コロナとの戦いは「戦争」国防費でウイルスから国民を守れ - 毒蝮三太夫

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※この記事は2020年04月16日にBLOGOSで公開されたものです

ウルトラセブンにウイルスが出てくる話があったんだよな。少女の体内に小さい宇宙人が寄生するの。なんだっけ、そうそう、「ダリー」だ。(※1967年放送 ウルトラセブン第31話「悪魔の住む花」に登場)ダリーってのが宇宙から来た細菌という設定なんだ。

そのダリーが、花の香りを嗅いだ少女の鼻から体内に入って悪さするの。その少女を演じたのが、まだ無名の子役だった松坂慶子さん。当時15歳ぐらい。花の香りを嗅いでダウンしてた少女が、そのあと大人の美女になって「愛の水中花」(1979年)を歌った。あまりに色っぽくて今度は世の男性がダウンしてた(笑)。

セブンには俺もフルハシ隊員で出てたけど、「ダリー」の回では、眠ってる少女を見張ってたらうっかり逃げられちゃって、「隊長、逃げられました!」って、うかつな役だった(苦笑)。確か、古谷敏さんが演じたアマギ隊員が偶然その少女と同じ血液型で、少女を救うのに輸血したりダリーに狙われたりして出番が多かったんだ。

少女の体内に何か原因があるぞってことで、ウルトラセブンが小さくなって、少女の鼻の穴から体内に入ってく。そうして体の中でダリーを見つけるわけだ。で、最後はさ、セブンの手からシャボン玉が出てダリーが溶けちゃう・・・ほら、相手が細菌だからな。シャボンで消毒してやっつけたわけだ。ウルトラセブンはよく出来てるよ。脚本は上原正三さんだ。

セブンは1967年の放送だけど、確かその前年に「ミクロの決死圏」ってアメリカのSF映画が大ヒットしてさ、これは人間がミクロになって体内から手術するって話。セブンの「ダリー」はこれに影響を受けてたね。

なんだか今みたいな時代になると、誰かミクロになって新型コロナと戦ってくれたらなって夢想しちゃうよ。

各国首脳がコロナとの戦いを「戦争」と表現

現実世界では、今は全世界が新型コロナと戦っている。各国の首脳からはそのシビアさから、戦争を引き合いにした発言も飛び出しているよ。アメリカのトランプさんは「私は戦時下の大統領だ」、ドイツのメルケルさんは「第二次大戦以来の挑戦だ」、フランスのマクロンさんは「ウイルスとの戦争だ」とかね。

でもこれは、人類史にある「戦争」とは違うよな。戦争は人が起こすものであり、その結果、人によって止めることができる。お互いに敵である相手の顔が見えて、戦局によって何らかの交渉をして、終戦や休戦は人が決定できる。だけどコロナはそれが出来ない。コロナという相手は言葉も通じないから交渉もできない。やな相手だよ。

だから、初めから終わりまでずっとこっちは防衛戦なんだよな。防衛、防疫、予防、守りっぱなし。ガードし続けるしかない。こっちから向こうに攻めていけない。こっちの守りがきちんと出来てないと向こうはすぐに勢力を拡大してしまう。ただただ防いで、相手を孤立させ、自然にくたばるのを待つしかない。厄介だよね。

この厄介さ、結局は人間とコロナが一心同体だからだ。宿主と寄生、わかりやすくすると大家と下宿人だな。人間とコロナはひとつ屋根の下にいるわけだ。しかもコロナときたらこっちが宿を貸した覚えがないのに、知らずのうちに間借りしてる。家賃も払わずにふてえ野郎だよ(苦笑)。

そしてきちんと検査しないと、自分の中にコロナがいるのかどうかがわからない。いつのまにか住みついて・・・感染してて無症状なのかもしれない。無症状のまま自分がコロナをあちこちに拡大してるのかもしれない。この一心同体が厄介の原因だ。

だから、コロナの拡大を止めるには、人間が動きを止めるしかない。外出しないで家にいる。コロナが一番嫌がるのはそれ。自分じゃ動けないんだから。だがそこに、生活とか仕事とか人間社会の現実問題が立ちはだかってくる。こうして我々はコロナに試されるわけだ、「さあ、人間よどうする?」と。

言うまでもないけど、ウイルス相手に人間社会の理屈は通らないからね。働かないと収入にならないんで外に出るけど、ちょっとぐらいなら感染しませんよね・・・って、ことが通用しない。人間の都合なんて知ったこっちゃないんだ。

地球に誕生したのは人類よりウイルスが先

だってウイルスのほうが地球上では大先輩だからね。ちょっと調べてみようか。

地球の誕生   →46億年前
生物の誕生   →40億年前
ウイルスの誕生 →30億年前
人類の誕生   →700万年前

な、ウイルスは古いんだよ。ウイルスと人間なんて、老人と赤ん坊ぐらいキャリアが違うんだ。大体さ、あなたの周りにも年上とか上司とか先輩って、話の通じないのが多いだろ(笑)。古株ってのは、ちょっとやそっとじゃ若いもんの言うこと聞かないからな、アハハハハ。

