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●物語が進むごとに立ち位置が変わっていく激動の「チェイス」
現在テレビ朝日系で放送中の特撮TVドラマ『仮面ライダードライブ』(毎週日曜朝8時〜8時30分)には、主人公の仮面ライダードライブ/泊進ノ介を筆頭に、熱きドラマを背負った個性豊かなキャラクターが大勢登場する。中でも、人類制圧を目的とする人造人間ロイミュードの「死神」と呼ばれた「魔進チェイサー」から、人間を守って戦う「仮面ライダーチェイサー」へと転身を果たしたチェイスは、非常に人気の高い登場人物のひとりである。

今回は、ロイミュードと人間との狭間で苦悩し、己の信じる道を突き進んでいくことを選んだチェイスを演じる俳優・上遠野太洸にインタビューを行い、いよいよクライマックスに向かうTVシリーズへの思いや、8月8日より公開される特撮映画『劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー』の見どころなど、さまざまな話をうかがった。

我々がテレビで観ているチェイスは、感情を押し殺したクールな態度を取りながら、どこか人間くさい部分をのぞかせるキャラクターであるが、取材に応じた上遠野は、チェイスとは一味違ってさわやかな笑顔がまぶしい好青年だった。

――チェイスは、人類を守る「プロトドライブ」から一転し、「仮面ライダードライブ」を狙う「魔進チェイサー」、そして再び人類のために戦う「仮面ライダーチェイサー」と、ストーリーが進むごとに立ち位置が変わっていく激動のキャラクターでしたが、このような展開になるとは最初から聞いていましたか?

いえ、全然思ってなかったです。放送開始すぐのインタビューでは、「チェイスはこのまま悪役をまっとうしたい」みたいなこと話していますし(笑)。こんなにキャラクターが敵・味方の間で揺らいで、最終的に仮面ライダーになってしまうなんて、自分の中でも意外でした。

――オーディションの時から、チェイスのようなライバル的ポジションの役柄が振られたのでしょうか。

オーディションを受けて、二次審査、三次審査と進んでいくんですけれど、途中までは主役っぽい演技のテストもやっていましたね。ペラ一枚くらいの簡単な台本を渡されて、台詞を言って芝居して……と。でも、最終あたりになると、なんとなく主役ではないのかなな……みたいな感じはありましたね。

――チェイスといえば、感情を出さず声を低く抑えた話し方が印象的ですが、上遠野さんのふだんのテンションとはかなり違いますよね。

チェイスの声は、意識的に低く作っています。撮影に入る前、チェイスの演じ方をどうしようか少し考えまして。物語が進んでいく中でチェイスのポジションが変化しても……例えば正義側になるとしても、声も変化を出せるよう、声は最初低めにしておいたほうがいいかと思ったんです。

でも、実際に正義側に来た後でも、チェイスのテンションは基本変わりませんでしたね。まあ、チェイスは人間ではないということも、ストーリーの展開と共に視聴者の皆さんにはわかってもらえたようですので、そのままでいこうと。低い声を出すのは、最初こそ苦しかったですけれど、今はぜんぜん平気です。ただ、戦闘シーンのときのかけ声は、低い声で叫ばなければいけないので、これが大変。アフレコが終わった時、声を枯らしてしまいますね。

●劇場版は「進ノ介とベルトさんの心の繋がりがしっかりと描かれている」
――チェイスの衣装についての印象はいかがですか? ロイミュード側から人間側についたことで、衣装もヒーローっぽく変わるかと思われましたが、変化はなかったですね。

実は僕も、仮面ライダーになったことで衣装が変わるのかな? なんて、ちょっと期待はしていたんですけれど、そのままでした(笑)。あの衣装は風を通さない材質で、今の季節はほんとうにキツいんですが、チェイスとしては決して「暑い」という感情を表に出さずに演技しています。

――敵味方の間で揺れ動きながらも、生真面目な性格の部分が決してブレないチェイスは、子供たちからの人気も高いとうかがっています。外を歩いていると、子供たちに気づかれたりすることってありますか。

たまにありますね。この前、電車に乗ろうとしていたとき、お子さんを連れているお母さんが「チェイス!」と叫んで、その声につい振り向いてしまった(笑)。「うちの子が大好きで……」みたいに声かけてもらいました。やっぱり、そうやって応援してくださる子供たちを見ると、本当にうれしいですね。

――さて、いよいよ夏の映画『サプライズ・フューチャー』が公開されますが、完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたか。

とにかく仮面ライダーがカッコよく、他のキャラクターもそれぞれ魅力的に描かれている映画です。特に、進ノ介とベルトさん(クリム・スタインベルト)との関係性、心のつながりの部分がしっかり描かれていたのがとてもいいですね。彼らのやりとりを観て、何度か泣きそうになりました。あの二人がもう、親子にしか見えなくてね。お互いに軽口を叩きあっている感じとかも……。うまく言い表せないですが、胸のあたりが熱くなるような思いを抱きました。

