有村架純主演映画の「キャッチコピー」と作り手の「ご都合主義」に違和感
9月21日に封切られた映画『コーヒーが冷めないうちに』。
主演は女優の有村架純、波留や薬師丸ひろ子、吉田羊、松重豊、石田ゆり子といった大物が脇を固めているが、
「映画の出来を論じる前に、宣伝が鼻白むものです。キャッチコピーが『4回泣けます』ですからね。どうも泣けることはいいことだ的な、物語に対する誤解があります。泣かせることはあくまでも副次的なもので、前面に打ち出すのは野暮。もっとじ〜んと感じさせるのが、いい物語なんです」
と映画ライターは手厳しい。肝心の内容については「論じたくない」という始末だ。
実際、泣けない
映画の作り方はしっかりしているが、もともとのテキストがあまりにも都合がいいのである。
ある喫茶店が舞台。そこでコーヒーを飲むと過去に戻れる、という都市伝説があるという。だが、店はにぎわっていない。いつも空席が目立つ。
過去に戻る条件がいくつかあり、そのひとつが、コーヒーが冷めてしまうまでの間だけ、というもの。冷めてしまうと過去には戻れないという。
じゃあどこにいるのか? 死んでいるのか? 死んでいないのか? そういうことは一切説明されない。かといって、メルヘンでもない。それぞれの登場人物たちが、実に現実的な悩みを持ち、それの捉え直しのために過去にさかのぼるからだ。
時間旅行の物語は、昔から多くの映画やドラマが作られてきた。いってみれば、手垢のまみれた設定だ。そこに果敢に挑むのであれば、
「意表を突く発想、ジャンプがなけりゃ、作り手側のご都合主義でしかない。現実的にも仕上げ切れていないし、ファンタジーに仕上げ切れていない。中途半端」
映画担当記者はそう突き放す。
多くの人の労力と多くの資金が費やされる映画製作。作品の良し悪しと興行成績は別物だが、週明けに明らかになる週末の興行収入ランキングがまず、この作品の注目度とその後の広がりを示す。
さて、どうなることやら。
<取材・文/薮入うらら>