「巨人症」は大人と子供で症状が違うってご存知でしたか?

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巨人症は大人も子供も発症する可能性のある病気で、その特徴的な見た目に悩む方は少なくありません。

それだけでなく、巨人症では下垂体や各種ホルモンに関連したさまざまな症状が現れる可能性があることをご存じでしょうか。

今回は、そんな巨人症の特徴や症状についてご紹介します。大人と子供での症状の違いや、治療方法についても詳しくみていきましょう。

巨人症とは?

巨人症とはどんな病気なのですか?

巨人症は、成長ホルモンが過剰に分泌されることでさまざまな症状が現れる病気です。

「巨人症」という名前から想像がつくように、身体が大きくなります。

それだけでなく、糖尿病・高血圧・心不全のような病気を引き起こすリスクがあるのが特徴です。

先端巨大症を含む日本人の巨人症の発病率は、人口100万人あたり4~5人といわれています。

「下垂体性成長ホルモン分泌亢進症」という病名で厚生労働省が定める指定難病の1つで、有病率は100万人あたり50~60人と珍しい病気です。

巨人症には種類があると聞いたのですが…

巨人症には「下垂体性巨人症」と「先端巨大症」の2種類があり、成長期の子供が発症した場合は下垂体性巨人症と呼ばれます。

また、大人になってから発症した場合は、先端巨大症といいます。

「巨人症」と一言でいっても大人と子供で症状が異なるのが特徴です。

そうなのですね。大人と子供の巨人症では何か違いはありますか?

大人と子供の巨人症の主な違いは症状の現れ方です。

どちらも成長ホルモンの過剰分泌が原因でさまざまな症状が現れるのが特徴です。

しかし、骨格の成長段階にある子供と成長が止まった大人では症状の出方は同じではありません。

骨には骨端軟骨線という組織があり、成長ホルモンの影響で伸張し背が伸びていきます。

しかし、成長期を過ぎると骨端軟骨線は閉鎖するため、大人の場合は身長は伸びずに身体の先端部分が大きくなるのが特徴です。

巨人症を発症したときにみられる症状などがあれば教えてください。

巨人症を発症すると、子供の場合は身長が異常なまでに伸びるのが特徴です。

単に「クラスの中で一番背が高い子供」というイメージではありません。

同年代の子供と比較しても大きすぎるのが特徴で、それゆえ「巨人症」という病名がついています。

また、巨人症を発症すると二次性徴が遅れることが多いです。

大人になってから発症する先端巨大症の場合は、身長が伸びるのではなく顎・鼻・耳たぶ・手足・舌といった身体の先端部分が大きくなります。

汗をかきやすくなったり、胸板が厚くなったりすることも少なくありません。

しかし、見た目の変化は早いスピードで起こるわけではなく、発症してから気づくまでに数年かかることがあります。

先端巨大症では、見た目の変化の他にも、女性の場合は生理不順・不妊・乳汁漏出症、男性の場合は勃起不全が症状として現れることが多いです。

巨人症を発症するのは何か原因があるのでしょうか?

巨人症の症状は成長ホルモンの過剰分泌によるものですが、その原因のほとんどが下垂体腺腫という良性腫瘍です。

脳の中には下垂体という器官があり、成長ホルモンをはじめ乳腺の発育・糖や脂質の代謝・精子や卵子の生成などに関連するさまざまなホルモンを分泌しています。

下垂体はそら豆大の小さな器官ですが、とても重要な役割を果たしているのです。

巨人症はどのように診断される?

巨人症だと疑う場合は何科を受診するのが良いのでしょうか?

巨人症は、成長ホルモンの過剰分泌が原因で起こる内分泌疾患の1つです。

そのため、巨人症の治療は内分泌内科が専門になります。

また、下垂体は脳内に位置するため脳神経外科でも診断が可能です。

しかし、「もしかして…」と思ってもいきなり内分泌内科や脳神経外科を受診するのはハードルが高いという方もいるでしょう。

お子様の巨人症を疑う場合、まずはかかりつけの小児科を受診しましょう。大人の場合は、かかりつけ医や内科を受診してください。

巨人症を疑う所見があれば、検査機器や治療体制が整った大きな病院に紹介状を書いてくれます。

巨人症を診断するうえで行う検査内容が知りたいです。

巨人症を疑う症状があれば、血液検査・X線検査・CT検査・MRI検査などを行って診断につなげます。

成長ホルモンの過剰分泌によって巨人症や先端巨大症の特徴的な症状が現れるため、血液検査で成長ホルモンの数値を確認します。

成長ホルモンの数値が正常値よりも高ければ、当然過剰分泌を疑わなければなりません。

しかし、1回だけの数値では判断できないため数回検査して同じように高値であれば過剰に分泌されている状態と判断します。

その他、ブドウ糖を服用する糖負荷試験によって、成長ホルモンの数値の動きを確認することも診断に有用です。

また、巨人症の原因はほとんどが下垂体腺腫であるため、下垂体腺腫を確認するために一般的な内容から内分泌ホルモンに関して血液検査と頭部MRI画像検査が主に行われます。

