住友生命保険相互会社が主催する、第16回「未来を強くする子育てプロジェクト」の表彰式が、2023年3月3日にオンラインにて開催されました。

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 「未来を強くする子育てプロジェクト」は「子育て支援活動の表彰」と「女性研究者への支援」の2つの公募事業を柱として、すこやかな子育てと夢のある未来づくりを応援することを目的とし、2007年から毎年開催されています。

 第16回目となる今回は、2022年7月11日から9月9日の間で募集が行われ、「子育て支援活動の表彰」には225組、「女性研究者への支援」には109名が応募。 選考委員による審査を経て、この度各部門の受賞者が決定しました。

 表彰式には、2つのテーマに沿って受賞した計22組の団体・個人がオンラインにて参加。はじめに住友生命保険相互会社取締役代表執行役社長 高田幸徳さんが登壇し、挨拶を行いました。

 その中で、「子育て支援と少子化対策は政府が掲げる大きなテーマのひとつである中、受賞した皆様の活動や具体的な事例が今後の参考になったり、ロールモデルになっていけば、大変うれしく思います。社会全体で子どもを見守り、育てていく環境をこれからも築いていけるよう、一層の支援の輪が広がっていくことを願っています」と、活動の意義や今後の展望を述べていました。

■ 「子育て支援活動の表彰」部門は12組が受賞

 続く表彰式ではまず、良い子育て環境づくりに取り組む個人や団体が表彰される「子育て支援活動の表彰」部門の受賞者を発表。「スミセイ未来賞」を受賞した以下の団体10組名と、活動概要の紹介が行われました。


・一般社団法人 Orange Kids’ Care Lab. (福井県福井市)
・特定非営利活動法人オン・ザ・ロード(東京都葛飾区)
・NPO法人CLACK(大阪府大阪市)
・特定非営利活動法人 子育てパレット(東京都足立区)
・特定非営利活動法人 子どもセンターパオ(愛知県名古屋市)
・団欒長屋プロジェクト(大阪府豊中市)
・特定非営利活動法人 日本冒険遊び場づくり協会(東京都豊島区)
・NPO法人 母力向上委員会(静岡県富士宮市)
・一般社団法人 ひとことつむぐ(大阪府大阪市)
・一般社団法人 よりそいネットワークぎふ(岐阜県岐阜市)

 続いて、特に優れた活動を行う団体に贈られる「スミセイ未来大賞」を発表。「文部科学大臣賞」を「特定非営利活動法人 みんなのおうち」が、「厚生労働大臣賞」を「特定非営利活動法人 ただいま」(茨城県ひたちなか市)が受賞しました。

 「特定非営利活動法人 みんなのおうち」(東京都新宿区)は、新宿区で外国にルーツを持つ子どもたちに向けた学習支援に加え、その家族の日本語支援や生活支援など日本での暮らしが円滑に行くようにサポートし、住民と移住者が一体となった地域づくりを行えるよう活動しています。

 代表理事を務める小林普子(ひろこ)さんは「賞をいただくことによって日本で生活している外国にルーツのある青少年や家族の人たちの存在へ関心が向くになるだろうなと、大変うれしく思います」と、喜びの気持ちをコメント。

 続けて、「さらに青少年へのキャリア教育を充実させていきたいと思います。彼ら、彼女らが日本の社会に出て、生き生きと活躍していける一助となれるのではないかと思うと共に、コミュニティの中で多文化共生が可能になるように、活動をバージョンアップさせていきたいと考えています」と、今後への意気込みを力強く話しました。

 「特定非営利活動法人 ただいま」は、寺院を地域に開かれた元来の姿に戻すべく、母親たちに呼び掛け、寺の庫裡や会館などの設備を活かしたカフェを開始し、子どもの居場所の確保や受け入れ活動を行うほか、地域食堂や若年女性の支援を実施したりと、多様な活動を展開しています。

 代表理事を務める増田真紀子さんは、「今後はコロナが落ち着いてきたこともあり、子どもとその家族だけでなく、独居老人などにもお寺に足を運んでもらえるような活動を展開していけたらと考えています」と、コミュニティの輪を広げていくことを思案中の様子。

 さらに「コンビニの数よりも多いと言われるお寺が、今以上に地域に開かれていったらいいなと思います。出会ったひとりひとりに必要な支援は何かを考えながら、温かい場を展開していけたらと考えています」と、集団においても個を大切にしていきたい考えを述べました。

