斜面の一部が霜におおわれた火星のクレーター(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)


こちらは火星の南半球にある直径1kmほどのクレーターです。画像はNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」による2014年6月の観測データをもとに作成されました。


MROが観測した頃の火星の南半球は晩冬にあたり、クレーターの南向きの斜面は一面が白い霜におおわれています。霜が降りている範囲はクレーターの中心から外側に向かって扇形に広がっていて、人の目で見た場合よりも色合いが強調されていることもあり、鮮やかな赤と白のコントラストがどこか赤富士を描いた絵画を連想させます。


全球規模の砂嵐が生じることもある火星の地表は、ダイナミックに変化し続けています。2020年で打ち上げから15周年を迎えたMROは火星の各地を繰り返し観測し続けていて、高さ数百メートルの塵旋風や最近の隕石落下で生じた真新しいクレーター、北極域の雪崩のような崖崩れなどを周回軌道上から捉えています。晩冬のクレーター内部を覆っていた霜も、半年後の2014年12月、晩春の時期にMROが再観測を行うまでの間にすっかり消え去ってしまったとのことです。


冒頭の画像はMROに搭載されている高解像度撮像装置「HiRISE」によって2014年6月28日に観測され、2015年1月22日に「Crater Slopes: The Power of a Repeat Image」のタイトルで公開されています。


 


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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
Source: NASA/JPL
文/松村武宏