ロンブー田村淳とみんなの党・江田憲司議員が、総裁選からメディア報道の裏、財務省の大嘘までざっくばらんに対談 - BLOGOS編集部
※この記事は2012年09月25日にBLOGOSで公開されたものです
ロンドンブーツ１号２号の田村淳さんが、フォロワーの皆様から集めた質問をもとに、政治家とざっくばらんにトークする対談企画『ザクバラ』。第１回目の河野太郎さんに続いて、第２回目はみんなの党の江田憲司さんをゲストに渋谷のカフェから生放送すると聞き、現場にお邪魔させていただきました。維新の会との連携や、事実確認も無いままに突然報じられた「みんなの党分裂」でのメディアへの反論、外交問題や中にいた江田議員だからこそ話せる財務省の話まで、１時間たっぷり本音トークが繰り広げられました。（編集部：濱田敦子）
*この記事は8月31日に放送された番組を記事化したものです。
次の選挙は、みんなの党として議席を増やせるかの正念場
淳：今日のゲストは、みんなの党の江田憲司さんです。よろしくお願い致します。さっそくですが、まさに今、国会がドタバタですよね？この忙しい時にスケジュールって取れるものですか？
江田：ドタバタですけど、問責決議案が通ったでしょ？ だから国会が休会なんですよ。国会の会期は９月８日まであるけれど、皆さんがテレビや新聞で見る通り自民党総裁選に民主党代表選と並んでいてウチはそんなの関係ないから、今日はベストアレンジメント（笑）。
淳：今日は僕が気になっていることを、ざっくばらんに聞いていきます。今、国会は問責決議案が出され、それが可決した。衆議院の方は民主党議員が過半数を越えていて、法案を通せる形になっているけど、参議院は自民党の方が多い。あ、自公民か。
江田：そうそう、野党が多いですね。
淳：それで、今ねじれて止まっている。みんなの党としては、ただ単にどっちかが折れるのを待つしかないんですか？
江田：ウチみたいに衆参合わせて16人の小所帯の野党は、残念ながら選挙を待つしかない。民主主義は数だからね。だからちゃんとした政策と旗印を作って。私は幹事長という立場ですが、幹事長って何をするかと言えば、要は党の選挙担当なワケ。
淳：選挙で勝つためにどうするかですね。
江田：まずは候補者をどう立てるかですが、みんなの党は公募しています。「業界団体や労働組合の支援を一切受けていないから、しがらみが一切ない」というと聞こえはいいですが、外から人を集めなくちゃいけない。衆議院の小選挙区が全国で300あるけど、流石にウチの規模で全部に候補者を立てる余裕は無い。でも、大体100人以上は立てようと今、順次面接しているところです。
淳：へぇ！前の選挙よりももっと大きな党になりますか？
江田：今は衆議院議員が５人しかいないですから。猫も杓子も民主党が取ったこの前の選挙で、ウチも300万票もらって、かろうじて５人が当選した。大阪維新の会が「５人集める」と言っていますが、政党は５人で成立するんです。その後にあった参議院選挙では800万票頂いて10議席をもらったので、今度は100人以上候補者を立て、更に拡大したいと。
候補者について既に内々定を入れると80人くらいは目処が立っていて、この調子でいくと秋にあると言われる選挙までには100人を越えると思います。
淳：今は民主と自民が争っていますが、民主党は頼りないし、だからと言って自民党もコレという決め手があるわけじゃない。みんなの党としては、今が勝負しどころだと思うんです！僕はみんなの党派なので……。
江田：え？ほんと？
淳：そうですよ。民主党が日本中でブームになった時も、みんなの党を推していました。メディアに出ている人間って、どこの党に入れているって言っちゃいけない空気がありますけど。
江田：それ言っちゃダメなんじゃないの？カットじゃないの？（笑）
淳：大丈夫です。生配信ですし（笑）。みんなの党代表の渡辺よしみさんに、ラジオでゲストで出てもらったとき、こんなに明快に答えてくれる政治家がいるのかってびっくりしたんです。政治家って難しい言葉を並べて分かりづらい人が多いから、「渡辺さんはわかりやすいですね」って言ったら、「みんなの党はこれくらい説明出来る議員が揃っている」と答えが返ってきた。それで、みんなの党の他の議員とも喋ってみたいと思って、今回オファーを出したんです。
