山間部の道路で見かける「動物注意」の標識。

シカやサル、タヌキなどが描かれるのが一般的だが、長野県軽井沢町には一風変わった動物が描かれた標識がある。

こちらは、ツイッターユーザーのひらち(@hiratira)さんの投稿。軽井沢星野エリアで目撃したこの標識には、飛んでいるムササビのイラストに、

「ムササビ横断注意(夜間)」

との文言が添えられている。

イラストがどこかユルいタッチということもあって、ネット上では「可愛い」「平和っ」「絵のタッチがたまらないです」などの声が上がり、注目を集めている。

話題の標識を設置したのは軽井沢を拠点に野性動植物の調査や自然観察ツアーの主催などを行っている地元企業「ピッキオ」。Jタウンネットは2019年7月10日、標識設置の経緯をピッキオに聞いた。

森にはいろんな動物がいることを知ってほしい



画像提供:ピッキオ

「ムササビは夜行性で、見たことがない人がたくさんいる動物なんですよ。そういう動物が森で生きているんだということを知ってもらいたいんです」

そう語るのはピッキオでエコツアーガイドを務める柳原千穂さん。

標識を設置する以前、夜行性のムササビが木から木へ滑空している際に、通行していたバスなどと接触する事故が何件かあったのだという。周囲の森にムササビが生息していること、また、ともすれば人間によって事故を巻き起こしてしまうことがあるということを注意喚起するため、11年5月に標識を設置した。

設置箇所はムササビがよく飛行するルートの道路沿い2箇所。標識の絵柄や文面はピッキオのスタッフが考案した。「ちょっとユーモアを入れよう」という意図で「(夜間)」と付け加え、文言にも趣向を凝らしたという。


可愛らしい表情を見せるムササビ(画像提供:ピッキオ)


空飛ぶムササビ(画像提供:ピッキオ)

ネット上で「可愛い」などとの声が上がり、注目を集めたムササビの標識。このような反応があることについて柳原さんは、

「これをきっかけにムササビのように森と生きる動物がいるんだということを知ってもらえれば」

と話し、ムササビなどの生物を育む森にも興味を持ってもらいたいとした。

ちなみにピッキオでは今年は3月から11月末までの期間、森で暮らす野性のムササビを観察する「空飛ぶムササビウォッチング」というガイドツアーを行っている。

通常遭遇するのはなかなか難しいムササビだが、長年の実施によりムササビの性質や飛行ルートを把握しているため、目撃率は97.8%にも及ぶそうだ。