29日、兵庫県尼崎市で開催された定時株主総会に出席する阪神電鉄の株主。(撮影:常井健一)

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村上ファンドによる株買い占め問題で揺れた阪神電気鉄道の定時株主総会が29日午前、兵庫県尼崎市の総合文化センターで開かれた。阪急ホールディングスによる株式公開買い付け(TOB)が成立したのを受け、27日付で阪急の連結子会社になった同社は、総会で議決権行使ベースで3分の2以上の賛同が得られれば、阪急の完全子会社になる。一般株主を対象とした株主総会としては、185回目の今回が最後となる。

 冒頭で、西川恭爾社長は、村上ファンド問題について「株主の皆様、関係各位に大変ご心配をおかけし、まずもってお詫び申し上げる」と陳謝。阪急との経営統合を決断したと報告し、「戦後初となる大手私鉄の経営統合を実現させ、より強固な企業グループを形成したい」と述べ、株主に理解を求めた。

 総会では、会社側が◆年間配当が1株当たり5円とする利益処分案◆TOBに応じなかった株主に阪神株1株につき阪急株1.4株を割り当て、10月1日付で阪急の完全子会社になる経営統合案◆西川社長や手塚昌利会長、村上ファンド側から取締役就任の要請があった玉井英二社外取締役が辞任し、坂井信也次期社長ら16人を取締役に選任する人事案◆監査人を中央青山監査法人からあずさ監査法人に切り替える議案─など6議案を提出。

 経営統合をめぐる株主の反応に注目が集まる一方、買い付け価格を1株930円としたTOB成立後の阪神株は、徐々に値崩れして800円台前半で推移しているため、TOBに応じなかった株主の心境は複雑だ。会社側は、利益処分案が原案 通り承認されなかった場合、経営統合議案を審議しない方針を招集通知に明記。総会での増配要求動議をけん制している。

 昨年に比べ倍の2000人が収容できる会場を用意した今回の株主総会には、「何10年も保有している」という中高年の安定株主が目立った。「阪神に愛着があるから、株は手放しにくかった」と話す阪神沿線在住の男性株主(73)は、保有株の大半をTOBに応じた。村上ファンドへの阪神側の対応について「一体何しとるんだという感じ」としながらも、「利用者の利便性を追求してほしい」と統合に期待を寄せた。神戸から来たという男性株主(78)は、阪急について「上品で阪神とは肌の色が違う」と、統合案への賛同に躊躇している胸のうちを語った。阪急沿線に住む男性株主(64)は、TOBではなく、阪急株への株式交換に応じることを明かし、「阪急株主として阪神を支えて行きたい」と話した。

 取材に応じた株主の多くが会社側に賛同する意向を示したが、「あんな人(村上世彰被告)さえ出てこなければ」(55歳の女性株主)と、経営統合という顛末(てんまつ)に悔しさをにじませる株主も。

 一方、阪急も同日午前、大阪市北区の梅田芸術劇場で株主総会を開催。経営統合案のほか、10月発足の「阪急阪神ホールディングス」の取締役に阪急側12人、阪神側6人を選任する人事案などを諮る。TOBに要した資金が当初予定より600億円も膨らんだことから、財務体質の悪化やTOB価格の妥当性について批判が集中することは必至だ。【了】

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