江田：そうだったんだ。
淳：そしたら案の定、短い言葉でスパっと伝えてくれる。こういう政治家がいると、政治離れしていた人や政治に興味が無い人も戻ってくるような気がします。
江田：いいですね。初耳だ。もっと早く知りあっておけばよかった。何かのクイズ番組で会った時は、「ジュンさん、ジュンさん」なんて呼ぶくらい知識なくて。失礼しました（笑）。
淳：（笑）。
みんなの党が躍進できたのはネーミングのおかげ？
江田：みんなの党って名前をつけたのは、実は私なんですよ。
淳：そうですよね。「みんなのうた」からとって。
江田：そう！よく知ってるね。僕はサザンオールスターズの桑田佳祐と同じ世代なの。
淳：バッヂのデザインもいいですよね。赤と青の。
江田：あれウチの所属議員でも意味を知っている人いないんだよねぇ。この世の中には男と女しかいない。みんなの党だから、みんなを表す上に女の子の赤、下に男の子のブルー。やっぱり女性を持ち上げとかないとね。選挙は女性だから。男は仕事に昼間に行ってて、地元に根付いてないし。
淳：女性を大事にしているという意味合いがあの色合いに込められているわけですね。３対２で「みんなの党」にするか、「絆」にするか…… でしたっけ？
江田：渡辺よしみさんは絆がいいって言って。僕も名前を考えるのに各国の政党名をインターネットで調べたんだけど、大体もう出尽くしていて。そういうところから名前をつけようとすると、「改進党」とかね（笑）。そんな名前じゃ今までの政党と一緒じゃないかと思って、つらつら考えていたら、サザンオールスターズやNHKの「みんなのうた」を思い出した。助詞の「の」がついている党は無いよねと。まあ、最近変なのがいっぱい出てきていますが。それで、恐る恐る提案したら、いいじゃないですかって。みんなの党が３、絆が２の多数決で決まったんです。
淳：渡辺さんには申し訳ないですけど、絆だったら今のみんなの党の躍進は無かったと思います。
江田：（拍手）
淳：お世辞じゃなくて、みんなの党が出た時に、新しいことを本気で考えている人たちだと思ったんですよ。自民党にいれば選挙ももっと楽に勝てるだろうに、あの大きなところから出て党を立ち上げたわけですよね。日本の国を思っていないと、そうはできない。失敗もあるだろうけど、これは改革してくれる党なんじゃないかって。
江田：悪ノリして自慢話をすると、みんなの党って３年前の８月８日に結党して記者会見したの。「８月８日って、末広がりで大安でいいじゃん」って僕が決めて、記者会見した。そしたら夕方にのりピーが自首しちゃって。
淳：あ、あの事件！（笑）。そうでしたっけ？同じ日でしたっけ？
江田：自首したのが同じ日の夕方で、それを境にみんなの党結党のニュースがゼロ。厳しい船出でした。選挙前にテレビで討論をやるけど、それも「お前らはまだ、選挙の洗礼を受けてないから出さない」と言われて。こんなに虐げられて「こりゃダメだなあ」と思ったけど、ネーミングのベストセラーを出した人が、「ギリギリ５人、300万票で通ったのは名前のおかげだろう」と分析してくれた。命名者としてはありがたい話です。あの時に１人でも落選していたら、もう空中分解ですよ。
淳：空中分解してたら、自民党を出たはいいけど、１つになる場所を失っていましたね。
メディアに流れた情報は、決裂を狙った誰かの謀略
江田：ホップ・ステップ・ジャンプに例えたら、ホップがその次の参院選で順調に２倍以上の800万票取れたこと。ステップが去年４月の統一選。震災直後であまり知られていないけど、県議選や地方選があって、そこで全国で300議席以上取った。そしてジャンプが今度の衆院選で、これが本番。本番で肉離れしないようにしないと。
