「脳出血」を発症すると現れる具体的な症状はご存知ですか?医師が解説!

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脳出血は脳の血管が破れて脳の中に出血し、頭痛や嘔吐、半身麻痺などの症状が現れる脳血管障害のひとつです。脳梗塞、くも膜下出血、一過性虚血発作(TIA)とともに脳卒中と呼ばれ、脳梗塞の次に発症が多くみられます。脳の細胞が障害されるため、重症の場合は命にかかわることもある病気です。

今回は、脳出血の症状や原因、治療方法など、脳出血についての知識を深められる内容を詳しく説明しています。

脳出血とは

脳出血とはどのような病気ですか?

脳の中の細い血管が破れて脳の中に出血し、血の塊ができる病気です。
血の塊が脳細胞を障害して、頭痛や嘔吐、半身の麻痺、しびれなどの症状が出ます。
出血が長引くと意識障害や昏睡状態になることもあります。出血が止まっても、脳細胞の障害される部位によって半身の麻痺や言語障害、高次機能障害などの後遺症が残ることが多い病気です。

脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、一過性虚血性発作の4つの脳血管障害を合わせて一般的に脳卒中と呼ばれます。
脳卒中の中では脳梗塞(71.6%)の割合が最も大きく、次に脳出血(19.7%)が続きます。
以前は脳出血の占める割合が大きかったのですが、降圧剤が普及して高血圧をコントロールしやすくなった背景から、現在では脳出血よりも脳梗塞の割合が大きくなっています。

脳出血の症状

脳出血ではどのような症状がみられますか?

出血の部位、範囲によって症状の現れ方や程度は異なります。
出血によって脳細胞が破壊されることと、脳が圧迫されてはたらきが障害されることによって症状が生じます。

症状は日中の活動時にみられやすく、突然現れる特徴があります。主な症状は、次のとおりです。
最悪の場合は、命にかかわることもあります。

頭痛

嘔吐

顔、体の片側が突然動かなくなる

感覚が鈍くなる

しびれる

ろれつが回らなくなる

言葉が出なくなる

言葉が理解できなくなる

目が見えにくくなる

ふらついて、立ったり歩いたりできなくなる

意識障害

昏睡状態

脳出血の原因

脳出血の原因は何でしょうか?

脳出血の主な原因は、高血圧と動脈硬化です。
そのほか、服用中の薬の副作用、血管や血液の病気が原因となることもあります。

高血圧・動脈硬化

高血圧・動脈硬化で起こる脳出血にはどのような特徴がありますか?

高血圧の既往は脳出血患者の67.8%にみられる最も多い原因です。

高血圧の症状が慢性的にみられると、脳の小さな血管に圧が加わり続けるので血管が破れやすくなります。
また、血管に負担をかけて動脈硬化を促進するので、血管がもろくなることも出血を起こしやすい原因です。

塩分の取りすぎや偏食、飲酒、喫煙、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣は高血圧をもたらし、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病は動脈硬化を促進する要因となります。

薬の副作用

薬の症状に対する役割と、副作用について教えてください。

血液をサラサラにして血液の塊ができないようにする作用を持つ抗血栓薬の代表的な副作用が、脳出血です。

脳出血患者の19.1%が心疾患、22.4%が脳血管疾患を合併しているというデータがあります。
生活習慣の欧米化や高齢化によって、心筋梗塞や心房細動、脳梗塞、末梢性動脈疾患などの心疾患、脳血管疾患を抱えている人が増えており、再発予防に使われる抗血栓薬を服用していると、副作用として脳出血を起こすリスクが高まります。

血管・血液の病気

脳出血に関わる血管・血液の病気にはどのようなものがあるのでしょうか?

脳出血の原因となる血管・血液の病気として次のものが挙げられます。

アミロイドというたんぱく質が脳の血管にたまる脳アミロイド血管症

脳動脈瘤、脳動静脈奇形、もやもや病、海綿状血管奇形などの先天的な脳血管の異常

血小板や血液凝固の異常

脳出血の分類

脳出血の分類について教えてください。

脳出血は出血がよくみられる部位によって分類されます。

被殻出血、皮質下出血、視床出血、橋出血、小脳出血の5つです。
久山町研究の1988年~2001年のデータでは、視床出血36%の割合が最も多く、次いで被殻出血24%、皮質下出血19%、橋出血11%、小脳出血6%となっています。

脳出血の受診科目

脳出血が疑われる症状が見られたら何科を受診すればよいでしょうか?

脳出血を専門とするのは、脳卒中センター、脳神経外科、脳神経内科、脳血管内科、循環器科です。

脳出血は治療が遅れると命にかかわる病気で、症状は突然現れます。
顔の半分が下がっている、片方の腕に力が入らない、言葉が出にくいなどの異常が見られたら、すぐに救急車を呼びましょう。
意識障害がある場合、嘔吐している場合はその場で横向きに寝かせて救急車を待ちます。

今までに経験したことのないひどい頭痛やめまいの症状が続いている場合や、頭痛やめまいがどんどんひどくなっていく場合もなるべく早くに受診しましょう。

脳出血で行う検査

脳出血の診断の際には、どのような検査を行いますか?