血液検査では成長ホルモンと、その下流として分泌が促される「IGF-1」と呼ばれるホルモンの血中濃度の上昇を確認します。

また、一定量の糖分を経口摂取して、成長ホルモンの血中濃度変化を確認する負荷試験を行います。

正常では、糖分の負荷では血液中の成長ホルモンは低下しますが、この巨人症(下垂体腺腫)が存在する場合には、反対に上昇したりすることが確認されます。

下垂体腺腫を確認するために、頭部に対してCT検査やMRI検査が行われます。

その他、手根骨のレントゲンを主に撮影して、小児であれば実際の年齢と骨の年齢の差などを評価します。

巨人症の原因疾患は、そのほとんどが下垂体腺腫によるものであるため、下垂体腺腫に準じた治療法がとられます。

治療法は手術療法が第一に選択されますが、状況によっては薬物療法やガンマナイフがその代わりになることもあります。

巨人症を放置するリスクなど教えてください。

巨人症は背が高くなり過ぎたり、身体の先端が大きくなったりするというだけの病気ではありません。

適切な治療が施されないまま放置すると、糖尿病・高血圧・心不全・大腸がん・甲状腺がんのような病気を発症するリスクを高めます。

糖尿病や高血圧は合併症として多く、巨人症の治療とともにコントロールが必要です。

成長ホルモンの過剰分泌によって心臓が大きくなるケースもあり、常に心臓に負荷がかかるため心不全のリスクを高めます。

それだけでなく、甲状腺腺腫が頭部を圧迫することで頭痛・視野狭窄・手足の痺れ・倦怠感を起こすケースも少なくありません。

また、舌が大きくなると睡眠時無呼吸症候群になるリスクも高まります。

このように、巨人症を放置することで命に関わるような症状を引き起こすことがあるのです。

そのため、巨人症を発症すると同年代の方よりも病気による死亡率が高くなるといわれています。

巨人症の治療方法とは

巨人症は治療で治る病気ですか?

巨人症は、原因である下垂体腺腫を取り除けば治る可能性があります。

下垂体腺腫が大きく完全に取り除けないケースもありますが、薬で成長ホルモンをコントロールできれば症状を抑えることは可能です。

糖尿病や高血圧を併発している場合は、それらの経過観察もしなければなりません。

また、命に関わる合併症を起こさないためにも、しっかりと治療を受けることが大切です。

巨人症の治療方法が知りたいです。

巨人症の治療方法の多くは、下垂体腺腫の外科的手術が基本となります。

鼻腔(鼻の穴)から内視鏡を通して取り除く方法と、開頭といって頭にメスを入れる方法があります。

鼻の穴を通るほどの小さい腫瘍であれば内視鏡による切除が可能ですが、腫瘍が大きい場合は開頭術になります。

どちらも全身麻酔で行われる手術のため、「頭の手術」という面と「全身麻酔」という面の両方で不安を感じる方は少なくありません。

不安なことは事前に確認し、解消してから手術に臨むことが大切です。

手術で下垂体腺腫が取り切れない場合は、放射線治療を行うケースもあります。

また、内科的な薬物治療としてソマトスタチンアナログを投与して、成長ホルモン量の減少により、腫瘍も小さくなることが期待できます。

このほか、ドーパミンアゴニストを使用する場合もあります。

いずれにしても巨人症の治療は短期間で終わるものではありません。

周囲の方のサポートが必要不可欠といえます。

巨人症は再発などするのですか?心配です…

手術を受けても、再発の可能性はゼロではありません。

下垂体腺腫が大きく取り切れない場合や、下垂体腺腫が周囲の組織に浸潤している場合は治癒できず再発のリスクがあります。

しかし、放射線治療や薬物療法によって下垂体腺腫を小さくしたりホルモンをコントロールしたりすることは可能です。

コントロールが上手くいかないと再発や悪化のリスクが高まり、命に関わる状態になりかねません。

そのため、治療や定期受診を中断しないことが大切です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

巨人症を発症すると、子供の場合は同年代の子供よりも異常なまでに身長が高くなるという特徴があります。

大人の場合は身長ではなく身体の末端が大きくなり、その特徴的な見た目からコンプレックスに感じる方も少なくありません。

身体にとって重大な症状を呈することが多く、早期発見・早期治療が重要な病気です。

放っておくと命に関わる病気に発展するリスクがあるため、気になる症状があれば医師に相談することをおすすめします。

編集部まとめ


巨人病は下垂体腺腫という良性腫瘍が原因となり、成長ホルモンが過剰分泌されることによって起こる病気です。

高身長や身体の先端の肥大といった見た目の症状だけでなく、糖尿病や高血圧にも注意しなければなりません。

巨人症や先端巨大症を放置すると心臓に負荷をかけたり、甲状腺がん・大腸がんのリスクを高めたりするため早期発見・早期治療が重要です。

下垂体腺腫を手術で取り除いたり放射線治療・薬物療法を併用したりすることで、病気をコントロールすることができます。

「子供の背が伸びすぎではないか?」「顎や鼻が大きくなった気がする」など気になる症状があれば、早めに受診して早期発見・早期治療につなげてください。

参考文献

下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(指定難病77)|難病情報センター

下垂体性巨人症|小児慢性特定疾病情報センター

先端巨大症|小児慢性特定疾病情報センター

先端巨大症(末端巨大症)/巨人症|DoctorsFile

巨人症|Medical Note

脳神経外科・脳血管内治療科|県立広島病院