淳：でも、そうなると、大阪の方の動きが気になりますね。みんなの党しかなければ、僕は新しい期待感が集中していたと思うんですけど。維新の会は聞こえのいいことを言っているけれど、本当に実現出来るかどうかわからないままの船出じゃないですか。その点、みんなの党は、党として経験がある。何を打ち出すかも明確にわかっているわけでしょ？ 「維新の会は、人を集めるために良いことを言っているんじゃないか？」と疑心暗鬼になっている自分がいます。勢いがありますけど、向き合い方はどうするんですか？みんなの党は一緒にやりますか？
江田：番組が始まる前に電話していたでしょ？ あれ、実はテリー伊藤さんで。
淳：えっ？！あれって、テリーさんと電話していたんですか？
江田：そう。最近報道で「維新とみんなの党が決裂した」とか、ウチから議員が離党するんじゃないかとか。報道がフィーバーしてるから、心配の電話でした。維新の会に関して言うと、有ること無いこと、無いこと無いこと無いこと！！
淳：最後、無いことしか言ってませんよ（笑）。
江田：もう、フィーバーし過ぎ。「この人に取材したら相手方にも裏を取る」って、対極も取材するのが鉄則なのに、維新の会関係は一方を書き飛ばすだけ。
淳：ありもしないことが、あるかのように書かれちゃっている。
江田：それがブラックジャーナリズムとかレベルが低いならともかく、全国版の一流紙がやっている。昨日も某全国放送が無茶苦茶な誤報を出した。「渡辺よしみ、江田憲司、橋下徹、松井一郎の４人が会談した席で、橋下徹が国政進出を明らかにした」と。市長を辞める時みんなに説明するセリフまであって、「松井一郎知事も国政に行ったら大阪はもう１度ダブル選挙になると関係者が明かした！」なんてあったけど、まずこの４人じゃない。僕は大阪なんて行っていないから。
淳：あれ、行っていないんですか（笑）。
江田：全面否定したけど、そんな話は一切報道されないね。関係者という訳のわからない引用でぼかして、それを全国放送のニュースで報道とは。政治の世界って、謀略とか諜報戦がすごい。そういうのを流すと「４人のうち誰かが流したに違いない」と双方思うわけでしょ。そうすると……。
淳：信頼関係に傷が入る。
江田：その通り！みんなの党と維新の会を決裂させようと。もう１つの意図はわかる？ 「橋下さんや松井さんが国政進出を明らかにした」としたのは、国政進出を潰したいわけ。案の定あの報道以降、大阪市役所や府庁に抗議の電話が殺到。芽を摘んでおこうと。つまり橋下さんや松井さんが国政に出たら困る人がいて、そういう人たちが流した情報だとわかる。政治の世界は芸能界と一緒で汚いです。
淳：芸能界の方がクリーンですよ（苦笑）。Twitterに来ている江田さんへの質問で一番多いのが、「ニュース見たけど大丈夫ですか？」で、その次が「維新の会とどういう付き合い方をするんですか？」ですね。
江田：テレビも新聞も「誰と誰が組むの？」という話をやってますけど、みんなの党も維新の会もそうじゃなくて、「この国のために何をやるんですか？」が先だよねと。「協力するなら、政策が一緒で、この国をどうしたいという方向が一致しないとダメだよね」と。「連携するんですか？」じゃなくて、「連携してきた」んですよ。
公務員制度改革をやろうとして首になった古賀茂明さんは、通産省の一年後輩で30年来の友人だし、府市統合本部の顧問をやっている原英史くんは、渡辺よしみさんが大臣をやっていた時の補佐官で、通産省の後輩であり、友人です。それから特別会計に役人が隠しているへそくりを掘り出した「平成の埋蔵金男」と呼ばれる高橋洋一さんも今、大阪市の顧問に行ってもらってるわけ。つまり、これがどういうことかというと……。
淳：その時からのつながりがあるわけですね。
江田：そうそう。そうなんですよ。半年くらいかけて維新八策を出していますが、これを出すにあたって古賀茂明さんとか、原英史さんとか、高橋洋一さんとか、もっと言えば僕の大先輩の堺屋太一さんとか、こういう方々が協力して、それで橋下さんが松井さんと一緒になって作った。「よく似ていますね」と言われますが。そりゃあ、当たり前。
淳：そもそもつながっているから。
