ＦＣ東京が城福浩監督を解任した。第２ステージは１勝４敗で16位に低迷し、年間順位でも13位に止まっている。昨季は年間勝点で４位に食い込んだクラブとしては、納得できるものではないだろう。

　クラブにとって監督は重要な存在だが、それよりも大切なのは哲学だ。どういった選手を揃え、どういったサッカーをするのかである。監督交代をきっかけとしてゲームの内容が哲学に沿ったものとなり、結果もついてくるようになれば、今回の判断は正しかったことになる。ＦＣ東京らしい主導権を握るサッカーが、取り戻されていけばいいのだが。

　動かないクラブもある。名古屋グランパスだ。

　第１ステージから13試合連続で白星をあげられず、第２ステージは最下位に甘んじている。年間順位も降格圏の17位だ。

　昨年はどうだったかというと、第１ステージは９位、第２ステージは10位だった。年間順位は９位である。ひどく悪いわけではないが、素晴らしいとも言えないこの成績を受けて、西野朗監督との契約を更新しなかったのだ。小倉隆史ＧＭ兼監督に、期待が集まった。

　他チームで監督の経験がなく、なおかつクラブのＯＢでもある小倉監督の起用は、とてもよい着想だと個人的に考えている。成績不振に喘いでいる現在も、それは変わらない。

　サッカークラブは現役選手だけでなく、ＯＢが働ける場所でもあることが望ましい。ＯＢ監督が増えれば、クラブの哲学が引き継がれていく確度が高まる。監督が変わるたびに目ざすサッカーが変わるといった事態を、避けることができる。

　Ｊ１復帰１年目の大宮アルディージャが成功をしているのは、渋谷洋樹監督の経歴と無関係でない。前身のＮＴＴ関東時代に選手としてプレーした渋谷監督は、オランダ人のピム・ファーベーク監督が持ち込み、クラブが土台とするポゼッションスタイルに触れ、その後は下部組織とトップチームでコーチを歴任した。Ｊ１昇格後のクラブが拠りどころとしてきた堅守の理論を知り、同時に、Ｊ１残留争いから抜け出せない現実も間近で見てきた。

　そうした経験を生かしながら、14年途中の監督就任後は「堅守多攻」へのバージョンアップをはかってきた。昨年のＪ２優勝も、今年のここまで年間９位の成績も、渋谷監督がアルディージャというクラブを熟知していることが大きな理由だ。

　話をグランパスに戻そう。

　Ｊ１残留を最優先に考えれば、監督交代という選択肢もあるだろう。だが、リーグ戦はまだ12試合も残っている。最大で勝点36を上乗せできるわけで、その半分の「18」でも最終的な勝点は「36」になる。残留は可能な数字だ。

　グランパスの年間順位は17位だが、降格圏と残留圏の境界線は近い。10位のサガン鳥栖とも、勝点差は「10」である。巻き返しは可能だ。

　Ｊ１制覇を成し遂げたこともあるクラブとして、グランパスの現状は誰にとっても納得できないものに違いない。それでも長期的な視点に立てば、小倉監督とともに残留を勝ち取ることに意味はあるはずだ。グランパスと小倉監督の今後を、注意深く見ていきたい。