――チェイスは進ノ介を助けて強敵に立ち向かい、壮絶な戦いを繰り広げますね。

進ノ介にベルト(マッハドライバー炎)を託すシーンでは衣装を一着ダメにしているんですよ。チェイスの見どころとしては、進ノ介を助けて身体を張るという熱いシーンがまずひとつ。敵にやられてボロボロになったチェイスから受け取ったベルトが、後半の鍵になっていくところ、がふたつ目ですね。他には、ロイミュードの本拠地にたった一人で乗り込んでいくシーンは、テレビでもなかなかない場面なので、ぜひご覧いただきたいです。ハートがテレビ第2話と同じ台詞「心当たりがないでもない」を言ったりするので、最初からTVシリーズを観ている人にとっては、胸が熱くなりますよ。

――名台詞と言えば、チェイスには「もう一度、やり直せ」(第3話)とか「誰も聞かなかったからだ」(第30話)、「本は静かに読むのが人間のルールではないのか」(第10話)など、印象的な一言がとても多いですね。

ああーたびたびありましたね、ヘンな台詞が(笑)。ああいう台詞を素の状態で話せば、ふざけているのか? って思われかねないですよね。あのチェイスが真面目に言うから面白く聞こえるんだと思います。こいつ本気で言ってるんだな……とちゃんとわかりますから。

――TVシリーズの方もいよいよクライマックスを迎えようとしている時期ですが、一年間近くチェイスというキャラクターを演じられてきた、ご感想を聞かせてください。

この一年間を振り返ると、簡単な言葉になりますが全部がよかったです。これまで、ブレンに操られたり、自分の存在意義を見い出せずに悩んだりしたことなど、すべての出来事がチェイスの糧になっている。そんな苦難を乗り越えた上で、人間を守る仮面ライダーでありつづけようと決意をするんです。ここまで、ひとつの役を育てていただける機会は他の現場ではなかなかないです。一年間という長いスパンで、チェイスの葛藤や成長をじっくりと演じることができました。

●求めるヒーロー像は「何があっても最後まで自分を信じてくれる人」
――撮影開始から現在までで、上遠野さんご自身で何か変化したことってありますか。

「役」の成長というのは大事だなって改めて思いました。一年を通してチェイスが何も変わっておらず、ずっと淡々と喋り続ける「機械人形」のようなキャラだったら、きっと観る方たちも興味を持たなかったかもしれません。今後、例え短いスパンの仕事であっても、与えられたストーリーの中で「役」を大なり小なり成長させていく。それをやることで、よりリアルな演技になるんじゃないか、観てる人に納得してもらえるんじゃないかと思うようになりました。

――上遠野さんとチェイスで、似ているのはどんなところでしょう。

頑固なところかな。なかなか自分の意見が曲げられないところが共通しているかもしれません。我が強いってよく言われますけれど、いいときと悪いときがあるんで、そこが悩みどころです(笑)。

――7月26日放送の第39話では、チェイスが運転免許を取るために教習所で真面目に教習を受けるシーンがあり、ファンの間で話題になりました。

車に乗ってロイミュードを誘い出すために、四輪の免許が必要だって流れでしたね。チェイスも、特状課のみんなと一緒に何かをしたかったんじゃないかと思うんです。「免許がないと車には乗れない、それが人間のルールか!」って、きっと思ったんですよ(笑)。それでストレートに、免許を取りに行ったわけです。

チェイスは人間ではないって言う思いが自分自身にあったけれど、「免許」というのは人間から認められるというか、人間として何かをした証だと思っているんでしょう。人間と同じことをしているというのが、チェイスにとっては、うれしくてしょうがないんです。劇中でのベルトさんの台詞にもありましたが、僕もそういうつもりで演技をしています。

――免許証の写真が、満面の笑顔なのも衝撃的でしたね。

あれは、そういう風に笑えって言われたから、笑ったまで(笑)。おそらく「写真を撮るときは笑うのがルールだ」と言われたか、チェイス自身もそう思ったからですね。

――最後に、上遠野さんが思う「理想のヒーロー像」を教えてください。

僕にとって「ヒーロー」になる人がいるとしたら、これから先「何があっても最後まで自分を信じてくれる人」でしょうね。それはもしかしたら、子供のころからの親友や、家族なのかもしれません。あいつだけは俺のことを信じてくれるんだ、という人の存在は、自分への活力になります。常に自分を勇気づけてくれる存在、それがヒーローだと思います。

『劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー』は、8月8日より全国公開。同時上映は『手裏剣戦隊ニンニンジャーTHE MOVIE 恐竜殿さまアッパレ忍法帖!』。

■プロフィール
上遠野太洸
1992年10月27日生まれ 宮城県出身。2010年ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのグランプリを受賞し、デビューその後は、映画、テレビドラマ、舞台など多方面で活躍中。2014年10月から『仮面ライダードライブ』にチェイス役でレギュラー出演し、子供から主婦層まで幅広い年齢層からの人気を集めている。
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(秋田英夫)