江田：そう。メディアがフィーバーして先行報道ばっかりあるけど、どういうステップを踏んでいくかというと、まず正式に国政進出することを決めるでしょ？ 次に５人以上集めて政党として、候補者を「大阪に立てるんですか？」「それとも全国に進出するんですか？」と協議して、どういうやり方で行くか見えて来て初めて、我々が80人くらい内定している中で、せっかく政策が一致しているんだから、これを基盤でどうやって連携しましょうか？という話しが出てくるんですよ。それが不幸なことに、秘密で会っていたとかなんとか、ポコポコ出てきて報道されて。情報戦で踊らされて。あまり僕も詳しいことは言えませんが、決裂しているとか仲が悪くなったとかはありません。それは断言します。そんなやわな関係ではありません。
淳：すげえ！これ生で聞けている！この選挙だけでつながっているわけではなくて、国をどういうふうな方向に持って行こうかというところで、ずいぶん前から一致していると。
江田：もっと言えば、去年の統一地方選の時は連携していました。これは誰も知らないんだけど、大阪市議会議員のうち５人は維新の会から立候補して、みんなの党が推薦したんですよ。
淳：今の民主党みたいに、「考え方を後に置いて、とりあえず民主党という大きい党を作ろうよ」みたいな関係じゃないということですね。もし、みんなの党と維新の会が一緒になって第一党になったとしても、政策を決定していく中で「そこは俺たちと考え方が違う」とか、党の中で分裂するようなことは起きないと。
江田：おっしゃるとおり！淳さん流石！そこがね、今の日本の政治の最大の問題ですよ。要は自民党だ、民主党だと言っても、党の中で基本的な政策すら一致してない。そうするとどこが政権を取っても、取った途端に内輪で足を引っ張り合うから、そこに役人がつけ込んで官僚主導になる。これが最大の問題だから、我々はそういう二の舞を絶対やっちゃいかん。我々も人間だから100％何から何まで一致させろとは言わないですが、基本的な骨格の政策は一致させなきゃ。
淳：そうですね。目指すべき方向は一緒じゃないと。
江田：その点、維新の会とはそこが一致している。お互い別主体だから、そりゃいろんなことが問題として起こりますけど、私は楽観しています。基本の骨格、背骨が一致しているから、多少時々問題が起こっても、収束していくと思っています。
誰が総裁になっても、自民の体質は変わらない
淳：もう１つ「選挙っていつ頃あるんですか？」という質問が来ています。これ、どうなんですか？
江田：解散総選挙の時期については２つ説があって、１番可能性が高いのは晩秋ではないかと。11月４日ね。
淳：日付までわかるんですか？
江田：９月８日に国会が閉まり、後半は自民・民主の党首選がある。その後10月に開かれる臨時国会では赤字国債を発行する法案とか色々やって……。野田さんがこれを通したら解散を約束すると言っているので、10月中旬くらいに解散したとすると、次の大安が11月４日。選挙って、縁起を担ぐんですよ。これがなかった場合、最近メキメキと有力になっているのが、来年の秋説。
淳：え！？ それじゃ１年後ですよ。
江田：民主党としては今選挙をやったらボロ負けだから、とにかく先に伸ばそうとするでしょう。そうすると衆議院は任期が４年で、これが切れるのが来年の８月30日。解散したら40日以内に投票すればいいから、10月になる。そうしたときに来年７月は、参議院選挙と都議選があって、これも重要なわけですよ。公明党さんなんかは組織選挙だから、選挙が１度に来るのを嫌がる。できればこの秋希望だけど、それがダメなら、せめて準備に３ヶ月くらい空けてくれってね。それからもう１つおまけは、来年の秋になれば維新の会もボロが出るんじゃないか？という期待感がある。
淳：へぇ。でもこれだけ世論が選挙やってくれよという中、１年後に選挙やったらもっと民主党は票を取れない気がしますけどねえ。
江田：そう思うけど、政治家ってバカだから、期間があればその間に何かあるんじゃないかと淡い期待をもつんだよね。それと、国会議員を１日でも長く続けたいと思う奴がいるのも事実だな。