仕方ないけど、人間のほうがウイルスに気を使うしかない。どうぞ近寄らないでくださいね。こちらはあなたが入って来ないよう、手洗い、うがい、外に出ない、色々と気を付けますから、近しいお付き合いは遠慮します、ってなもんだ。

国防費でコロナウイルスから国民を守る

そこで改めて、思い知らされたのは「国防費」ってナンナンダってこと。今年(2020年)の防衛予算が『約5兆3千億円』なんだよな。これが6年連続で過去最高額を更新中だと。ざっくり言えば日本はアメリカから、F35戦闘機だのオスプレイだのイージスショアだの、国防のためにあれこれ税金で買ってるわけだ。

そうして「国防費」で配備されたあれこれなんだけど、今まさに起きてるこのコロナウイルスによる「国難」に何か役立つものってどれぐらいある? コロナ感染対策に、この設備が投入されます、この備蓄が使われます、っていうニュースをあまり目にしないよね。安倍さんがマスク2枚配るって話ばかり目立っちゃって。

その中でひとつあったと言えば、世田谷にある自衛隊中央病院がコロナ感染患者を受け入れているって話かな。この病院が自衛隊の三宿駐屯地にあるんだよ。自衛隊って、野戦に強い、非常時に強い、っていうイメージがあるからこういうのは心強いよね。

そしたらさ、コロナ拡大みたいな非常時には、この自衛隊中央病院は重要だって話になったんだろうね。補正予算がついたってニュースが先日出てたよ。

< 2020年4月8日 TBS NEWS より >

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、防衛省は7日、閣議決定された今年度補正予算案に自衛隊病院の医療用器材を整備するための費用など121億円を盛り込みました。

具体的には自衛隊中央病院への感染者の受け入れ態勢を強化するため、人工呼吸器76台を新たに整備するほか、ウイルスが外に出ないように気圧を低くおさえた陰圧設備を新しくします。また、感染が広がらないよう病院内に隔離ドアを設置することも盛り込みました。

また、陽性患者の輸送などに使う救急車120台、バス118台の調達に25億円を計上したほか、患者の輸送や生活支援を担う自衛隊員が使うマスク428万枚の調達におよそ7億円、防護服は3億円分用意するとしています。

また、隔離が必要な人を受け入れることができるバス・トイレ付きの個室を400室、陸上自衛隊朝霞(あさか)駐屯地など首都圏4か所の隊舎に整備することにしています。

予算が使われて病院施設が強化されるのはこれからだけど、大切なことだよな。これが自衛隊中央病院だけでなく、全国の主要な病院で感染症対策ができるようになっていくのが必要なんだろうな。これってまさに国防だよね。

新型コロナはやすやすと国境を越え、我が国に侵入して暴れてる。国防の対象って、他国とかテロとか目に見える「人間」だけでなく、目に見えない「ウイルス」のような感染症もないがしろにできない。国防イコール軍事防衛だけでなく、感染症防疫がいかに重要か。こうして痛い目に遭ってわかったよ。

年々削られてきた感染症予防の国家予算 ツケが現実に

これまで防衛費は年々増える中で、感染症予防に関する人件費とか研究費とかの国家予算って年々削られてきたんだろ。そのツケが現実に出てるわけだ。

目の前のコロナもまだまだ渦中だけどさ、5年後10年後に新たなウイルスが必ず現れるわけだ。その対策を「国防」として、今まで以上に大きな比重で捉える。そうするしかないよ。これから我が国が買わなきゃいけないのは、戦闘機より人工呼吸器、オスプレイより消毒スプレーって話、そうだろ?

マスク不足もずっと続いてる。2月に菅官房長官は「3月には6億枚出回ります」とか言ってたけど、実際は見ての通り。あれ、ホントのこと言えなかったんだな。日本はマスクを調達できないって。

マスクって中国頼りなんだろ。日本のマスク自給率ってどれぐらいかわかる? 約20%か。つまり80%が中国からの輸入。今回みたいに中国でマスク需要がハネ上がって日本への輸入が途絶えると、どうしようもないんだな。食糧とマスクの自給率は真剣に考え直さないとな。

そうして出てきたのが、安倍さんの布マスク。国民全員に2枚ずつ配る話。「もらえれば助かる」って人もいれば、「白旗に見えた、いらない」って人もいて賛否渦巻いてるよ。

俺? くれるっていうなら受け取るよ。マスクの表に「10万円」って書いてあってさ、銀行とか郵便局に持ってくと換金できるんだったらぜひとも欲しいね。マスク2枚で20万円だ。国民がホントに欲しいのは、そういうマスクなんじゃないの?

(取材構成:松田健次)