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「単身者向けの賃貸マンションで、1年以上も同棲しているカップルに困っています」。弁護士ドットコムに、単身者向けの賃貸住宅オーナーから相談が寄せられています。

相談者は管理会社経由で何度か注意を促してきました。ところが、部屋の賃借人(借主)は管理会社に対して「相手はしょっちゅう遊びに来ているだけで、一緒に住んでいない」と虚偽の説明をしているそうです。

相談者は、防犯カメラに常に2人の姿がうつっていること、洗濯物が2人分干されていること、借主の恋人が毎日ベランダでタバコを吸っていることなどから、一緒に住んでいるのは間違いないと考えています。

このような場合、同棲相手だけではなく、借主である住人を追い出すことはできるのでしょうか。加藤寛崇弁護士の解説をお届けします。

●賃貸借契約の内容次第では、契約解除が可能となり得る場合も

ーーそもそも、単身者向けの賃貸住宅にカップルが同棲することは契約違反にあたらないのでしょうか。

賃貸借契約において、「借主は、貸主の承諾がない限り第三者を同居させてはならない」などの第三者の居住を禁止する合意(契約書の条項)があるなら、契約者以外が居住するのは、契約で定めた利用方法に違反することになります。

逆に、このような合意(条項)がないなら、契約違反になりません。

借主は、賃借物件を転貸したり賃借権を譲渡したりすることはできませんが(民法613条)、同居させているだけなら、転貸にも賃借権の譲渡にもあたらないからです。

ーー第三者の居住を禁止する合意(契約書の条項)があり、これに違反した場合はどうなるのでしょうか。

このような場合は、原則として、賃主は賃貸借契約を解除して、明け渡しを請求できます。借主は、契約で定められた利用方法にしたがって賃借物件を使用しなければならないからです。また、そのときは賃主は同居人に対しても併せて明け渡し請求が可能です。

ただし、前提として、借主に対して第三者の同居をやめるよう催告し、一定期間(1、2週間程度が目安)経過しても同居をやめないときに初めて解除が可能となり得ます。

●場合によっては、解除が認められないことも…

ーー解除が認められない場合もあるのでしょうか。

借主に利用方法の違反があっても「信頼関係が破壊される程度ではない」と判断されれば、解除は認められません。

ここでいう「信頼関係」とは、貸主が主観的に借主を信頼できるかどうかということではなく、客観的に賃貸借契約の継続が困難となる事情があるか、という程度の意味です。

具体的事情との兼ね合いではありますが、貸主が何度か注意しても借主が第三者の同居をやめなかった事案で「用法違反」による解除が認められた例もありますので、何度か注意しても同棲が続くのであれば、賃貸借契約の解除をしてもいいでしょう。

ただし、訴訟で明け渡し請求までするのであれば、貸主の側で、第三者が同居していることを証明する必要があります。

(弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/