 12組の受賞について、選考委員を務めた奥山千鶴子さん(認定NPO法人びーのびーの理事長)は「どの団体も地域課題にいち早く気付かれて、キャッチされて、困り感のあるお子さんや子育て家庭のために具体的に届く支援を行なっているな、というふうに感じました」と、選考の理由と、取り組みぶりに対する感心の気持ちをコメント。

 また、選考委員の米田佐知子さん(子どもの未来サポートオフィス代表)は「受賞された団体の三分の二が居場所づくりをされている団体で、それぞれの人たちが地域にある資源を生かしながら、多様な場づくりを行っていました。こういった居場所の多様性というのも申請の中からは見て取ることができました」と、講評しました。

■ 「女性研究者への支援」部門は10名が受賞

 続いての「女性研究者への支援」部門は、育児のために研究を中断している女性研究者および、育児を行いながら研究を続けている女性研究者が、研究環境や生活環境を維持・継続するために、助成金1年間100万円を上限として、2年間支給するという支援。「スミセイ女性研究者奨励賞」を、以下の10名が受賞しました。

・有間梨絵さん:東京大学大学院 教育学研究科
・大形綾さん:京都外国語大学 非常勤講師
・小川絵美子さん:東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所
・鈴木和歌奈さん:日本学術振興会 RRA 海外特別研究員 オランダ・アムステルダム大学
・ターン有加里ジェシカさん:東京大学大学院 人文社会系研究科
・中田明香さん:東京学芸大学大学院 連合学校教育学研究科
・畑山直子さん:特定非営利活動法人サーベイ 研究員
・范艶芬さん:京都大学大学院 文学研究科
・堀内多恵さん:高千穂大学 人間科学部 兼任講師
・ルボフスキ伊藤綾さん:スイス・ジュネーブ大学 文学部東アジア研究科日本学科

 受賞者を代表し、「非市場領域における仕事分担の理想と現実に関する実証研究」をテーマにした、ターン有加里ジェシカさんが登壇。

 「自分が実際に妊娠をしてそれから今に至るまで、女性ならではの制約を多々痛感してまいりました。特にショックだったのが社会的制約です。ささいな出来事の積み重ねがつらくて、母親になったのに研究も頑張りたいと思う自分がおかしいんじゃないかと、つらくて涙が出ることもありました」と、出産後も研究を続けることに対し、さまざまな葛藤があった胸中を吐露。

 「しかし、このたび賞をいただけたこと、またそもそもこの賞が16年前から続いているということが、母親だからといって研究を諦めなくていいのだと背中を押してくれたように感じています」と、女性研究者への支援活動の存在に、大いに勇気づけられたようでした。

 これについて、選考委員の大日向雅美さん(恵泉女学園大学学長)は、「女性が子育てをしながら仕事、研究をするという大変なテーマに加えてこのコロナ禍。この3年余りどんなに大変でいらっしゃったか、胸傷む思いで選考に当たらせていただきました」と、選考の難しさがあったことを告白。

 「でもそれは私の取り越し苦労で、むしろ皆様は厳しいピンチを乗り越えるお力を発揮してくださった。ピンチをチャンスと考え、しなやかに乗り越える力に感銘を覚えました。本当に私自身励まされる思いで、選考に当たる幸せをかみしめた今回の回でございました」と、母親であり、女性である受賞者たちのパワーに心を打たれた様子でした。

■ 「つなげようというような実践がとても多かった」選考委員長の汐見稔幸さんが総評

 表彰式の最後には、選考委員長の汐見稔幸さん(東京大学名誉教授、白梅学園大学名誉学長)が総評。

 子育て支援活動部門については、「時代時代によって少しずつテーマが変わってくる。でもこういう部門にもっと社会的な支援活動があればいいなと思っていたところにどんどん手を挙げてやっておられる方々が応募してこられる。そのことをずっと繰り返し体験してまいりました」と、活動の行き届きぶりを評価。

 また、「今年、特に受賞された団体の活動を見ていますと、つなげようというような実践がとても多かったような気が致します」と、地域に根差したコミュニティ構築がポイントとなった様子。各団体ごとの強い思いがはっきりと伝わったようでした。

 女性研究者への支援部門については、「男と女を対立させるというのではなくて、女性の研究を支えながら男性が生活していく、つなげていく、という方向に少しずつ視点が移ってきているということを強く感じました」と、女性個人だけでなく周囲の男性の意識の変化にも着目。

 近年は男性の育児参加・理解にも焦点があてられる機会が増えています。出産後の女性が活躍するためには、こうした支援活動のほか、夫や職場の同僚・上司をはじめとする、男性側からのサポートも重要であると言えそうです。

取材協力:住友生命保険相互会社

(山口弘剛)