アーティストの坂本美雨がお届けするTOKYO FM「坂本美雨のディアフレンズ」に、映画監督の山田洋次さんが出演。「男はつらいよ」シリーズで知られる山田洋次監督が、現在公開中の「母と暮せば」に秘めたメッセージと、3月12日から公開される新作コメディ「家族はつらいよ」の制作秘話を教えてくれました。
(アーティストの坂本美雨がパーソナリティをつとめるTOKYO FM「坂本美雨のディアフレンズ」3月7日放送より)


山田洋次監督(右)と、パーソナリティの坂本美雨



坂本「日本を代表する監督の山田洋次さんをお迎えしています。昨年(2015年)12月公開の『母と暮せば』という監督の映画では、私の父の坂本龍一が音楽を担当させていただきました。私が言うのも変ですけれど、ありがとうございました」

山田「念願の坂本龍一さんと、ついに仕事ができたという感じでね」

坂本「終戦70年という年に、戦争で残されたお母さんと、原爆で一瞬にして消えてしまった息子が幽霊として出てくる物語でしたけど、監督は生涯で一番大事な作品にしたいとおっしゃってましたね」

山田「テーマが重いですからね。20世紀の人類の歴史の中でも、広島・長崎の原爆はトップクラスの重大な事件でしょう」

坂本「井上ひさしさんの戯曲『父と暮せば』と対になるように意識して作られたのですか?」

山田「井上さんの娘さんから提案されたんですよ。井上さんの『父と暮せば』は、広島が背景になっています。次は長崎の原爆をテーマにして、『母と暮せば』という戯曲を作る予定があったそうなんです。結局、それを書く前に亡くなられてしまったわけですが、そのタイトルで井上さんの意思を引き継いで映画を作ることは可能ですかと娘さんに聞かれて、僕は聴いた瞬間、できそうだなと。『父と暮せば』という芝居も何回も見ていたし、あれは生き残った娘さんがお父さんの亡霊と会う話でしょう。同じ形なんだけど、今度はお母さんが生きていて息子が亡霊。そうやったらできるんじゃないかと、オファーを受けた途端に思い描けてね」

坂本「その瞬間にもう描けた。吉永小百合さんが演じたお母さんの台詞でとても印象的なものがあります。二宮和也さん演じる息子さんが『こうなったのは僕の運命だよ』と言うと、『運命なんかじゃない。地震や津波は防ぎようがないから運命だけれども、これは防げたこと、人間が計画して行った悲劇なんだ』と。そう戦争のことを言いますね。これは監督自身が言いたかったメッセージなんでしょうか」

山田「実は、井上さん自身も同じことをおっしゃってる。長崎大学医学部にある慰霊碑には『1945年8月9日、この頭上で原爆が炸裂した』とある。井上さんに言わせると主語がないと。原爆は誰かが落とした。本当は主語が必要なんじゃないかと。戦争も同じです。戦争は勃発するのでなく誰かが起こすのです」

坂本「すべての方に観てもらいたいです。そして、監督の新作『家族はつらいよ』が3月12日から公開されるんですね。この『家族はつらいよ』は、『母と暮せば』とがらっと変わってコメディですね」

山田「5年前に『東京家族』という映画を撮っています。小津安二郎監督の不朽の名作『東京物語』のストーリーをそのまま現代に持ってきました。4組8人の家族が出てくるんですけど、彼らとの仕事が楽しくて、このまま別れるのがもったいないねと。今度は喜劇がやりたいと言っていたら、それが実現してしまったのが『家族はつらいよ』です」

坂本「『男はつらいよ』にも通じる家族の温かさは、監督のベースにあるのでしょうか」

山田「僕の少年時代はそんな幸せな家庭環境ではないんだけどね。戦後、苦労があったからこそ、温かい家族はいいなという願いはあったかもしれない。寅さんのような人を受け入れる家族はいい家族なんです。おまえなんか帰ってくるなと言わずに受け入れるんですから」

坂本「寅さんも帰ってくるところがあるからこそ、旅に出られるんですものね」

山田洋次監督の最新作『家族はつらいよ』は、3月12日に全国公開となります。上映館など詳しい情報は、映画『家族はつらいよ』公式HPhttp://kazoku-tsuraiyo.jp/ http://kazoku-tsuraiyo.jp/をご覧ください。

アーティスト・坂本美雨がパーソナリティをつとめるTOKYO FM「坂本美雨のディアフレンズ」。3月8日のゲストは、山崎まさよしさんです。毎回、多彩なゲストとの楽しいトークや素敵な音楽をお届けします。

【あわせて読みたい】
★つるの剛士が本番前に、カラアゲや豚骨スープを食べる理由(2016/3/7) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/4QjYIQhzMm.html
★ももクロ × 金田一秀穂「言語学者に学ぶ、感謝の言葉」(2016/3/6) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/ZUjYVH5EBx.html
★加藤ミリヤ、キャリア11年目は「今までの自分から離れて自由に」(2016/3/4) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/7YcUYoqVNs.html

〈番組概要〉
番組名:「坂本美雨のディアフレンズ」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:毎週月〜木曜11:00〜11:30
パーソナリティ:坂本美雨
番組Webサイト: http://www.tfm.co.jp/dear/