ヤンキースにとって最高のシナリオとは?

 ヤンキース田中将大投手が右肘靭帯の部分断裂で全治6週間と診断されたことで、地元メディアは2年ぶりのプレーオフ進出に向けた補強の必要性を指摘。開幕時の先発ローテーション5投手で唯一残っている黒田博樹投手もトレード要員として挙げている。ESPNが「速報 田中が6週間離脱」という見出しで特集している。

 記事では「3人の専門家が、田中がトミー・ジョン手術を回避できるかもしれないと考えていることはポジティブなことだ。これにより、ヤンキースは一大悲劇の寸前で留まることができた」と伝える一方で、「凡庸なシーズンでタナカは輝ける星であり続けた。彼はヤンキースの現在であり、未来を象徴している。肘の状態が良くないことは大きな懸案事項だ」とヤンキースと田中の将来を案じている。

 現状における最高のシナリオは田中が6週間でリハビリを終えて再びサイ・ヤング賞候補に相応しいピッチングを見せ、8月には広背筋の肉離れから復帰する見通しのマイケル・ピネダ投手とともにチームを牽引することだという。そうなれば、ヤンキースもプレーオフ進出を果たして今季限りで引退するデレク・ジーター遊撃手の花道を飾れる可能性も出てくる。

 一方、最悪のシナリオは田中のリハビリが当初予定の6週間をオーバーし、回復が見込まれずにトミー・ジョン手術に踏み切ること。「こうなれば2015年の復帰も難しい。ヤンキースにとっても悪夢だ」と記事では分析している。

黒田ですらトレードの候補となる異常事態

 ヤンキースは開幕当初の先発ローテーション5選手のうち4人が戦線離脱する異常な事態となった。46勝45敗で貯金1。本来なら今シーズンは諦めてもおかしくない状況だが、首位オリオールズとのゲーム差は4で、3位につける。それほど現在の東地区は混戦状態だ。そのため、ヤンキースは“売り手”よりも“買い手”に回らなければいけないと記事でも指摘している。

「誰も地区優勝するとは言わないが、オリオールズと(2位の)ブルージェイズにも穴はある。レイズとレッドソックスは自分たちの大きく掘り過ぎた穴から抜け出せずにいる。ブライアン・キャッシュマン(GM)はヤンキースがマーケットで買い手になると宣言している。球団のDNAを考えれば間違いないだろう」。そう報じる記事ではそヤンキースがトレード期限までに補強することは確実と見ているが、即戦力を手にするには誰かを放出する必要もある。

 ここでトレード要員として名前が挙げられているのが、中継ぎのデリン・ベタンセス投手、クローザーのデビッド・ロバートソン投手、そして黒田博樹投手だ。「クロダは将来的な損失とならないので一考の価値はあるだろう。だが、彼は過去にトレードを受け入れていない。2人のリリーフは放出するには価値が高すぎる」と記事では分析している。

 今季6勝6敗の黒田は開幕から唯一、先発ローテーションを守り続けており、11日(日本時間12日)のオリオールズ戦でも先発予定だ。39歳のベテラン右腕は昨季終了時に現役引退を真剣に考えていたことを地元紙に話すなど、毎シーズン強い覚悟を持ってシーズンに臨んでいる。その黒田を放出して、黒田以上の投手を獲得できるのかも未知数。ローテーションを守り続ける唯一無比の存在ですらトレードの可能性が浮上するほど、田中不在の穴は甚大で、ヤンキースや地元メディアにとっても危機的状況ということなのだろうか。