企業が求める就活生の能力の一つは、長年コミュニケーション能力と言われてきた。はてな匿名ダイアリーに9月中旬「新社会人だけどコミュ力コミュ力言われる理由が分かった気がする」というエントリがあり、大きな注目を集めた。投稿者は大企業に勤めており「組織の規模がデカくなると社会にアウトプットせずに内部のコミュニケーションの仕事ばかり増える」と書き始める。

投稿者が子どもの頃に想像していた仕事は「パンを焼いて売る」「自動車整備をする」などの実際的な作業だったという。しかし現在は、先輩の指示を他部署に伝え、会議をして結果を部長に伝える、資料を作るなど、すべてが"コミュニケーションのための作業"ばかり。それはが悪いとは思わないが、

「でもこの大艦巨砲主義の産業観が、いつしかゲリラ的なやり方によって沈められる気がしてならない」

と不安を綴っている。(文:okei)

「今の社会ではコミュ力は仕事の8〜9割を占める大事な能力だけど……」

投稿者は、この状況で技術革新が起きた場合の大組織の不利な面を解説していた。要約すると、技術革新で作業コストやコミュニケーションコストが減った場合でも、大企業は"少数ゲリラ的な企業"ができる人件費のコストカットや技術革新に手を出せない。その結果「戦艦大和のように大きな企業も沈んでいくんじゃないか」と推測している。最後に

「今の社会ではコミュ力は仕事の8割〜9割を占める大事な能力だけど、コミュニケーションばかりの仕事に不安を感じる今日この頃」

と再び不安を漏らしていた。個人で何かを生産したり、成果を感じたりする機会がほとんどない、大きな組織ゆえの不安を感じているようだ。

この投稿にはブックマークが600件以上つき、さまざまな意見が寄せられた。

「パン屋が一人で十倍のパンを作れるようになったとしても、十倍売るには十倍の客とコミュニケーションしないといけない訳で」
「人付き合いが苦手な職人が出世しないのはそういうことだ」

などの意見があった一方で「マネージャーばかりになってプレーヤーがいなくなり、リーグを戦えなくなった日本の巨大企業は、とっくに沈み始めてる」という声も。是非はともかく日本では、コミュ力より"社内政治"に長けることが必要、というコメントも目立った。

コミュ力とは?相手の質問意図を汲み取り、配慮しつつ回答できるか

"就活生に求められる能力"として重視されてきたコミュニケーション能力だが、最近では「問題解決能力」「主体的行動力」「ストレスコントロール力」なども必要とされるようになっている。しかし、すべての前提として、やはりコミュニケーション能力が必要なことは変わらないだろう。

『子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法』(竹内健登/日経BP)によれば、企業が就活生に求めるのは「IQ(論理的思考力など)」「EQ(心の知能指数)」だという。EQは、いわば他者と協働するための人間力で、面接では

「相手の質問の意図を汲み取り、配慮しながら、相手が答えてほしいことを話せるかどうか」

を見るという。社会人としては当たり前のような能力だが、中にはハードルが高すぎると感じる人もいるだろう。

投稿者はこの能力がある前提で仕事をしており、時代に適応した働き方をしていると言える。そのせいか、ブックマークのコメントには、投稿者に対する励ましは見当たらなかった。良くも悪くも現代の働き方はコミュニケーション能力が必須で、大抵の問題はそこに帰結するという傾向だった。多くの人にとってコミュニケーション能力は悩みの種であり、思うところのある問題なのだろう。