左からヌー・チャンさんとジャスミン・オカミさん(Photo by Angel Villanueva; Courtesy of Jasmin Okami)

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日本やアジアの輸入車を改造したり、レースで走らせたりするサブカルチャーが世に知られるようになったのは、映画『ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT』(2006年)がきっかけだった(物語の舞台は日本が中心だが、ほぼ全編ロサンゼルスで撮影)。当時、米国ではアンダーグラウンドなレースに参加する女性はほとんどいなかった。

【動画を見る】ド派手な改造車を乗りこなす女性レーサーたち

しかし現在、ムーブメントはすっかりメインストリーム化し、今やサーキットや改造車の集まりにも女性たちの姿が見受けられる。こうした女性のレーサーやビルダーやファンの波はTikTokにも押し寄せ、影響を受けた次世代の女の子たちがハンドルを握るようになっている。実際「cargirl」というハッシュタグのTikTok閲覧回数は約45億回、「girlracer」の場合は約4800万回だ。

なかでも人気なのが、約110万人のフォロワーを誇るホノルル在住のジャスミン・オカミさんのアカウントだ。ピンクの髪が、桜色にペイントされた上品な日産・フェアレディZ NISMOとマッチしている。彼女のアカウントの中でも約4670万回も閲覧された動画は、マニキュアを塗ったオカミさんの手が金のラメを施したカスタムメイドのギアシフトを巧みに操る様子を助手席から捉えたもの。キャプションには「気の向くままに愛車を運転」とある。

オカミさんはレーサーというよりもビルダーだ。ビルダーは愛車を塗装したり、排気装置を交換したり、リムを替えたり、車をカッコよく改造することに情熱を注ぐ。「女の子たちからは『あなたに影響されて私も改造を始めました、フェアレディZを買いました、車を運転したいです』っていうメッセージをもらいます。もう最高、って感じでした」とオカミさん。「女の子たちが目指す存在になれたなんて、すごく光栄です。だから私も時間を割いて、みんなにヒントやアドバイスをしています。昔は改造車に乗った彼氏の恋人でしかなかったけれど、自分で運転する喜びを感じてからは、もう助手席では我慢できないと思うようになりました」

2021年3月、ラスベガスのインポートカー・イベント「Import Face-Off」に紫のトヨタ・サイオン FR-Sで出場し注目を集めたのは、レーサーのケイリー・クレイトンさん(20歳)。クレイトンさんも女性の輸入車ファン・コミュニティを応援している。彼女自身、アプリでこの世界を知った。パンデミックでその年のツアー日程がすべて中止になったことで、2020年夏にTikTokでアカウントを立ち上げたが、あっという間に47万人ものフォロワーが付いた。「TikTokを始めてから、クルマ業界の女性とたくさん出会うことができました」とクレイトンさん。「ログインするたびに、数えきれないほどの女性のエンジニアや塗装工やドラッグレーサーに遭遇します。こんなことは他のソーシャルメディアではありませんよ」

【写真を見る】ケイリー・クレイトンさん

ドラッグレーサーである父親のダニーとカーレース世界王者のアリ・アフシャールに影響され、彼女は初めてレース場へ足を運んだ。最初はただの遊びだったが、天性のレースの才能があることがわかると、車を改造してもっと速くすることに夢中になった。最初は父娘コンビでドラッグレースに参戦したが、何度かレースで優勝したあと独り立ちした。

TikTokに投稿する代わりに、無料でパーツを提供してくれました」

女性の輸入車ファンがとくにTikTokでつながっている理由は、TikTokの最新アルゴリズムのおかげだ。同アプリはユーザーがアクセスしたコンテンツをもとに、よりすぐりの動画を延々とフィードにあげる。すなわち輸入車の動画をいくつかフォローしたり、動画にコメントしたり、いいねを押したりすれば、そのジャンルの拡散動画がどんどん表示されるのだ。

ナディーン・スーさんは女性の輸入車ファンを対象とした団体「Drifting Pretty」の創設者。彼女いわく、TikTokで「cargirl」動画に触発された女の子たち――日本国内市場向けの車を買うことはできないが、何とかしてレースに参加する女の子たちを大勢見てきたそうだ。「カリフォルニア州フォンタナにはゴーカート用のレース場があって、そこでは車や免許がなくてもレースできます」とスーさんは説明する。「カートですが、スピートは速いです。実際これが本物のレースのベースになるんです。カートレースに持ちこたえられれば、ドリフトレース――前輪をターンの方向と真逆に向けながら、車を路面でスライドさせる究極のレースだろうと、ロードレースだろうと何だろうと、きっと耐えられるでしょうからね。車を貸してくれるレース専用の教習所もたくさんあります。誰でも入学OKで、必要なのは運転免許だけ。本当に誰でも参加できます」

女性の輸入車信奉に肯定的な意見が押し寄せる一方で、やはり偏見は避けて通れない。オカミさんも、表に出ることでこれほど多くの反響があるとは予想もしていなかった。「一晩で何千もの人が意見を寄せてきました。まったく想定外でした」と本人。「もちろんいいコメントの方が多いですが、誰でも否定的なコメントのほうが胸に刺さるでしょう」。紫のトヨタ・GRスープラの改造工程をTikTokで公開している輸入車ファンのヌー・チャンさんも同意見だ。「本当は自分の車じゃないんだろ、というようなコメントがたくさんきました」とチャンさん。「実際に自分で改造しているわけじゃないんだろう、車の改造のことなんか何も知らなくせに、とかね」

チャンさんはネット批判に反論する代わりに、初めて購入した輸入車の改造方法をオーディエンスに伝授することに専念した。お金のかかる場合もあるため、改造に手を染めるのをためらう若いドライバーも多い。「みんなに言っているんですが、私も最初は5000ドルのフォード・フォーカスから始めたんですよ。スポーツカーですらありません。でも、それがあの当時の私の全財産でした。そこから始めて、目標に向かって積み重ねていきました」。ほんの少しの予算と計画があれば、車の改造は実現可能だ、と彼女は言う。「TikTokに改造工程を投稿するのも役に立ちます」とチャンさん。「メーカーから連絡があって、スポンサーを申し出てくれたんです――TikTok動画を投稿する代わりに、無料でパーツを提供してくれました。おかげですごく節約できています」

「人生をかけてクレイジーなことをしている」

とくに輸入車シーンの女性はポジティブなロールモデルだ、とスーさんも指摘する。「みんなかわいくて、たくましくて、大胆で、人生をかけてクレイジーなことをしている女性ですからね」とスーさん。「始まりはすべてレースです。最初に入ったころは大人しくてどぎまぎしていたのが、自信に満ち溢れ、華麗に変身する。そういう姿を見るのは感動的です。レースが女の子の自信や人生設計に何をもたらしてくれるのかがよくわかります」

まだ免許取得年齢に達してないため、パンデミック中は家にこもるしかない女の子たちも、オカミさんのTikTok動画で疑似体験することができる。人気動画のひとつには、彼女が愛車のフェアレディZ NISMOを運転しているときの穏やかな海岸の映像が流れている。キャプションには「スマホを左に向けて、車窓の眺めを楽しんでね」

from Rolling Stone US

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