2016年の高校野球を占う【東北編】「近年、勢いのある東北地方 今年東北を盛り上げる学校とは?」

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 昨夏、宮城県代表の仙台育英が決勝進出。そして秋田県代表の秋田商がベスト8と改めて力を見せつけた東北地方。今回は東北の有力校、注目選手を北東北と南東北に分けて紹介をしていきたい。

青森県、岩手県、秋田県の北東北の状況

 今年のセンバツには一般選考で青森山田と八戸学院光星が、21世紀枠で釜石が選出された。東北地方からは3校がセンバツの舞台に挑む。まずは史上初めて2校が選抜に出場する青森県から。昨秋の県大会では八戸学院光星が準決勝で青森山田を破って優勝。東北大会では決勝で青森山田が八戸学院光星を下し、“下克上”で初優勝した。

内山 昂思(青森山田)

 青森山田は、1年から公式戦を経験し、高校通算22本塁打の1番・内山 昂思主将、チーム最多の13打点を昨秋の公式戦で稼いだ3番・捕手の村山 直也、秋の公式戦全13試合で安打を放ち、打率.458を残した4番・三森 大貴ら攻撃の軸がしっかりしている。投手陣もエース・堀岡 隼人を中心に複数のピッチャーが競争し、基本を重視した守備も鍛えられている。

 3年連続でセンバツ出場となった八戸学院光星。11年夏〜12年夏の3季連続甲子園決勝進出は全国舞台での強さを示したが、部員数も増加し、チームが丸々入れ替わる秋に結果を残していることは安定した強さの証明だ。特に昨秋は仲井 宗基監督がU-18日本代表のコーチでチームを不在にする期間がある中で成績を残した。昨夏の青森大会決勝で相手投手を打ちあぐね、昨秋の東北大会決勝では青森山田に完封負け。この冬は打力に磨きをかけ、今シーズンに備えている。

 この2校に加え、最速145キロ右腕・種市 篤暉要する昨秋、2位だった八戸工大一は攻撃力を高めてシーズンに臨みたいところだ。昨秋4位の青森北や13年夏の甲子園出場の弘前学院聖愛は冬場の取り組みをどこまで発揮できるか。

 昨秋の岩手県大会準優勝で、東北大会初戦で東北に延長12回、サヨナラ負けを喫した釜石。昨秋の公式戦全9試合中、8試合で完投したエース・岩間 大が大黒柱だ。秋の岩手を制したのは盛岡大附だった。地区予選で1敗を喫したチームだったが、県大会では花巻東、専大北上とライバル校を撃破。東北大会では3年ぶりのベスト4となった。東北大会準決勝は、優勝した青森山田に1対5で敗戦。青森県同士の決勝になったことで地域性によるセンバツ出場のチャンスはあったが、選出されず。落選から気持ちを切り替え、夏こそはと燃えている。

 昨秋の岩手県大会3位だった一関学院は東北大会初戦で聖光学院に競り勝つと、準々決勝では東北に逆転勝ちし、7年ぶりに4強入りした。夏は決勝に進出するも花巻東に延長13の末に敗戦。1年間、“あと一歩”に泣いた悔しさを今年は晴らしたい。

 高校野球が始まって100年という記念の年となった2015年。第1回大会の準優勝校ということで話題となったのが秋田だった。夏は早々に敗れたが、春の県大会では準優勝。そして、秋は18年ぶりに県の頂点に立った。準優勝は能代、3位は能代松陽で、4位は大館鳳鳴。では春、夏も秋の上位校が優勢かといえば、そうでもなさそうだ。

 昨夏の甲子園の活躍で、ロッテに入団したエース左腕・成田 翔を擁し、秋田県勢20年ぶりの8強入りを果たした秋田商。昨秋は地区大会で敗れ、県大会に出場できなかった。この秋田商を始め、実力校がひしめく秋田の中央地区大会を初制覇したのが秋田西だった。県大会優勝の秋田は地区大会で秋田西に敗れている。15年センバツ出場の大曲工がいる県南地区では横手清陵が初優勝。例年通り、秋田は今年も混戦模様になりそうだ。

[page_break:宮城県、山形県、福島県の南東北の状況]宮城県、山形県、福島県の南東北の状況

 宮城は昨秋、秋の大会では3年ぶりに仙台育英対東北の決勝が実現。7回まで4対0で東北がリードしていたが、仙台育英が8回に1点差に迫ると、9回に2点を奪ってサヨナラ勝ちした。仙台育英は昨夏の甲子園で準優勝したが、ベンチ入りメンバーはほとんどが3年生。メンバーがごっそり入れ替わった中で県の優勝旗を渡さなかったのは、能力の高さもあるが、危機感と謙虚さを持って戦えたから。秋は甲子園準優勝の直後ということで、前チームと比較されるなど意識させられる部分があったが、この冬でチームを見直すこともできた。NEW仙台育英として、どんな顔を見せられるか。

 東北は秋の県大会決勝で守りのミスから崩れてひっくり返された。守備はもとより、冬場は打力アップにも励み、バットを振り込んできた。宮城はこの2校を中心に東陵や古川工といった秋の上位校がどこまで挑めるか。

 東北大会では、10年以来、5年ぶりに3校すべてが初戦敗退となった山形。14年秋の県大会は5本だった本塁打が、昨秋は13本と長打力が目立った。その代わり、投手の失点も多かった。優勝した酒田南には石垣 雅海。3位の鶴岡東には丸山 大、8強止まりだった日大山形には鈴木 琉生といった中心打者がおり、その打席は見ものだ。「打高投低」の山形で異彩を放ったのが県大会4試合で14盗塁と走った山形中央。試合を作れる投手も3人おり、他校と違ったカラーを見せる。

小泉 徹平(聖光学院)

 夏の甲子園に9年連続で出場した聖光学院だが、昨秋の県大会優勝は3年ぶりだった。13年秋は準決勝で、14年秋は準々決勝でそれぞれ日大東北に敗れた。それでも、冬場にチーム力を高めて春、夏にしっかり鍛えてくるのが聖光学院。東北大会の初戦敗退も今後に活かしてくるだろう。

 13、14年と秋季県大会を連覇した日大東北だったが、昨秋は2回戦で聖光学院に敗れている。県大会準優勝だった学法石川は11年ぶりの東北大会出場だった。能代松陽から勝利を挙げ、12年ぶりの東北大会白星。近年、成績が振るわなかったが、古豪復活を印象付けた。今年からは元ロッテの山室 公志郎氏が非常勤のコーチに就任。17年ぶりの甲子園出場にチームの体制を整えている。

 元プロ野球選手の指導者としては、巨人やダイエー(現ソフトバンク)でプレーした伊藤 博康氏が昨年12月、東日本国際大昌平の監督に就任し指導をしている。聖光学院が夏10連覇を遂げるのか、それとも、ストップをかけるチームが出現するのか。例年以上に福島の戦いは注目度が高そうだ。

 高校野球が始まって100年の間、春も夏も東北地方に優勝旗は来なかった。1戦、1戦が歴史の1ページ。次の100年の始まりとなる今年、東北地方の各校がどんな戦いを見せるのか楽しみにしたい。

(文・高橋 昌江)

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