淳：まあ、相当な思いをして当選して、議員になられているのはわかりますけど。もう１つ質問。今度の自民党の党首選では、誰が勝つと思いますか？
江田：あ、そこは、あんまり興味ないです。勝手にやっておいてください。
淳：誰が勝ってもいいですか？
江田：誰が勝ってもいいですよ。自民党がダメだから民主党に変えて、民主党がダメだからまた自民党に戻すってあり得ない。それに、あの顔ぶれが、古い。あの人たちの誰がなったって、自民党の体質は変わらないです。しがらみだらけですから。
淳：体制維持の人たちだけですからね。仮に河野さんがなったらどうですか？
江田：ならない！ありえない！河野太郎さんに言いたいことは、自民党と真逆の事ばっかり言っているんだから、早く出なさい！
淳：そうなんですよ。僕も早く出てほしいです。
江田：彼は、潔くない。テレビに出る時でも、まだ自民党じゃないフリをしている。だけど自民党を出ない。渡辺さんや僕も自民党を出たから言いますが、出てリスク取れよと。選挙の時には自民党の看板背負って……申し訳ないけど嫌い！
淳：この番組の１回目のゲストが河野さんだったんですよ（笑）。きちんと若者や国民に向けて発信出来る政治家だっていると思うんですが、みんなの党に引っ張ってこられないですか？
江田：みんなの党結党前、政界再編を１人訴えて、自民党や民主党で僕から見てまともな人に「飲みませんか？飯食いませんか？」と声かけましたけど、どんなにテレビに出てきて立派なことを言う政治家も絶対大政党から出なかった。表で立派な事を言っていても、業界団体の組織票は大きいんです。民主党を取り巻く労働組合の組織票を見せつけられた人たちは、出る勇気が無い。それが唯一、渡辺よしみさんだけ出てきたから一緒にやろうとなったんです。
淳：自民を出て躍進しているみんなの党という良い例があるのに。
江田：躍進したって言っても、小政党の野党だから。誰もが与党になって、政権をとって権力を握りたい。自民党にいれば、たとえ過半数取れなくても、第一党になる可能性高いから、まず出ない。民主党は100議席も取れずに分裂して消えて無くなるでしょうから、そこで動くかもしれませんが、そういうショック療法をやらないと政治家は動かないです。
淳：今回、みんなの党は100人目指して候補者を擁立すると言いましたが、１人１人をきちんと面接して、自分たちの意思に沿った人かを判断するのは難しいですね。
江田：100％は難しいですけど、僕が直接面接して最低限、確かめるし、スキャンダルがないかは厳しくチェックします。それと、僕らは、大阪維新の会さんが国政に出てくることに期待しているんですよ。我々は100人そこそこくらいしか立てる能力が無いけど、維新の会があと200人くらい立ててくれれば、トータルで300選挙区網羅する。その上でうまく連携すれば、第一党になってそこで主導権が握ることが考えられますからね。
私が見るところ今の自民党は、派閥のボスがどんどん力を得ています。「国土強靭」みたいな夢をもう一度見ましょうとか、公共事業をばらまきましょうとか。どんどん新幹線を作りましょうとか。10年間で200兆円使いましょうとか……。先日消費税を５％上げて、13,5兆円に増収しますと決まりましたが、自民党の野田毅さんは国会答弁で堂々と「使い道は公共事業だ」と宣言している。「消費税の税収は全部社会保障に使いましょう」と言っていたのに、自民党の重鎮は早速「そのうち５兆円は公共事業に使わせてもらいまっせ」と。
淳：ええっ。ただでさえ社会保障については棚上げで何も決まっていないのに、もうそんなことを言い出しているんですか？
江田：端的に言うと財務省は税率が上がればいいのよ。使い道なんてどうでもいい。税率上げて、使えるお金を増やしたい。これぞ「昔の栄華よ、もう一度」だね。高度成長期にはじゃぶじゃぶお金があって、財務省がボンボン配って権力を維持し、天下りした。
淳：「予算出さないぞ」で、権力を維持する。
