妊娠・出産で退職するならやっておきたい「失業保険」の3年延長手続き
「仕事も楽しいし、パートナーとはもっとふたりきりの時間を楽しみたい。産むとしても数年先かな……となると、産んでもひとりだけかな」そんなことをとりとめもなく考えている30代女性の皆さんに向けて、妊娠2年前から考えておきたいお金の話をお届けしている本連載。
今回は「失業保険の延長手続き」。出産後も働き続けたいと思っていても、仕事を辞めざるえない女性は後を絶ちません。もしそうなった時のために知っておきたい「3年延長」の裏ワザをご紹介します。
【記事一覧はこちら】妊娠2年前からのお金計画“出産ビンボー”にならないために
現在38歳、大手メーカーに正社員として勤めるAさん。32歳で結婚、34歳から2年間の不妊治療を経て36歳でめでたく妊娠・出産しました。夫はメーカー勤務で世帯収入は1000万円。「一生に一度きりの経験かもしれないから」とベストの選択をし続けた結果、出費は合計で205万円に膨らみ、“出産ビンボー”になってしまいました。
出産を機に仕事を辞める女性は5割超
平成27(2015)年度の「少子化社会対策白書」によると、平成22(2010)年に出産した女性で、その1年前の時点で仕事をしていた人のうち、出産前後で仕事を辞めた人の割合は54.1%。さらに、このうち26.1%が、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立が難しかった」ことを退職理由に挙げています。
Aさんもその一人でした。
2年の不妊治療を経て36歳で念願の第1子を出産。半年の産休・育休を経てもとの職場に復帰しましたが、保育園のお迎えのため毎日10時から16時までの時短勤務となり、産前のようにバリバリ働けないことにフラストレーションを感じていました。そして、せっかく産んだわが子と過ごす時間が限られ、毎朝「ママ〜!」と泣かれるたびにしめつけられる胸。
そんな復帰後の生活に「これは自分が望んでいたことじゃない」と悩んだすえに、半年で離職を決意しました。
「やっぱり仕事が好きだった…」
仕事を辞めたAさんは、毎日思う存分わが子を過ごせて幸せでした。ところがある日、公園でママ友と話していて、重大なことに気がつきます。
仲良しママのBさんは育児休業中。公園で同じように赤ちゃんと遊んでいても、Bさんには育児休業給付金が支払われています。それなのに、会社を辞めたAさんは収入ゼロ。これまで夫と共働きでお金のことなど何も考えていなかったAさんは、出産費用で貯金残高も底を尽き、スーパーのチラシを見ては節約生活を送る毎日。
「私、やっぱり仕事が好きだったな……」と、公園のブランコに座りながら、なつかしく会社生活を思い出すのでした。
「そうだ!失業保険をもらおう!」と思い立ったAさん。出産を機に仕事を辞めたママ友Cさんに、失業保険のもらい方を聞いてみました。すると、
「私たちのように出産や子育てをするために仕事を辞めた人は、失業保険をもらえないのよ。だから、私は失業保険の延長手続きをしたの」
と教えてくれました。
失業保険をもらう権利は1年で喪失する
「失業保険」とは、会社員や派遣社員、アルバイトなど、誰かに雇用されていた人が失業した時に、生活費を気にすることなく求職活動に専念できるよう支払われる手当のこと。受給のための手続きはハローワークで行います。「失業保険」をもらうには次の2つを満たしていることが条件となります。
【1】過去2年間に雇用保険の被保険者だった期間が通算12ヵ月以上ある人(倒産や解雇などで離職した人、その他やむをえない理由で離職した人は、過去1年間に通算6ヵ月以上加入していれば対象になる)
【2】就職しようという積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるが仕事に就けていない人
ここで気をつけたいのが、「妊娠・出産・育児ですぐに働けない人」は、失業保険の対象外とみなされることです。対象外だからと、会社を辞めたまま何もしないでいると、原則1年間の受給期間が終了し、知らないうち権利を喪失してしまいます。
離職から1ヵ月以内に延長手続きをしておく
ただし、働けなくなった日から1ヵ月以内にハローワークにその旨を届け出れば、最長3年間、失業保険の受給期間を延ばすことができます。子どもが成長してあまり手がかからなくなり「そろそろ、本格的に働こう」と思えた時点で、ふたたびハローワークに申請すれば、失業保険の手当をもらいながら仕事を探せるのです。
仕事を辞めて、失業保険の延長手続きのことも知らずに後悔続きのAさんでしたが、以前のAさんの仕事ぶりをよく知る知り合いに、「一緒に働こう」と声をかけられ、子どもが2 歳半になった時に正社員として再就職することに。保育料はしばらくかかりますが、周囲の手も借りつつ仕事と子育てに邁進して、自分らしさを取り戻したAさんでした。