遅きに失した感は否めない。だが、動かないよりは明らかにいい。

　４月９日、日本サッカー協会はヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督を解任した。同日の記者会見に臨んだ田嶋幸三会長は、「Ｗ杯での成績を数パーセントでも上げていきたいということ」と話した。

　解任へ踏み切っていいタイミングは、これまでにもあった。昨秋以降はいつ解任してもおかしくないぐらいだった。昨年10月には、Ｗ杯に出場できないニュージーランドとハイチを相手に、国内で不甲斐ない戦いを演じた。

　翌11月にはブラジルに１対３で完敗し、ベルギーにも０対１で敗れた。そもそも力の差がある相手とはいえ、その差を埋める手立てが提示されなかった。

　年末のＥ−１選手権も酷かった。北朝鮮と中国に１点差で勝利したものの、韓国に１対４と惨敗した。ハリルホジッチ監督は「すべての面で相手がまさっていた」と切り出し、｢今大会には10人から11人呼べなかった選手がいたが、フルメンバーの代表でも今日は難しい試合だったと思う｣と完敗を認めた。

　日本が欧州組を呼べなかったように、韓国も国内組だけでチームを編成している。互いにフルメンバーではないなかで「ベストでも勝てたかどうか分からない」と言われては、監督としての責任を放棄したと思われてもしかたがなかった。

　解任への火種がくすぶり続けるなかで、最終的な判断となったのが３月の欧州遠征だ。マリと１対１で引き分け、ウクライナに１対２で競り負けた結果はもちろん、試合内容に見るべきものがなかった。

　Ｗ杯のグループリーグで勝利するための裏付けを、開幕２か月にして何ひとつ持てていないのである。このままでは絶望とともにロシアへ向かうことになり、初出場した98年大会以来の３戦全敗が避けがたい状況だった。

　その意味で、解任は妥当だろう。

　ロシアＷ杯で戦うチームは、技術委員長だった西野朗氏に託された。時間の無さを補うためには内部昇格がベストで、チームに帯同してきた西野新監督なら修正点もすぐに整理できるだろう。

　ベストな選択かと言えば、疑問は残る。監督の仕事を評価する立場にある技術委員長も、解任の責任を負うべきだからだ。

　ともあれ、Ｗ杯は２か月後に迫っている。責任の所在はいずれ明確にするべきだが、いまはとにかく新監督のもとでチームが一枚岩になることがベストだ。

　新監督に一任されたスタッフは、今週木曜日にも発表される。実はこちらが重要である。その顔触れを待ってから、いま一度今回の監督交代について掘り下げたい。