[Photo:Tariq Alali / Reuters]

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■失点シーンはほとんどが自陣左サイドを攻略されたもの
 Jリーグ屈指の人気を誇り、熱心なサポーターの存在で知られる浦和レッズ。2007年にACLを獲得してからというものの、タイトルとは縁がない。近年はクラブコンセプトがぶれ続けたことが影響し、低迷が続いている。

 だが、今シーズンは開幕から浦和レッズの快進撃が止まらない!! と言えば景気良く聞こえるけれど、サポーターの頃から浦和レッズと苦楽を共にしている僕からすれば、この強さは本物には感じられない。順位を14位→11位→7位→7位→6位とじりじりと上げていて、メディアは「レッズ好調」とか「レッズ復活」的な論調がほとんどで、警笛を鳴らす者は見かけない。
 
 しかし、春の珍事とまでは言わないけれど、開幕戦でサンフレッチェ広島に敗れ後は3勝1分と負けなしは上出来すぎるのだ。つまりは『勝てば官軍、負ければ賊軍』ということなのか? ならば浦和レッズとは旧知の仲である僕が感じている危険な現状を、語尾をあげて言おうじゃないか。このチームが本当の復活を果たすには、まだまだ課題は山積みなのだから。
   
 Jリーグで5試合、ヤマザキナビスコカップで2試合の7試合、浦和レッズは相手チームよりシュート数を上回った試合がない。

シュート数(試合結果)
14─5(0─1 ●広島)
15─8(1─0 〇柏)
11─11(1─2 〇札幌)
21─4(1─1 △川崎)
18─12(3─1 〇鹿島)
13─10(1─0 〇仙台)
11─6(3─4 ●磐田)

 試合巧者と言えば聞こえがいいが、これまでの勝利も綱渡り的で、シュート数を見るだけでも相手に上回れていることからも、星取りが逆でもおかしくない。対戦チームはすでにウィークポイントを見つけたようで、試合が始まれば「予想通り」と“そこ”から攻撃を仕掛けてくる。事実、失点の多くは“そこ”が起点になっている。

 3─4─3(現代風の言い方なら3─4─2─1か)のフォーメーションというよりも、ペトロヴイッチ監督の広島時代からの一貫した戦術が仇となり、対戦チームもしっかりとスカウティングをしていることが確認できている。

 開幕戦で広島の森保監督は右サイドのミキッチのスピードを活かすべく、徹底的にレッズの左アウトサイドの梅崎の裏に出来るスペースに縦にボールを入れ続けた。3バックの左でプレーする槙野はこのスペースのケアができず、攻め入られるとペナルティエリアに入り込んでプレーすることが多くなった。

 広島にはペトロヴイッチ監督の戦術を熟知した選手たちがそろっている。彼らは、浦和のDF陣が極端に下がって守備をすることを初めから知っている。自分たちも攻められたとき、そうやって相手の攻撃をしのいできたからなのだ。ならば、積極的に“そこ”から攻めればいいのである。広島の一貫したサイド攻撃により、梅崎はズルズルと下がらざるを得なかった。下がってしまうと、今度は自分の前に出来たスペースを自由に使われ、とにかく梅崎は守備に従事しなければならなかった。

 この開幕戦が他チームのスカウティングの基本となっていることは明らかだ。どのチームもレッズの左サイドにボールを集め、縦にボールを入れてくる。鹿島のゴールはこのスペースからのクロスボールから生まれている。川崎戦ではクリアボールが小さかったこともあるが、中央より左からの速いクロスに全く寄せることができず、ヘディングによる失点を許している。また流れの中からではないが、札幌のゴールも左のコーナーキックからで、槙野の対応が遅れたことから山本真希にミドルシュートを許している。このゴールも川崎戦のクロスと同様に大きなシュートを打つスペースを相手に与えてしまっていた。