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いわゆる「ファスト映画」をYouTubeに無断アップロードされたことで損害を被ったとして、東宝や日活など13社が5月19日、投稿者を相手取り、損害賠償5億円をもとめる訴訟を東京地裁に起こした。原告側によると、ファスト映画をめぐる損害賠償訴訟は全国で初めて。

原告などが加盟する一般社団法人「コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)によると、損害額は20億円相当と算定しており、最低限の損害回復をもとめるものとして、その一部の支払いをもとめている。

●被告は「刑事事件」で有罪判決を受けている

ファスト映画とは、長編映画を10分程度に編集して、ナレーションをつける動画だ。

今回の民事訴訟の被告3人は2021年6月、東宝や日活が著作権を有する映画5作品のファスト映画を無断でYouTubeにアップロードして広告収益を上げたとして、著作権法違反の疑いで宮城県警に逮捕されて、同年7月に起訴された。

その後、主犯格のAは懲役2年・執行猶予4年・罰金200万円、Bは懲役1年6カ月・執行猶予4年・罰金100万円、Cは懲役1年6カ月・執行猶予4年・罰金50万円の有罪判決を受けて、同年12月に確定していた。

●「漫画村のような状況になるのではないかと危機感を持った」

この日の提訴後、CODAは都内で記者会見を開いた。CODAの後藤健郎代表理事によると、コロナ禍の巣ごもり需要の中、Z世代の若者を中心にファスト映画が広がりつつあり、「早めに対応しなければ、漫画村のような状況になるのではないかと非常に危機感を持った」という。

「原告となった13社の著作権者による、ファスト映画のやり得は許さないという毅然とした態度に基づいて、今回、刑事事件が終わったあとに民事訴訟による被害の回復、さらに同種犯罪の抑止を目的に訴訟を提起できたことはうれしく思う。

若い世代が安易な気持ちで視聴していたことは事実で、犯罪を助長していた点は否めないと考えている。広報・啓発につとめつつ、消費者一人ひとりも著作権保護の大切さを再認識していただきたいと思っている」(後藤代表理事)

また、原告代理人の中島博之弁護士によると、今回の被告のほかにも複数のファスト映画の投稿者をすでに特定しており、一定の責任追及等をおこなっているという。

「軽い気持ちでやってしまった人が非常に多かった。今回の訴訟に置いて、刑事だけでなく、民事でも億単位の損害賠償請求を受けるということを示すことが、同種の犯罪抑止につながると思う」(中島弁護士)

●1再生あたり200円の損害と算定した

今回の訴訟で対象となったのは54作品(64URL)で、計1027万4711回の再生数があった。

権利者は、1週間程度のオンラインストリーミングで、プラットフォームの手数料を引かれて、約280円の手数料を得ることができるという。ファスト映画は、2時間の映画をまるごとアップロードしているわけではないが、重要場面を切り抜いて、最後まで内容がわかるようになっていることを加味して、1再生あたり200円の損害と算定した。