鉄道車両のなかには、当初の役割を終えたのち大改造され、見違えるほど“変身”したものがあります。そのひとつが、熊本電鉄の01形。元は東京メトロ銀座線の電車ですが、パンタグラフが設置されるなど、大きく変わっています。

元銀座線の車両を改造した熊本電鉄01形

 全国各地を走る私鉄の車両のうち、改造で大きく姿を変えたものを紹介します。

 熊本県内で2路線を運営する熊本電鉄は、開業から現在にいたるまで、保有車両のほとんどが他社から譲り受けたものです。5年ほど前までは、東急5000系電車、東京都交通局6000系電車、そして南海22000系電車が、それぞれ5000形電車、6000形電車、200形電車として活躍していました。


熊本電気鉄道に譲渡された元東京メトロ銀座線の01形電車(伊原 薫撮影)。

 このうち、5000形の置き換え用として2015(平成27)年に導入されたのが、東京メトロで廃車となった01系電車です。

 01系は車体がアルミ合金製で軽く、長さも16mと短いことから、5000形の後継車としてはピッタリでした。また、熊本電鉄の電化方式は01系が走っていた東京メトロ銀座線と同じ直流600Vのため、一般的な直流1500Vの車両を譲り受けた場合に必要な走行機器の載せ替えが必要ないことも、大きなメリットでした。

パンタグラフを載せ サイドミラーを設置 銀座線時代から大きく変化した01系

 一方で、熊本電鉄と東京メトロ銀座線は線路幅(軌間)が違っており、またちょうどよい中古品が見つからなかったことから、台車は新しいものが製造されました。走行などに必要な電気も、銀座線はレールの横にもう1本敷かれた電源専用のレールから供給されるのに対し、熊本電鉄は上空の架線から供給されるため、屋根上にパンタグラフが新設されています。

 さらに、ワンマン運転に必要なサイドミラーが前面に取り付けられた結果、銀座線で活躍していたころから大きくイメージが変わりました。


熊本電鉄01形電車の前頭部。パンタグラフやバックミラーが設置され、印象が変わった(伊原 薫撮影)。

 ただ、車両番号はそのままで、東京メトロのマークがあった場所には熊本電鉄のマークを似たカラーリングで掲出。客室内も元の雰囲気が残されています。

 2編成が導入された01系は、熊本電鉄では01形を名乗っています。現在その2編成両方が、熊本県のマスコットキャラクターが描かれた「くまモンラッピング電車」となっており、子どもたちはもちろん、海外からの観光客にも人気です。