手を振る市川染五郎と杉咲花

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 歌舞伎俳優の八代目市川染五郎が23日、新宿ピカデリーで行われたアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の完成披露報告会に出席。染五郎にとって声優初挑戦となった本作への抜てきの決め手をイシグロキョウヘイ監督が明かした。この日は染五郎とともにメインキャラクターに声を吹き込んだ女優の杉咲花も出席した。

 アニメ「クジラの子らは砂上に歌う」などのイシグロ監督が手掛けた本作は、人とのコミュニケーションが苦手な俳句少年のチェリーと、容姿にコンプレックスを持つマスク少女のスマイルが、言葉と音楽で距離を縮めていくさまを描く劇場オリジナルアニメーション。チェリー役を務めた染五郎は、本作が初めての映画にして初の声優挑戦となる。

 緊張した面持ちで登壇した染五郎は、完成した作品について「あらためて完成したものを観て、本当に感動しました。すごく心が温まる、いい作品」と感想をコメント。続けて「自分は声優の仕事も初めてですし、映画も初めてなので、この作品のアフレコまでは不安だったんですけど、今はお客さまからどんな反応があるのか楽しみです」と期待を込めた。

 一方、スマイル役を担当した杉咲は「すごく元気をもらえる映画だな、と感じています。音楽も楽しかったり、映像もポップだったり。全体的にポジティブな映画で、パワーをもらえる作品じゃないかなと思いました」と晴れやかな顔を見せた。

 イシグロ監督は、劇中に「可愛いと思う。チェリーくんの声!」とスマイルが語りかけるシーンがあることから、それにふさわしい声を出せる声優を探していたという。そんなとき三谷幸喜の新作歌舞伎を観劇し、染五郎の声を聞いて「この声だ!」と感じたそう。そして監督からの熱い思いが詰まった手紙を受け取った染五郎は「不安が大きかったのですが、監督のお手紙のメッセージが熱くて。三谷さんの歌舞伎も自分の中で大切な舞台で、いろんなことを学んで成長できた舞台でした。それがつながって違った挑戦ができるということはうれしいなと思います」と誇らしげに語った。

 スマイル役には、当初から杉咲のことが念頭にあったというイシグロ監督。杉咲が出演した映画『湯を沸かすほどの熱い愛』に深い感銘を受けたそうで、「本当にいい芝居で、特に声のお芝居が相当うまかった。滑舌がクリアで、逸材だなと思いました」と絶賛。染五郎もアフレコ時を振り返って「杉咲さんは声優の経験もあるし、スマイルそのものになっていたので、本当にすごいなと思いました」と口にした。

 そんな二人の声優ぶりについて、イシグロ監督は「声の仕事をけっこうな本数をやってきた僕から見ても、二人とも勘の良さ、レスポンスが本当にすごいなと思いました。本人たちは分からないかもしれませんが、それがナチュラルにできるのは、普段やっているお芝居の素養が発揮されたからだと思います」と称賛の言葉を送った。

 また、3月27日は染五郎の15歳の誕生日ということで、サプライズでお祝いをすることに。劇中でチェリーが使うヘッドフォンと、大ファンであるマイケル・ジャクソンのフィギュアをプレゼントされ、染五郎は大きな笑顔で喜びを表現していた。(取材・文:壬生智裕)

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は5月15日より全国公開