江田：出さないと言いながら最後にポコッと出して、その代わりに天下り。そうやってずっとやって来たのに、最近はお金が無いから権力が弱くなった。だから、消費税増税は悲願ですよ。自民党の重鎮に「先生、増税に賛成して頂ければ、先生が望んでおられるアレ」とやっているんですよ。
今、自民党に戻したら、何のための増税で、社会保障と生活はどこにいくのかとなってしまう。これを阻止したい。大阪維新の会もそこは考えが同じでしょう。
淳：安倍晋三さんは山口４区って僕の地元で、奥さんとも仲良くしているんですが、ここに来て、維新の会と近づこうとしていますよね。維新の会と唯一口利きが出来るのが安倍さんだから、安倍さんを自民党のトップにすることで、自民党の選挙に有利に働くんじゃないかって。今までの江田さんの話をきいてると、そんな理由だけで、一緒になったら嫌だなあ。
江田：さっき言ったように政策が一致したらやりましょうというのはいいんですけどね。ただ、自民党で、安倍さんがトップになることはないと思いますよ。出ても、今の力関係ではなれない。要は今、安倍グループは数が少ない。こないだ落ちちゃったからね。
淳：町村さんがバックにつくんじゃないですか？
江田：つかない。
淳：（笑）。
江田：どの道、誰がトップになっても、自民党というしがらみが足を引きずるから、期待出来ない。これでも私はこの世界に30年以上いるから、それは断言します。
不安な外交……日本は今、足元を見られている
淳：じゃあ次は領土問題についての質問。香港の活動家が上陸するなどいろいろありますが、日本の外交力について江田さんはどう思いますか？
江田：一年ごとに総理が変わる日本において全部民主党のせいとは言いませんが、民主党になって不安定になったとは言えます。鳩山問題に象徴されるように、日米同盟も、とにかく足元を見られている。「何も出来ない日本の政権なら、この際、橋頭堡を築いておきましょう」と。相手方のその論理自体が大問題だけど、とはいえ増税ばっかり考えて、民主党は外交や安全保障に何の手も打ってこなかった。総理自身に外交や安全保障の知識がゼロで素人同然なんだから、そりゃこうなりまっせと。
淳：そのことを他国がわかっているから、足元を見て、「弱っているぞ。今行けばウチの国の領土に出来そうだぞ」、みたいな狙いが？
江田：領土を取るまではいかないけれど。揺さぶるには今が好機だから、実績を残しておきましょうということですね。ロシアにしても韓国にしても中国にしても、外交には表の世界と裏の世界があって、裏のルートでもしっかりつながっていなければならない。
橋本政権下の時、戦後で１番北方領土の返還に近づいた日と言われたこと覚えています？ 橋本龍太郎さんというのは欠点もあり、私も100％礼賛はしませんが、こと外交に対してはものすごい成果を残している。
「返すはずがない」と言われた普天間基地の返還合意をしたし、北方領土ではエリツィンとの関係で、2000年までに平和条約を結んで解決しましょうと約束したし、新安保宣言をクリントンと一緒に出して、日本の周辺で紛争が起こった時に米軍が出動した場合、それに対して日本はどうやって協力しますかというガイドライン法、周辺事態整備法なんかも作った。
私は側近だったから舞台裏を知っていますが、例えば人脈とか首脳会談の場での首脳同士の信頼関係だとか、要は外交や安全保障で大きなことをやろうと思うと、トップが重要なんです。その点、橋本×ロシア・エリツィンも、橋本×フランス・シラクも、橋本×ドイツ・コールもものすごい信頼関係があった。
淳：なるほど。
江田：信頼関係があるからコールさんが「今度総理になった橋本は話せるやつだ。だから、エリツィン、北方領土の問題を日本と話してやれよ。そしたら日本から経済協力の話が来るぞ」なんて、働きかけてくれる。コールはコールでロシアが混乱して難民が来ると困るから、「俺だけでは荷が重いなあ、日本もやってくれよ」みたいな魂胆も持っていたりして……。
淳：情報番組で政治解説者も、「自民党が良い悪いは置いておいて、自民党の中には裏で根回し出来る外交力を持った政治家がたくさんいたのに、民主党になってそれが無い」と話していました。「あんたそれで大丈夫？」となって、そういう不満から領土問題が起きているという解説を聞いて、民主党には裏で根回し出来る人がいないんだと思いました。
