自分が走れるかわからないので、具体的なことは言えないけど、冬はしっかり越したので楽しみではあります。上半身、肩周りが一回り、二回り大きくなった。お尻とハムストリングも一回り、二回り。自分でも感じているし、数値的にもよくなっている。スクワットでも20キロ以上、上がっています。

 ウェートはベンチプレスとスクワットだけ。あとは自重。筋肉がモリモリつきました。練習前にサーキットを入れるのも増えた。そういう意味では週4くらいがフィジカルトレーニング。筋肉量も2.4キロ、体重も4キロ増えて過体重ですね(笑)。この冬は疲労感が凄くあって、頭も凄く使っていた。疲労度合いが昨シーズンの冬より大きいので、夜にお米を1合食べていました。最初はしんどかったけど、夜に糖質を取って回復が早かったので、練習もしっかりつめました」

 広島皆実高時代にインターハイ3連覇を達成。日体大進学以降は伸び悩んだが、昨年は26歳にして日本選手権初優勝。7月のオレゴン世界陸上準決勝で日本記録を更新(12秒82)してみせた。さらに同9月の全日本実業団対抗で自身の日本記録を更新する12秒73(追い風1.1メートル)をマーク。一気に飛躍を遂げ、今年8月のブダペスト世界陸上の参加標準記録(12秒78)を突破した。

 フィジカル強化は海外勢と戦うための絶対条件だと思い、取り組んだ。ただ、今は筋肉が増えたことによる感覚のズレがある状況。今年は試行錯誤の期間と割り切っている。全てはパリ五輪決勝のレーンに立つためだ。

「走っていて重たくなったなという感覚はないけど、まだキレがない状態。今までと同じ感覚では歩幅が大きくなっているので、その感覚のズレを調整することに手こずっています。昨シーズンはオレゴンで世界新のレースをありがたいことに体験させていただいた。やっぱりそこで背中が見えなかった。その後に12秒73を出したけど、それをもってしてもあの準決勝では歯が立たない。その現実を重く受け止めています。

 今年、参加標準は切っているけど、守りに入って12秒7、6を目指して今年ブダペストに行っても同じことの繰り返し。やっぱりそんなに甘くない。パリ五輪のファイナルを一番の目標にしているので、今年標準を切っているけど、もし6月に間に合わないとなっても、それでも試していかないといけないと思っています」

 今後は5月6、7日の木南道孝記念にエントリー。6月に日本選手権(ともに大阪)を控える。日本記録保持者として地元大会を迎えるが、「何も考えていないですね」と大笑い。終始明るい表情で今の挑戦を楽しんでいた。

「去年は去年なので。日本記録保持者ですけど、コンスタントに出していない。今季も(他の選手から)日本記録がどんどん出てくると思う。またチャレンジャーとしていきたいです。(今の心境は)不安と覚悟とワクワクみたいな(笑)。感情がごちゃごちゃで情緒不安定なんですけど、12秒5を目指せている今を大切にしたい。ここまで這い上がって来られたことをプライドとして持ちつつ、チャレンジしていきたい」

 今季は広島の記録会で200メートルにも出場しながら調整。今大会は青木益未(七十七銀行)、寺田明日香(ジャパンクリエイト)の前日本記録保持者2人も出場する。近年、日本記録が続々と更新される女子100メートル障害。日本選手権女王は世界を見据えて成長を続けている。

(THE ANSWER編集部)