「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「暇(ひま)」、「休暇」「余暇」の「暇(カ)」。大型連休は特別な予定もなく、暇を持て余していた……そんなあなたとともに、ひもといてみたい漢字です。



「暇」という字は「日」へんの隣に「叚(カ)」という字を書きます。

「叚(カ)」は、「霞」という字の下半分と同じ。

独自の視点で漢字のなりたちをひもといた白川静博士は、この「叚」という文字が岩石を切り取ろうとする様子を表し、磨きをかける前の原石のようなものを示していると読み解きます。

それは「未知数で、大きなもの」。

そこから、制約のない茫洋とした時間、「暇」を意味する漢字になったといいます。

学校を意味する英語の「スクール(School)」。

その語源はギリシャ語で「暇」を意味する「スコレー(schole)」だと言われています。

古代ギリシャの一般市民は、人を雇って基本的な労働を任せていました。

そして、そのおかげでできた暇な時間を、自由な思索や討論にあてるのです。

彼らにとって「暇」こそが、自分が自分であるために必要な考え方を確立する最も大切な時間。

古代ギリシャの人々は、ものごとの本質をとらえ、問題解決に生かそうとする学問としての哲学を、「暇」な時間から生みだしたのです。

ではここで、もう一度「暇」という字を感じてみてください。

かつて、「暇であること」は子どもたちの特権でした。

それなのに、現代社会を生きる子どもたちは毎日忙しそう。

放課後も習い事やら受験塾やら、予定がいっぱいです。

現役当時「世界で最も貧しい国の大統領」と呼ばれた、元・ウルグアイ大統領、ホセ・ムヒカ。

彼は、子どもをせかさないでほしい、と大人たちに訴えかけます。

「子どもは遊んで、遊んで、遊んで、幸せにならないといけない」し、「ゆっくりと育つべき」である。

そして、自らの哲学をもつ大人になるための極意を、こう、語っています。

「子どものときをたっぷり生きてこそ、知恵と人格のある大人になれるんだ」

今、子どもたちに与えるべきもの。

それは、心の中の原石に磨きをかけるための「暇」な時間かもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『世界でいちばん貧しい大統領からきみへ』(くさばよしみ/編 汐文社)

5月12日(土)の放送では「宅」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年5月13日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/