現役ママ社員に単刀直入な質問ができる座談会タイム(筆者撮影)

子育ては半端なく大変だ。

5歳と2歳になる子を持つ筆者は、子どもの活動時間に合わせて毎日、朝4時に起きて夜9時には眠りにつく。何かと準備や支度に追われ、気づくと1日が終わっている。そんな感じだ。

思えば、乳児期の子育てはさらに忙しかった。

筆者は赤ちゃんにどれくらい時間が持っていかれるのか計測したことがある。生後6カ月くらいまでは1日平均8時間だった。時間は主に、授乳やオムツ替え、洗濯、あやし、赤ちゃん関連グッズの洗浄、最低限の部屋掃除などに費やされる。

この作業量はフルタイムの仕事と変わらず、時間的にも体力的にもキツイ。当然のことながら無給で基本的に休日もない。このように育休中ママは、出産前後で強制的に生活の大きな変化にさらされる。

にもかかわらず、日本の育休中ママは世界一真面目じゃないだろうか。筆者はよくそう感じる。

育休中ママの熱量がすごい

最近、育休中にスキルアップや資格取得を目指すママを対象にした講座や教室の情報をよく見かけるのではないか。その中には「授乳しながら受けられる育休MBA」なんてものまである。

育休中ママたちは、赤ちゃんをおんぶしながらパソコンに向かい、資格取得の勉強やオンライン英会話レッスンに励んでいる。その姿は「現代版の二宮金次郎」というイメージをわき立たせる。

子育てに追われながらも、滅多に得られない貴重な自分時間として育休を捉え、学びに向かう熱量はすごい。育休中ママはなぜ、新たな学びを渇望するのだろうか。

実際に何人か育休中ママに話を聞いてみると、「以前のように自由に働ける自分にはもう戻れない」という焦りと、「新たなライフステージでの新しいキャリアを再設計しよう」という積極性が垣間見える。

しかし、キャリア志向の育休中ママの中には、「育休中だから堂々と転職活動をするのは気がひける。だけど、他にもっと面白い仕事はないのかな」と思う人もいるだろう。筆者自身もかつてはその1人だった。

リンクトインに「留学」

世の中を見渡せば、子育ても仕事も上手に両立しているママがたくさんいる。

出産を機に会社員を辞めてフリーランスで緩やかなキャリアを継続した人、小さな子どもがいてもバリキャリで管理職に登り詰めた人、子育てを通じて得た知識や経験を基に自分でビジネスを起こす人。

でも、具体的にどうやってやりくりしているのかを聞こうと思っても、実際には「そのロールモデルが身近な人間関係の中にはいない」というケースが多い。

このギャップを埋めてくれるものがないかと探していたところ、育キャリカレッジが提供する「お仕事留学」というサービスを見つけた。筆者はすぐさま参加を申し込んだ。

お仕事留学では、育休中や子育て中のママたちがグループで企業を訪問し、異業種他社の職場と仕事を体験する。訪問した企業の現役ママ社員に直に話を聞けるのが魅力だ。

筆者の「留学先」はLinkedIn Japan(リンクトイン・ジャパン)。東京駅近くにある新丸ビルのオフィスにお邪魔した。

世界最大規模のビジネス特化型SNSサービスを運営する同社のサービスは、「自分のキャリアを自分で作る現代」において、まさに革新的なキャリア形成のツールとしての可能性を秘めていると感じ、個人的にも注目していた。

お仕事留学は言わば、通常の転職活動ではわからない情報まで得られる転職活動である。

異業種他社のオフィスの中に入って、仕事内容や、さまざまな社内制度などをざっくばらんに聞ける。こうした機会は、たまたま親しい友人がいるケースか、転職活動を通じてしか得られない。

しかしながら、育休中ママにとって転職活動は、現職の企業に対して後ろめたさを感じてしまうという。その反面、お仕事留学であればマイルドな形で企業を見学できる。

現役ママ社員のリアルな声を聞ける

目玉は何といっても、現役ママ社員に何でも質問ができる座談会タイム。筆者が参加した日も、参加者が2つのグループに分かれ、子育てとの両立方法や、働きやすさのポイントなど、活発な質問が飛び交った。

たとえば、「子どもの急な病気のときはどうするんですか?」という質問。

ケース・バイ・ケースである、という前提はもちろんあるが、実際にどのように乗り切っているのかは、通常の転職活動で面談相手から聞き出すことは難しい。こんな質問にも現役ママ社員は答えてくれる。

さらに、会社の制度としてどんなものがあるか確認できることに加え、具体的なエピソードを聞くことで上司やチームメンバーとの人間関係を推測できる。

出産してから数社目で現在の企業に辿り着いたというママ社員からは、「ベンチャー企業は、裁量は大きいが、ママに対するサポート体制は弱いところもある」「大手のほうがサポートはしっかりしているが、働き方の柔軟性という点ではまだまだだった」など、過去の経験企業の話も聞けた。

こういうリアルな話が聞けるのが、従来の転職活動とは違うポイントだ。

育休が明けた後、元の職場にそのまま戻れば、「時間的な制約により以前のようには働けなくなった自分」の前に、「同じ職場」が待っている。だが、自分を取り巻く環境が育休前と同じとは限らない。

お仕事留学の参加者の多くは、国内でもトップクラスの企業に勤めるキャリア志向のママだった。参加者からは「同じ仕事であるがゆえに、投入可能な自分の時間が子育てによって減れば、できる仕事の量も減る」という声が聞かれた。

「隣の芝生」を覗くサービスに変化の兆しを感じる

参加者の顔はさまざまだった。

生後数カ月の赤ちゃんを抱っこして丸の内を歩いていても様になるスタイリッシュな人、2人目の出産を控えた妊娠中の人、すでに育休から復帰して有給をとって参加している人。

彼女たちは、元々の職場である程度のキャリアを積んできたはずだ。自らのキャリアが後退する現状に甘んじることはないだろう。

出産をきっかけに前向きな思いが生まれ、「これからのキャリアを見つめ直してみたい」「新たな場所での活躍機会を模索したい」と考えている参加者も多くいた。

「ママという新しい自分になったわけなので、新たなやり甲斐を求め新しい職場での真っ白なスタートラインに立ちたい!」という願望は、とても理にかなっていると感じる。

1つの会社に長く勤める文化は崩れ去り、ライフステージに応じて自分のキャリアを自分で切り開いていく時代が到来している。現職の企業に恩義を感じながら、育休中に「隣の芝生」を覗くサービスに、筆者はとても日本らしい転職マーケットの変化の兆しを感じ、丸の内を後にした。