江田：政治家だけじゃなくてブレーンね。外交安全保障は特に人脈でしょう。自民党の政治家にも大したのはいないかも知れないけど、長年与党やってきた実績で、裏で動いてくれる民間人とか学者とかブレーンがいるんです。
それが、民主党が政権取ってから財界人って誰がいますか？と考えたときに、稲盛さんしか出てこない。民主党って政治家のレベルも低ければブレーンもいない。人脈が無い。それじゃあ内政も外交も出来ませんよ。
淳：自分たちが野党にいる時に、そのチカラが無いという感覚は無かったんですか？
江田：あったんでしょうけど……。政治家に限らず、人間って汗水たらして仕事やっていたら人脈はついてくるはずなんですよ。特に政治家は一生懸命、政策立案したり法律を通したりするために、色々知恵を借りていく。そうするうちに自然に人脈がついてくるものなんです。ところが、民主党というのは単に口先だけでのし上がってきた。補佐官とかに民間人とか学者とか、もっと入れていかないとダメです。
淳：専門的な知識を持った人がいない。
江田：そうしないから、脱官僚と言っていながら結局は官僚に頼らざるを得なくなっている。「シロアリ退治しなくちゃ、増税してもその金はシロアリに食われちゃう」と野田さんは言っていたけど、最近の民主党はシロアリだらけですよ。自民党よりタチが悪い。
メディアは中小野党を取り上げない
淳：今こそ国民１人１人が政治に興味を持って、意思表示をしないとダメですね。みんなの党としても、やきもきしませんか？ これだけの志、これだけ日本を引っ張ると掲げるものがあるのに、少数野党だから舵を取れないというもどかしさはありません？
江田：ありますよ。特にこういう中小野党が何やったってメディアは取り上げてくれない。取り上げるのはせいぜい民主と自民と、キャスティングボードを握っている公明党。それ以下の政党はほとんど取り上げてくれない。それが選挙前は公平に取り上げなさいと「公職選挙法」が定めているから、テレビ局や新聞も公平になる。ここが勝負です。その時に、良い人材を立てて、良い旗印、政策を立てれば、必ず国民は答えてくれると私は思っています。
そのためには選挙でいきなり打ち上げるんじゃなくて、地道に議員立法してきた実績を積み重ねておいて、皆さん見て頂く時にこういうことをやってきましたと言えることが大事。だからこそ目立たなくても、メディアが取り上げてくれなくても地道に、脱官僚、公務員制度改革、天下りの禁止、日銀法改正などの成長戦略、脱原発のための電力再編自由化とか、法律や政策を作ってきた。
淳：普段からメディアが、いろんな党の考えや政策を打ち出さない限りは、国民が例えば「この党が言っていることと、俺の感覚は近い」などと感じる機会がない。選挙前だけだとジャッジしにくいし、既存の大きな政党に入れてしまうというのもあるでしょうね。まだ選挙期間中じゃないので言っていいと思いますが、僕はみんなの党を応援しますよ。メディアにこうやって喋れる政治家がたくさん出ることが、一番良いことだと思います。僕なんかが江田さんと喋って、見た人が「あれ？江田さんってこんな人なんだ」と知ることもあったらいいなと。
江田：ありがたいです。これ、プライベートなの？スポンサーついてないの？
淳：スポンサーゼロ。大きいメディアもこういうことをやりだしたら面白いと思いますし、見ている人にも政治家にとっても良いですよね。視聴率主義のテレビ局じゃ、取り上げてもらえない。
江田：テレビは政局や人間模様だけ。評論家やコメンテーターが「国会で何にも議論していない」と言うけど、みんな地道にやってます。ただ、報道しないだけ。
今の日本を会社に例えると、会長も社長も副社長も
専務も常務もみ～んな経理部出身
江田：そうだ！ 今日はプレゼントしたいと思って『財務省のマインドコントロール』という僕の本を持ってきました。まさに今日話した、結局政治がだらしないですねという話と、財務省を筆頭とした霞ヶ関が牛耳ってますねという話が書いてあります。財務省は昔、大蔵省と呼ばれていましたが、その名前を変えた張本人、実は私なんです。
