「ナンバーワン、オンリーワンの商品を持つことがモットー」と話す黒田精工の前田哲也社長

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ゲージメーカーとして精密加工・精密測定の技術を原点に事業を拡大し、それぞれの分野で業界ナンバーワン商品を開発してきた黒田精工<7726>は、創業から80年。この節目に就任した前田哲也社長に、創業以来の経緯と今後の方針などについて聞いた。

――創業の経緯と事業内容は?

 創業は1925年(黒田挟範製作所として創業)。当時は大変珍しいゲージ(測定器)の専業メーカーとしてスタートした。ゲージというのは、機械部品などの加工工作物が図面通りにできあがっているかどうかを判定する一種の精密検査具と言ったようなものです。

 当時は産業らしい産業といえば軍需産業、兵器産業が主体だったため、当時の最大顧客は軍部だった。ゲージは当時の日本ではそれほど広く認知された商品ではなかった。(品質の)合否判定に使われるので、非常に精密な加工精度が要求された。

 もう1つ重要なことは、ゲージ計測というものはシステム的な思考がないとできない。当時システム思考というのはまだ一般的ではなかったので、(黒田精工の)当時の技術は今日で言う最先端・ハイテク技術に相当するものだったと思っている。

 創業者が、当時としてはハイテク商品の専業メーカーとしてチャレンジしたことは、今から考えても非常に思い切った決断だったと思う。軍事国家とともに当社も進展したが、終戦と同時に会社が一時休業のやむなきに至った。その後、新しい組織体として再びゲージ会社として再発足した。

 現在6つの事業分野(空気圧機器・ツーリング・ゲージ・金型・ボールねじ・工作機械など)を運営しているが、それぞれのルーツをたどるとすべてがゲージに辿り着く。逆に言うと、ゲージから発展した事業が6つにわかれて育ったということ。現在の私どもの商品のすべては精密加工・精密測定という技能・技術を原点とした商品群で世の中に貢献している。

――御社の特長と強みは?

 6つ商品群があるが、それぞれの事業において、必ず業界、日本、世界でナンバーワン、さらに言えばオンリーワンの商品を持つことをモットーとしている。実際、現在ある6つの事業すべてで業界ナンバーワン、もしくはオンリーワン商品を持っている。

 例えば、ボールねじ事業。ボールねじとは、ねじの中に転動するボールをいれて摩擦係数を非常に小さくして効率よく動かそうという機械部品だが、現在の機械工業のどの分野でも幅広く使われている。このボールねじの精度等級というのはJISで決まっていて、精度の高い順にC0、C1、C2、C3、C4、C5、C7、C10と8段階に分かれている。私どもは最高級のC0をさらに上回る超仕上げ加工の世界最高級レベルのボールねじ技術を保有している。これもナンバーワン、オンリーワンの技術と自負している。

 残りの5つの事業でもそれぞれナンバーワン、オンリーワンの技術をもっている。なじみの深い商品をもう2点紹介する。

 1つは携帯電話についている小型デジタルカメラ。従来はプラスチックのレンズを使用していたが、画素数・解像度が上がるにつれて現在はガラスレンズになっている。金型でレンズ生産をするが、ガラスレンズ加工は金型の傷みがプラスチックに比べて非常に激しい。頻繁にレンズを磨かなければならない。従来は人間の手で、微小な非球面レンズを磨いていたが、当社は数年前に自動化に成功し、「スーパーポリシングマシン」という、金型の磨き機を製造販売している。これは世界でも当社のみのオンリーワン商品で、デジタルカメラメーカー各社に好評。

 もう1つは、携帯電話の振動モーター。これはペディアモーターとも呼ばれ着信音の代わりに振動でお知らせする、非常に小さいもの。従来はあまりに小さいので中に入っているモーターコアという部品を1枚1枚接着剤で接着して作っていたが、私どもは型の中でレーザー溶接をしてつくる技術を確立した。これもオンリーワン技術。現在振動モーター、さらには超小型モーターのお客様にモーターコアそのものを提供させていただいている

 このように一般産業のみならず、消費財に近いような商品に対しても幅広く技術を提供しているところが強み。(つづく)

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【会社概要】
商号黒田精工株式会社

設立

1925年4月
上場61年10月(東証2部上場:証券コード 7726)
資本金18億7500万円
売上高184億2900万円(05年3月期連結)
代表取締役社長前田哲也(まえだ・てつや)
従業員数449人(05年3月末)
本社神奈川県川崎市幸区下平間239
電話番号044-555-3800(代表)
URL http://www.kuroda-precision.co.jp/


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