産総研、Web上の楽曲を自動解析する音楽鑑賞システムの実証実験を開始

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産業技術総合研究所(産総研)は8月29日、楽曲の可視化機能やサビ出し機能を備えるWeb音楽鑑賞サービス「Songle(ソングル)」を一般公開し、実証実験を開始したことを発表した。

Songleは産総研が開発した独自の音楽理解技術を活用したシステムで、Web上にある楽曲に対し、その構成内容(サビ、ビート、メロディー、コード)を自動解析して「音楽地図」として可視化する機能をはじめ、サビ出し機能、コード進行検索機能、外部埋め込みプレーヤー機能など、さまざまな機能を備えている。

また、音楽地図作成時の自動解析の結果をユーザーが修正するためのインタフェースも提供され、ユーザーの協力によって精度の高い音楽地図を共有できる仕組みになっている。

音楽情報処理分野の研究は国内外で活発に進められており、産総研でも、音楽を自動的に解析する音楽理解技術や、それを応用した音楽インタフェースなどの幅広い研究を行ってきたという。

それらの研究成果の蓄積から、「Web上の楽曲の中身を自動解析する音楽鑑賞システム」というアイデアが生まれ、このアイデアに基づくシステムのベータ版が2月から研究者向けに試験公開されている。

そして今回、ベータ版システムに可視化機能やコード進行検索機能、外部埋め込みプレーヤー機能などが追加され、実証実験を行うために一般公開された。

なお、同サービスに関する研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の研究課題の一環として行われたもので、研究の成果は10月25日〜26日に産総研つくばセンターで開催する「産総研オープンラボ」で展示される予定になっている。

Songleでは、Webサイト上に公開されているポピュラー音楽の楽曲(MP3形式)を登録すると、「楽曲構造(サビ区間と繰り返し区間)」「ビート構造(拍と小節の先頭)」「メロディー(歌声の音高)」「コード(根音とコードタイプ)」が自動解析される。

ユーザーは、自動解析結果を可視化した画面を見ながら、楽曲をストリーミング再生して楽しむことができる。

可視化画面は、音楽的要素を把握しやすい音楽地図を表示する詳細画面と、再生楽曲と連動したアニメーションを表示するビジュアライザ画面の2種類が用意されている。

これらの可視化機能により、専門知識をもたないユーザーでも音楽的要素を見た目で把握することが可能になるという。

たとえば、サビを例外的に多く繰り返す曲や、同じコード進行でメロディーが異なる曲などに気付きやすくなり、楽曲をより深く理解できるようになる。

音楽地図は横軸が時間を表し、画面上部には、楽曲中の繰り返しパターンを可視化した楽曲構造が表示される。

楽曲構造の最上段はサビ区間で、その下の5段は繰り返し区間の表示スペースで、各段の同色区間は類似している(繰り返しである)ことを意味する。

画面の下部分は、上部で選択した区間を拡大表示するスペース。

最下部に並ぶ記号は、小さい三角形が各拍(四分音符に対応するビート)の位置を、大きい三角形が小節の先頭を表し、ビート構造の上部分では、歌声の音の高さを表している。

詳細画面が音楽的要素を把握するためのインタフェースであるのに対し、ビジュアライザ画面は楽曲の進行にあわせて動的に生成される表示を楽しむためのインタフェースとなっており、幾何学模様や円盤状の表示など、4種類の表示パターンを選択できる。

また、サビ出し機能、コード進行検索機能、外部埋め込みプレーヤー機能はいずれも自動解析結果を利用したものとなっている。

サビ出し機能は楽曲中の任意の場所にジャンプするためのもので、「次のサビ区間の頭出し」「前のサビ区間の頭出し」「次の繰り返し区間の頭出し」「前の繰り返し区間の頭出し」の4種類のボタンが用意されている。