都立国分寺vs都立江戸川
同点打に喜ぶ野原一将（都立国分寺）
都立江戸川にとって江戸川区球場は、まさにホーム。ブラスバンド部も応援も入り、地元住民の応援も加わり、スタンドは満員。その都立江戸川に挑んだのが都立国分寺だ。都立国分寺を率いるのは、昨年まで都立昭和で指揮を執っていた森勇二監督である。森監督は都立国分寺を見るのは、4月1日から赴任したということもあり、この日が初めてだという。サインは、選手のことをよく知る中山勇人教諭に任せた。森監督が選手たちに伝えたゲームプランはこうだ。「前半は淡々と、後半で勝負を一気に仕掛ける」後半でギアを上げる戦い。それは都立昭和時代から行っていた戦法で、昨年、早稲田実業を破った試合も逆転勝利だった。まさにこの試合は前年の逆転劇を体現するような試合であった。
1回裏、都立国分寺は、二死三塁から5番加藤田尚輝（2年）の中前適時打で1点を先制。
しかし3回表、都立江戸川が反撃開始。4番清水栄佑（2年）の適時二塁打で同点に追いつくと、4回表には、一死二塁から8番堤勇太（3年）勝ち越しに成功した。5回表には一死満塁から5番柳下勇介（3年）の右前適時打で3対1と点差を広げた。
だが都立国分寺にとっては想定内の試合展開だった。先発の竹内椋哉（3年）は右サイドからナチュラルにシュートするストレートとスライダーのコンビネーションで都立江戸川打線をしのぐ。竹内は秋までオーバースローだったが、もともとシュート回転するストレートをさらに生かすために、サイドスローになった投手だ。竹内と主将で正捕手の尾作柊威（3年）は、内外角への出し入れを意識した配球で、強力な都立江戸川打線を抑える。
そして8回裏、二死二、三塁のチャンスで6番野原一将（2年）が右中間を破る適時二塁打で同点に追いつく。この同点劇に、森監督はグータッチで選手を迎え、そして野原は塁上で、大きくガッツポーズ。大きく盛り上がりを見せた。
この同点劇で勢いに乗った都立国分寺。流れはすっかりと都立国分寺となっていた。10回裏、二死二塁で打席に立ったのはここまで力投の竹内だった。10回表、二死三塁のピンチを切り抜けた竹内は気分を良くして打席に入ることができた。2ストライク2ボールから5球目だった。外角高めのストレートを振り抜いた打球はライトの頭を超える長打となり、サヨナラ勝ち。逆転勝利で、2回戦進出を決めたのであった。
都立国分寺は、ブロック予選2試合はすべて逆転勝利。この試合も逆転勝利だ。
主将の尾形は、「うちとしては理想的な試合展開で、森先生がうちの持ち味を引き出してくれたと思います」と語る。同点打を打った野原も、「森先生の野球観はとても新鮮で、いろいろなものが参考になります」と目を輝かせる。
だが森監督は、「今大会は、今まで指導していた横山一彦監督の恩返しのために野球をやりなさいと伝えています。私はそれを手助けしているだけです」と今大会はあくまでサポートに徹する立場だと強調したが、都立昭和を強豪校に育て上げた森監督が入ることは都立国分寺ナインにとって大きな味方となるだろう。
この勝利は、都立国分寺が近い将来、強豪校を脅かす都立校へ成長するのを実感させる勝利であった。
（取材＝河嶋 宗一）
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