脳出血の症状は脳梗塞でも見られる症状のため、脳の出血か虚血かを判断できるCT検査が有用です。
CT検査では出血の部位と大きさも確認できます。

そのほか、脳腫瘍などの異常や、合併症の脳室内出血、脳ヘルニア、水頭症などの診断も可能です。造影剤を使用すると、血管の異常をよりはっきりと観察できます。

必要に応じてMRI、MRA、脳血管撮影(DSA)なども行われます。
MRIでは脳内にできた血の塊(血腫)の時間の経過による変化がわかり、血管の状態を確認できるMRAでは動静脈奇形、動脈瘤などの異常をみつけられます。

脳出血の性差・年齢差

脳出血は性別差や年齢差などはあるのでしょうか?

2021年のデータによると、脳出血の発症年齢の平均は70.7歳(男性67.9歳、女性74.6歳)です。
40代以降での発症が多く、とくに70代、80代に多くみられます。男女比は男性58.0%、女性42.0%で女性よりも男性の割合が大きい病気です。

2020年における脳出血の年間死亡数は全体で3万1,997人であり、男女の死亡率を比べると男性29.6%、女性22.4%です。女性よりも男性の方が、死亡率が高い結果となっています。

脳出血の治療方法

脳出血にはどのような治療方法がありますか?

脳出血の治療法として、手術を行わない内科的治療と手術を行う外科的治療があります。
半身麻痺や言語障害などの後遺症に対してはリハビリテーションが行われます。

内科的治療

内科的治療ではどのような治療を行いますか?

脳出血の原因が高血圧の場合は、原則として内科的治療を行います。
薬物療法により、できるだけ、血圧を下げます。脳の腫れが強い場合は、脳の腫れを緩和する点滴治療を行います。

外科的治療

外科的治療ではどのような治療を行いますか?

外科的治療とは手術です。薬物療法で十分な改善が期待できない場合や、出血が多くて症状が悪化していく場合は手術を行います。

手術は、頭の骨を外して出血に対しての治療を行う開頭術と、頭の骨に小さな穴をあけて内視鏡を挿入し、脳の中の血液を取り除く内視鏡手術があります。
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リハビリテーション

リハビリテーションではどのようなことを行いますか?

脳出血では、半身麻痺や言語障害、高次脳機能障害などの後遺症が残る場合が多く、日常生活や社会生活の再獲得に向けてリハビリテーションを行います。

立つ・歩くなどの基本的動作を練習する理学療法、着替え・食事・入浴・トイレ動作などの日常生活における動作や社会復帰に向けて必要な機能の獲得をめざす作業療法、言葉の練習や嚥下障害に対する言語療法などがあり、症状やニーズに応じて取り組みます。

脳出血の原因となる高血圧の改善のために、生活習慣を整えることも大切な治療の一環です。
バランスのとれた食生活をとり、運動不足・過度の飲酒・喫煙・肥満などの生活習慣を改善して再発予防に努めます。生活習慣の改善を行っても高血圧がみられる場合は、薬物療法による血圧コントロールと定期的な検査を継続します。

編集部まとめ

脳の小さな血管が破れて脳の細胞が障害されることにより、頭痛や嘔吐、半身の麻痺などの症状が現れる脳の病気です。
主に高血圧が原因となります。出血範囲が大きければ死に至ることもあるので、顔や腕の麻痺、ろれつが回らないなどの症状がみられたら、すぐに救急搬送が必要です。

半身麻痺や言語障害などの後遺症が残った場合は、リハビリテーションによって日常生活、社会生活の獲得を目指します。再発予防のために生活習慣の改善に努めるとともに、薬物療法が必要な場合は継続して定期的に経過を追うことが大切です。

参考文献

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会「脳出血」

聖マリアンナ医大 東横病院脳卒中センター「脳出血」

e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」

一般社団法人 日本神経学会「脳神経内科の主な病気」

公益財団法人 循環器病研究振興財団「脳出血 最新情報と対処法」

公益財団法人 循環器病研究振興財団「脳出血 最新情報と対処法」

「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握」 報告書 2021 年 (日本脳卒中データバンク)

京都大学医学部付属病院 脳神経外科「脳内出血」

船橋市立医療センター脳神経外科「脳内出血」

公益財団法人 日本脳卒中協会「脳卒中の主な症状」

久山町研究「脳卒中・虚血性心疾患」

地方独立行政法人 りんくう総合医療センター「脳出血患者管理のガイドライン」

第7表死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)

脳卒中治療ガイドライン2009

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「脳卒中」

事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料「脳卒中に関する留意事項」