淳：え？江田さん？
江田：私が総理秘書官として、「大蔵省みたいな厳めしい名前をつけているから、誤ったエリート意識を助長している」と主張した。「大蔵改革なくして行革なし」と言われていましたからね。
淳：大蔵省を崩さない限りは何も始まらないというくらい権力がここに集中していた。
江田：そう。おっしゃる通り。権力って何ですか？
淳：金。
江田：そう、予算をばらまく権利。大蔵省、財務省というのは権力を持っていて、役所も大物政治家も全て意のままに操る。野田佳彦さんって、言っては悪いけど見てわかる通り実社会の経験が何も無い。大学出て政経塾行って、県議になって政治家になりましたって。要は組織というものを知らない。民主党政権が約束を果たせなかったのは、簡単に言うと組織を知らないからですよ。会社でも役所でも一歯車一平社員、部長でも課長でもやったことがない。
淳：重要なポジションの気持ちがまったくわからないまま、トップダウンでこれだけやる！と言っているから機能しないということですか？
江田：組織というのは人間の集合体。これをやる場合は、こことここに話を通すとか、人間だからあるでしょ？組織にいたらそういうのがわかりますが、小さい組織にもいたことがない人がいきなりトップになったって動かせるわけがない。動かせたら天才ですよ。いくら民主党が良いことを言っていても、これが本質。組織を知らない。だから、財務省に頼らざるを得ない。
淳：難しいことはわかりませんが、財務省がいろんなところに予算をつけますと言って、予算を与えることで権力を振りかざすのだとしたら最低ですね。
江田：誤解ないよう言っておくと、財務省を潰せと言っているわけではないですよ。こういったらわかりやすいかな。日本株式会社という会社があって、財務省が経理部長だとしたら、経理部を潰せと言っているわけではない。だけど、問題は今の日本株式会社は、会長も社長も副社長も専務も常務もみんな経理部出身なの。
淳：そんなに偏っているんですか。
江田：将来伸びていく会社は、企画部とか研究開発部とか営業とか、そういう部署が生き生きとしている。経理部が幅を利かしている会社は潰れる。私はそれを言っているだけです。
淳：なるほど。
江田：この問題を放っておくと、財務省が官邸や他の省庁も占領しちゃう。そうすると何が起こるかというと、財政至上主義。とにかく社会保障だの経済成長だのよりも、財政規律、財布のヒモを堅く絞る。みみっちい辛気臭いことばっかり言う。時代のニーズに応じてイノベーティブな企画を立案していこうという発想とは真逆なんです。だから私はここが力を持つのはあまり良くないと言っているわけです。私は中にいたので、これは推測じゃなくは事実です。この本には経験したことを書いているので、証言だと思ってください。
淳：逆にこういうことを言って命を狙われるとか（笑）、大丈夫なんですか？
江田：命を狙われるのはないけど、僕はテレビ出演や講演料などで得た少額のお金も、確定申告を毎年しているけど経費はゼロ。税金をちゃんと払ってます。そうしないと。
淳：やられちゃう？
江田：これは、維新の会の橋下さんや松井さんにも言っていますが、確かに政策も大事だし、覚悟も信念も必要。だけど、国政に出るなら、必ず身綺麗にしてくださいと。じゃないと一発でやられます。市役所や府庁とは全然違いますから。
私は自民党の幹部の人がどんどん篭絡されて言いなりになっていく姿を官邸で見てきたんです。だから証言です。
淳：今日の話で日本の政治にちょっとでも興味を持った人は。この本で更に興味を持って頂いて、そこでどの政党に入れるのか、どの議員に入れるのかジャッジですね。今日は、貴重なお話を聞いて、あっという間に時間が過ぎちゃいました。本日のゲスト、みんなの党の江田憲司さんでした。ありがとうございました！
江田：ありがとうございました！
淳の休日 『ザクバラ ゲスト:江田憲司氏』（2012年8月31日）
