VAIO type Pの夢が再び!GPD Pocketで盛り上がる超小型ポケットPCの歴史と可能性

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エム・シー・エム・ジャパン株式会社は、クラウドファンディング「Makuake」において、超小型モバイルPC「GPD Pocket」の先行販売を開始した。

「GPD Pocket」は、画面サイズ7インチのポケットに収まる超小型のノートPC(ポケット型PC)である。

現在のモバイルガジェットには、6インチ近い大画面スマートフォンや7〜10インチのタブレット、10〜13インチのノートPCやタブレットPCがある。

しかし、かつてはタブレットのように手軽に持ち歩ける7インチサイズの超小型ノートPCがあった。
それらは当時、モバイルユーザーからの支持を得て、人気を集めていた。

■軽作業のビジネス用途なら問題ないレベル
「GPD Pocket」が目指したのは、
「超小型でポケットに収まるサイズでありながら、スペック的にノートPCに引けを取らない高性能パソコン」だ。

ノートPCに劣らないという「GPD Pocket」のスペックを見てみよう。
・CPU:Intel Atom x7-Z8750 1.6GHz(最大2.56GHz)
・メモリー:8GB
・ストレージ:128GB eMMC
と、10万円クラスのミドルハイクラスの性能を備えている。

さすがに、15〜20万円クラスのIntel Core i7を搭載したハイエンドノートPCと比べると、性能差は明らかだが、10万円以下クラスのAtom x7やx5搭載のミドルハイノートPCやタブレットPCクラスと比べると、十分に競い合えるスペックだ。

ミドルハイクラスのノートPCやタブレットPCは、外出先でのネット閲覧から書類の作成など、ビジネス利用も十分に対応でき、それが上着のポケットにいれて持ち歩けるのだから、これまでににない高性能な超小型ノートPCと言える。




ディスプレイは、7インチのマルチタッチ対応(5点)液晶で、アスペクト比は16:10、解像度は1920×1200(WUXGA)ドット。画面サイズを考えると、かなり高精細な液晶だ。
タブレットモードや画面タッチでの操作ができるため、ノートPCスタイルながら外出先や移動中のモバイル利用でも使い勝手がよいだろう。

小型PCということで気になるのはインターフェイスと拡張性だ。
USBは、USB Type-Cに加え、USB 3.0(Type-A)と2基を備える。
小型ながら、2つのUSB端子を搭載するので、既存のUSB機器も高速で活用できる。

そのほかにも、ヘッドセット用端子も備えており、外出先でもビデオ会議が利用できる。
また、マイクロHDMI(タイプD)端子まで備えるので、テレビモニタなどを利用したプレゼンも可能だ。
超小型ノートPCとしては、安価なモバイルノートPCやタブレットPCを凌ぐ拡張性と言えるだろう。




本体サイズは180幅×106奥行×18.5高mm。重さは約480g。
片手でも十分に持ち運びできるサイズで、重さも500gを切る。
これなら、上着の内ポケットに入れて持ち歩くこともできるだろう。

バッテリー持ちは、省電力CPU Intel Atom x7のおかげもあり、フル充電で約12時間(公称値)の使用が可能としている。日中の外出(半日)程度なら、バッテリー切れに悩まされる心配はないだろう。

搭載OSは、標準がWindows 10を搭載する。さらに今後は、Linux ユーザのニーズを満たすファームウェアも提供するとしている。





■豆知識:ポケット型PCの歴史
スマートフォンやタブレットPCが登場する以前は、ポケットサイズの超小型ノートPC(ポケット型PC)という製品があった。

ここでは、軽く歴史を振り返ってみよう。

国内初のポケット型PCと言えば、「Palm Top PC110(PT110)」がある。
日本IBMが1995年に発売した。
ウルトラマンがイメージキャラクターであったことから、「ウルトラマンPC」の愛称でモバイルユーザーに親しまれた。
小さいながらも最上位モデルは、Windows 3.1が起動するPCカードタイプの260MB HDDが同梱されていた。

国内メーカーからは、日本IBMのライバルであった東芝の「Libretto 20」だろう。
「Palm Top PC110(PT110)」の翌年、1996年の発売。
PT110はWindows 95を動かすには非力だったが、「Libretto 20」はWindows 95が実用的に動く初のポケット型PCだったこともあり、たちまちモバイルユーザーの人気を博した。


日本IBM「Palm Top PC110(PT110)」



東芝はその後、「Libretto 30/50/60」と、見た目はほぼ同じサイズで基本性能を向上させた機種を発売し続けた。

東芝の独壇場だったポケット型PCの市場に挑戦したのが、ソニーだ。

ソニーは1998年、VAIOシリーズとして、「VAIO PCG-C1」を発売したのだ。
他社のポケット型PCに比べて圧倒的にビジュアルに強いことを売りとしており、内蔵カメラで取り込んだ写真や動画を電子メールで送信することまでできた。キーボードも大きく打ちやすいことから、当時のモバイルユーザーを虜にするほどの人気を集めた。

さらにソニーは2002年、Windows XP搭載機としては当時、正解最小・最軽量となる「VAIO U」を発売する。
「モバイルグリップ・スタイル」と呼ばれる両手で持った状態で、さまざまな操作ができるボディは、ゲーム機の操作を彷彿とさせる斬新さだった。その後も、Uスタイルの後継機種はいくつか登場することになる。

ソニーは2009年に、「ポケットスタイルPC」という愛称で、「VAIO type P」を発売する。
細長い携帯ゲームのようなスタイルの本体は、「封筒サイズで、わずか約634g」というのが売りだった。これまでのポケット型PCにはない、スリムなボディと美しいデザインは、多くのモバイルユーザーを魅了し、今でもファンのいるモデルだ。

一方で老舗パソコンメーカー富士通も、ポケット型PCは提供していた。
2007年、Windows Vista搭載機として「LOOX U/U50N」だ。
画面が360度回転するユニークな筐体は、当時としては画期的なタッチパネル対応モデルでもあった。

富士通は、2010年に「LOOX U/G90」を発売。
本体サイズは「新書版サイズ」で、重さ約495gという軽さを実現させた。
事実上、「VAIO type P」の対抗機となった。




「GPD Pocket」は、パソコンファン、モバイルファンにとっては、久しぶりの本格的なポケット型PCとなる。

クラウドファンディングによる製品化だが、ノートPC市場に一石を投じるデバイスとなることだろう。


ITライフハック 関口哲司