このところAKB48の総選挙の話を耳にしない日はない。一昨日は開票があったようで、民放はおろかNHKも、そして朝日新聞からサンケイ新聞まで。あらゆる大メディアがこれを「ニュース」のように取り上げた。どこかの県知事選よりもはるかに大きな扱いだった。

投票総数は138万4122票。単純比較はできないが、この数字は先の参議院選挙での北海道の投票総数よりも多かった。

前回もそうだったが、ひいきの女性に投票するためには、1000円から1600円のCDを買わなければいけない。1枚CDを買うと1票を投票する権利が与えられる。何としてもひいきの女性を上位にしようと、ファンはCDを買いまくる。段ボール箱1箱分とか、2箱分とか買う人間もいる。こうして138万枚余のCDが売れた。

すでにAKB商法と言う言葉もあるそうだが、これに問題はないのだろうか?

20年ほど前に、ビックリマンチョコ騒動と言うのがあった。チョコ菓子に入ったシールほしさに子供が、チョコを大量に購入したというものだ。このとき、マスコミは「食べ物を粗末にする」「子供の教育上よろしくない」と批判し、不正あるいは反社会的な商売だと、メーカーのロッテが非難を受けた。私は今回の騒動を見ていると、ついついこの事件を思い出す。

また、こうした一私企業の単なる販促キャンペーンを、大メディアがこぞって報道するのはなぜなのか。
昨日の朝日新聞などは「社会現象」と書いていたが、むしろ「社会現象」とは、ただの販促活動のお先棒を、公共放送から民放、大新聞までが右へ倣えで担ぐことだと思うのだが。
また、朝日はこの投票に53万円も使った男性のことを書いてはいたが、最終的には「自己責任」的にまとめていた。

こうして購入された大量のCDの行方も気になる。まさか同じ板を何枚も聴き比べる人間もいないだろう。
大量購入者は、その大部分を一度も聴くことなく、封を開けることさえなく業者に売るか、廃棄するだろう。
おそらく中古市場では、売値がつかないに違いない。電力危機、資源の無駄遣いが叫ばれている中で、製造、プレスにかかわる原料費やエネルギーコストも含め、莫大な「無駄」が生まれていると思うのだが。

どなたか、以下の3つの質問に応えていただきたいと思う。



1)今回のAKB総選挙とビックリマンチョコの商法は何が、どう違うのか。

回答例1)ビックリマンチョコは食べ物だが、今回はCD。食べ物を粗末にしているわけではない。

回答例2)ビックリマンチョコは分別のない子供が買っていたが、今回は責任能力のある大人が、納得して買っている。

回答例3)時代が変わったのだ。



2)マスコミはなぜ、こぞって、この総選挙をほぼ無批判で報道するのか。

回答例1)AKB48の悪口を言うと、自社のメディアに出演してもらえなくなるから、批判はしない。

回答例2)この記事を掲載、放送することで視聴率や部数が伸びるから。

回答例3)時代が変わったのだ。



3)大量のCDが何ら活用されることなく廃棄されるが、それでいいのか。

回答例1)経済効果があれば、それでいいのだ。

回答例2)消費者が自己責任で購入したのだから、その先がどうなろうと知ったことではない。

回答例3)時代が変わったのだ。


法に触れていないからいいのだ、という意見が寄せられそうだが、それは答えにはなっていない。人は「法」だけで生きるわけではなく、その内側に、他の人と平和に、幸せに生きていくための「倫理」や「人の道」「マナー」などのルールを設けている。普通の人間は、その「内側」で生きている。

マスメディアは、今や公明正大でないことくらいは私も知っている。ジャニーズ事務所や特定の宗教団体など、批判的な報道ができない相手がいることもわかっている。