【赤木智弘の眼光紙背】Twitterコケたら 子亀孫亀曾孫亀コケた - 赤木智弘
※この記事は2012年07月27日にBLOGOSで公開されたものです
赤木智弘の眼光紙背：第231回
いよいよオリンピックが始まる。
これを書いているのは開会式の前ではあるが、男女のサッカーは競技を開始しており、男女ともに初戦を白星で飾っている。特に男子は優勝候補のスペイン相手にリードをしていたということで、Twitterでの反応も盛り上がり、40分ほどTwitterが落ちており、全世界でアクセス出来ない状況になっていたとNHKが伝えている。(*1)
かなり早い時期からTwitterを使っている僕からすれば、Twitterが繋がらないことは日常茶飯事というイメージがある。肝心なときに使えず、クジラの画面を呆然と見つめたことも、なんどかある。それでも構わなかったのは、Twitterというのは所詮はWeb上で無料で使えるサービスに過ぎず、その程度のトラブルは許容範囲としてみなしているからだ。しかしそれでも、最近はそうしたトラブルも少なくなり、たまに繋がらないことがあると、なんとなくかつてのTwitterを思い出して、懐かしい気分になる。
しかしNHKとしてはそんな余裕はなかったのだろう。
今回はTwitterが落ちたことを論じたいわけではない。そうではなく「Twitterの調子が悪い程度のことを、NHKがわざわざ報じている」という部分が本題である。
NHKはサッカーの時間帯の後に、「NEWS WEB 24」 という番組を控えていた。この番組の目玉は、番組内容に対する視聴者の感想ツイートが画面に表示されるのみならず、視聴者のツイートに司会者やコメンテーターが触れて、コメントを返したりするという、放送側と司会者の近さが売りになっている。いわばニコニコ生放送のNHK解釈版のような雰囲気がある。
そうして番組特性の多くをTwitterに頼っているのだから、当然今回のようにTwitterが不調になれば、現場はてんやわんやになってしまう。だからこそ今回のTwitterの不調は、NHKにとってみれば、ニュースとして報じるべき大きな出来事であるかのように思えたのだろう。
幸いなことに、今回は全体的に不調ではあったものの全く繋がらなかったわけでもないようで、画面にはツイートが流れ、いつもの雰囲気は変わっていなかった。また、仮に全く繋がらない状況であったとしても、曲者ぞろいのコメンテーターがフォローをしてくれるだろうし、それで番組がダメになるということも無いだろう。
けれども、そこにはやはり、Twitterという外部メディアに番組特性の多くを頼っているというリスクがつきまとう。
僕はかつて、Twitterでの選挙活動を批判した。(*2)
当時のTwitterには今以上にバグが多く、楽しいメディアではあっても、とても信頼性を担保できるようなメディアではなかったからである。それを「流行っているから選挙にも使おう！」という居酒屋談義のような感覚で選挙という重大イベントに利用しようと考えることは、当時よりはバグが少なくなったとはいえ、今でもやはり理解できない。
今回のNHKの番組は、選挙ほどクリティカルなものではないが、それでもやはりTwitterと一緒に心中するようなシステムを作ることは、あまり好ましいことではないのではないかと考えている。
*1：ツイッター 一時的にアクセスできず（NHK）
*2：【赤木智弘の眼光紙背】Twitterでの選挙活動が解禁されなくてよかった（BLOGOS）
プロフィール
赤木智弘（あかぎ・ともひろ）
1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。
・@T_akagi - Twitter
